[特別レポート]

NGN時代のDOCSIS 3.0とケーブル(CATV)戦略(2) =シスコケーブルソリューションセミナー2008=

2008/05/02
(金)
SmartGridニューズレター編集部

NGN時代における「シスコケーブルソリューションセミナー2008」が、シスコシステムズ合同会社の六本木オフィス(東京都・港区)にて、2008年3月25日に開催された。同セミナーは、シスコシステムズがケーブル(CATV)事業者向けに行ったセミナーで、CATVの次世代高速データ通信規格「DOCSIS 3.0」の技術詳細およびロードマップやCATVを取り巻くネットワーク環境の現況が説明された。ここでは、NGN時代のDOCSIS 3.0(第1回)とCATV業界の課題(第2回)を、2回に分けてレポートする
最終回の今回は、
第1回:NGN時代のケーブル(CATV)製品戦略とDOCSIS 3.0
につづいて、インテック・ネットコア 取締役 CSOの中川郁夫氏による、NGNによってCATV業界が直面する課題についての講演を掲載する。

NGN時代のDOCSIS 3.0とケーブル(CATV)戦略(2) =シスコケーブルソリューションセミナー2008=

≪1≫ケーブル業界がNGN時代に直面する危機とは

中川郁夫氏(インテック・ネットコア 取締役 CSO)
中川郁夫氏
(インテック・ネットコア
取締役 CSO)

同セミナーの中で、インテック・ネットコア 取締役 CSO(※)の中川郁夫氏は、NGN(次世代ネットワーク)時代におけるケーブル事業者のあり方として、「NGNによる通信ビジネスの変革 ~ケーブル業界が直面する脅威~」と題した講演を行った。

講演の中で、中川氏は、「NGNによってマーケット規模に対する考え方とサービスモデルが大きく変わり、その変化はケーブル(CATV)業界にも大きな影響をもたらす」として、CATV業界がNGN時代に直面する危機がどういうものなのかを提示し、課題を投げかけた。

※CSO:Chief Strategic Officer、戦略担当役員

〔1〕固定と携帯の融合 ~ネットの「入り口」の変化~

中川氏は、NGNを定義し「NGNのコンセプトは、オールIP化による、ネットワークとサービスの統合」だと述べた。中川氏によると、NGNは、次世代の通信ビジネスを示すコンセプトとしての「広義のNGN」、それを実現するための機能や仕様などを定める技術面からみた「狭義のNGN」のふたつの定義が存在する。さらに、NTTが推進しているNGNは、通信事業者による実装の一つでしかない、と説明する。

今回の講演は、広義のNGNについての分析であり、その中で、NGNでは、

(1)Business
 ・ビジネス構造の変革
(2)Service
 ・新サービスモデルへの移行
(3)Technology
 ・オールIPによるプラットフォーム構築

の3つの変化が起こると指摘した。

そして、NGNについての通信事業者の企業戦略上の議論のポイントとして、図7を示した。ちなみに今回の講演のテーマとなるのは、図7中の「キャリアの外部の動き(External Movement)」の「固定・携帯融合 FMC」と「価値の変化 SaaS(※)」である。

※SaaS:Software as a Service。ネットワーク経由で、ソフトウェアの機能をサービスとして提供する形態

図7 NGNを取り巻く動き(クリックで拡大)

中川氏はまず、「固定と携帯の融合」について説明した。

NGNの視点からみると、FMCとは、ネットワークの「入り口」の変化に他ならないとして、図8を示した。

従来のモデルでは、エンド・ユーザーからISPまでのアクセス回線サービスは、単にインターネット接続の一部で、アプリケーション事業者による多くのサービスはその先のインターネットで提供されていた。つまり、従来のモデルでは、インターネットが、サービスを提供するネットワークの「入り口」だったわけである。

これに対して、NGNモデルは、アクセス回線サービス自体が「入り口」となっている。NGNというアクセス回線上で、さまざまなアプリケーションやサービスが提供され、インターネット接続サービスもこうしたサービスのひとつとなる。アプリケーション事業者のサービスもこのアクセス回線サービス上で提供される。

図8 従来モデルとNGNモデルの「入り口」の違い(クリックで拡大)

次に、中川氏は、NGNから見たFMCの意味を次のように説明した。

「FMCとは携帯事業者によるネット市場の覇権争いだ。現在、携帯電話・PHSからインターネットを使う人は7,287万人(82.7%)、パソコンからインターネットを使う人は7,813万人(88.7%)にも及ぶ(平成19年「通信利用動向調査」より)。さらに、テレビがこれからネット端末になっていくが、テレビの普及台数は1億~1億2千万台だと言われている。通信事業者が狙っているのは、『移動=携帯電話』と『固定=パソコンとテレビ』を統合した、これまでよりも大きな1億2千万人の巨大市場を手にすることである。1億2千万人に直接リーチできる『ネットの入り口』をどのように獲得するかに、携帯電話の通信事業者はしのぎを削っている。例えば、ソフトバンク・グループの『Yahoo!』や、KDDIの『au one』だ」

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