[特集]

Q&Aで学ぶデジタル放送(12):デジタル放送は個人で開局できる?

2008/07/22
(火)
亀山 渉

このコーナーでは、最新のICT(情報通信技術)のキーワードをQ&A形式でわかりやすく解説していきます。
現在、地上デジタル放送から、BSデジタル放送、CSデジタル、CS110°デジタル放送に至るまで、さまざまなデジタル放送が利用でき、多彩な放送を受信できるようになりました。ここでは、これらのデジタル放送と、今までのアナログ放送やインターネットとの相違点から、デジタル放送時代の法制度までを解説していきます
今回は、個人のデジタル放送局とインターネット放送局の違いについて説明します。

Q&Aで学ぶ基礎技術:デジタル放送編(12)
Q12

Q12:デジタル放送は個人で開局できる?

インターネット放送は個人で開局できるようですが、デジタル放送は個人で開局できるのでしょうか?

A12

≪1≫個人のデジタル放送局の開局は難しい

残念ながら、難しいのが現状です。「Q&Aで学ぶデジタル放送(11):デジタル放送時代の法制度は?」でも述べたように、通信と放送は別々の法律によって管理されており、開局するに当たっては放送法の下で、総務省の認可が必要となります。もちろん、原理的にはデジタル放送局を開局することを個人で申請することもできないわけではありませんが、放送の公共性を鑑みて、さまざまな審査が行われることになっています。この審査の過程で、個人の申請は必ずしも種々の条件を満たすことができないと考えられます。

また、デジタル放送を行うためには、さまざまな設備を揃える必要がありますが、そのための資金を個人が調達できるかどうかについても問題となります。

≪2≫インターネット放送局の開局は比較的容易

これに対して、インターネット放送は、ネットワークの設定やソフトウェアの設定がある程度できるのであれば、比較的安い設備投資で開局することができます。もちろん、1日に何十万アクセスという状況になってしまった場合には、それなりの投資と知識が必要になりますが、それでもまったく不可能というわけではありません。そして、現在の日本では、このようなサービスは通信として位置づけられていますので、特別な認可も必要ではありません(図1-11)。

図1-11 個人のデジタル放送局とインターネット放送局の違い(クリックで拡大)

ここで考えなければならないことは、特別な認可が必要ないからといって、公序良俗に反するような内容を流してもいいのかどうかという点です。「Q&Aで学ぶデジタル放送(11):デジタル放送時代の法制度は?」の回答にも述べたように、技術的には通信と放送の境界は曖昧になってきており、インターネット放送局も個人で十分開局できるようになっています。しかし、このような放送サービスは、基本的に1対多のサービスであり、関連する法律があろうがなかろうが、従来の放送と変わるところはないという自覚を開局者はもつ必要があります。ぜひ、この点に関して、社会の一員としての自覚をもって運用してほしいと思います。

※この「Q&Aで学ぶ基礎技術:デジタル放送編」は、著者の承諾を得て、好評発売中の「改訂版 デジタル放送教科書(上)」の第1章に最新情報を加えて一部修正し、転載したものです。ご了承ください。

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