[スペシャルインタビュー]

BEAシステムズのNGN/SDP戦略を聞く(2):BEAのNGNビジネス戦略

2008/05/26
(月)
SmartGridニューズレター編集部

NGNの商用サービスが2008年3月末より、日本でも開始されましたが、本格的なサービスはこれからという状況です。そのNGNで提供されるサービス開発の要となるのが、SDP(サービス提供基盤)です。そこで、ITインフラのソフトウェアベンダーとして知られ、NGNでもSDP製品群「BEA WebLogic Communications Platform」を、通信事業者を中心に広く展開し、IMS分野のリーディング・カンパニーとして注目されている日本BEAシステムズのNGN戦略や、通信業界に大きなシェアを誇るソリューションとその特徴などについて、同社ソリューション営業部 WLCPビジネスディベロップメント マネージャの高山義泉(たかやま よしもと)氏にうかがいました。
第2回は、
第1回:BEAのNGN戦略製品「WebLogic Communications Platform」とは?
につづき、BEAがNGNビジネスをどのようにとらえているか、そして戦略製品「WebLogic Communications Platform」の位置づけや概要などについてお聞きしました。(文中敬称略)

第2回:BEAのNGNビジネス戦略

≪1≫BEAにとってNGNとは?

■御社は、NGNをビジネス上、どのようにとらえていますか。

高山義泉氏(日本BEAシステムズ WLCPビジネスディベロップメント マネージャ)
高山義泉氏
(日本BEAシステムズ
WLCPビジネスディベロップメント
マネージャ)

高山 当社は、NGNを、10年に一度というレベルの非常に大きなビジネス・チャンスだととらえています。2003~4年ぐらいから、NGN(次世代ネットワーク)とVoIP(※)の2つの大きな波が登場してきました。この波は、電話網のIP化が進むにつれて、オープン化の流れが押し寄せ、新しいサービスを作ろうという動きに連動したものだと思います。

そうした背景から、当社でも、これまでOSS/BSS領域で製品を提供していたのを、もっと通信サービス寄りのところまで広げています。それが前回説明した「BEA WebLogic Communications Platform」(以下WLCP)です。WLCPは、2004年に米国でサービスを開始し、現在まで多くの通信業界のお客様にサービスを提供しています。

WLCPは、当社のNGN戦略の要であり、当社ではこの製品の開発、販売のために、世界中から人的リソースを集めました。私自身も、4、5年前はエンジニアとして、NTTなどと一緒にJAIN(※)の標準仕様の策定メンバーであり、このときにWLCPのビジネス・ディベロップメントのメンバーとして参加したのです。

VoIP:Voice over IP、IP電話
JAIN:Java APIs for Integrated Networks。Javaプラットフォームを利用して通信をオープン化するためのAPI群

■ビジネス・チャンスを確実につかむためにリクルートした御社のスタッフの陣容はどのような構成になっているのでしょうか。

高山 当社は、通信業界で高い技術をもった人間が集まっています。そうした中から、このWLCP専任チームは、コア・メンバーの50人程度を中心に、ビジネス・ディベロップメント・チームというビジネスを作り上げるチーム、それに専任の技術部隊で構成されています。

WLCPのビジネス・ディベロップメントのメンバーは、世界中にいて、日本の担当は私ですが、アジアだけでみても、中国、香港、シンガポール、韓国、オーストラリア、マレーシアにいます。さらに、米国や欧州諸国でも同様にいます。

また、技術陣のほぼ7~8割が、JavaでSIPを扱うための技術や、Javaでテレコム・ネットワークを扱うための技術の標準化を進めている団体のリーダーをやっているような人間です。例を挙げると、テレコム企業に勤めたのち、JAIN SLEE(※)という技術のリーダーだった人間や、NEPベンダーのSIPサーバ製品責任者など、そうそうたるメンバーが集まっています。

さらに、サポート体制も整えています。日本の場合、中国に200人程度の技術チームがおり、製品のカスタマイズを担当しています。日本で、ある製品にある機能を付け加えるという要求がユーザー企業からあった場合には、この中国のチームが中国で開発します。実際、このようにして開発したアプリケーションをお客様に納めたこともあります。

このように、技術力では、他の企業には負けない人材を集めています。さらに、社員が世界各地におり、ビジネスを進めていく中で、異なる国の担当者と情報交換をして、世界のトレンドをいち早く捉えることもできています。例えば、世界でも進んでいる日本のIMSについて、海外のメンバーに情報を提供したり、逆に外国の面白いビジネス・ケースを紹介してもらったりしています。

JAIN SLEE:JAIN Service Logic Execution Environment。ソフトウェア・サービスを実現するアプリケーションの実行環境

■SIPなどは、IETF(※)のインターネット系の標準技術ですが、そうしたテレコム以外の技術についてはどう対応されているのでしょうか。

IETF:Internet Engineering Task Force、インターネット技術標準化委員会

高山 SIPサーバなどのように、テレコムだけでなくインターネット技術も関係するような技術についても、IETFの仕様書を、プロダクトマネージャーからSEに至るまで製品に関わる人間が研究しており、必要な技術は備えています。

当社と関連するSIPは、端末側というよりは、IMSのコア・ネットワークに使用されるSIPですから、当社の製品で必要な部分は限られています。具体的に言うと、3GPPのSIP仕様のところでS-CSCF(※)とSIP-AS(アプリケーション・サーバ)をつなげるISC(※)というインタフェースの標準がありますが、この技術をカバーすることは非常に重要です。ISCは、SIPの中のさらに細かい取り決めをしたもので、リクエストはS-CSCFから、ISCというインタフェースを使ってアプリケーション・サーバ(図1の「IM-SSF」「OSA SCS」「CAMEL A/S」)にあがってきます。

図1 WLCP in IMSネットワーク(クリックで拡大)

CSCF:Call Session Control Function、呼セッション制御機能。IMSにおいて呼セッション制御機能として中心的なノード(通信装置)として位置づけられるSIPサーバ。網内の役割に応じて「P-CSCF」「I-CSCF」「S-CSCF」の3つがある
S-CSCF:Serving CSCF、サービングCSCF。3つのCSCFの中の中核的なSIPサーバで、サービスの実行やセッション制御を行う。サービス実行時に、セッションや加入者の情報を保持するとともに、サービスを制御するためにアプリケーション・サーバと接続する
ISC:IMS Service Control、IMS サービス制御。S-CSCFおよびIMS SIPアプリケーション・サーバ(AS)の間にあるSIPインタフェース

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