[特集]

Q&Aで学ぶデジタル放送(15):デジタル放送による新しいサービスとは?

2008/09/01
(月)
亀山 渉

このコーナーでは、最新のICT(情報通信技術)のキーワードをQ&A形式でわかりやすく解説していきます。
現在、地上デジタル放送から、BSデジタル放送、CSデジタル、CS110°デジタル放送に至るまで、さまざまなデジタル放送が利用でき、多彩な放送を受信できるようになりました。ここでは、これらのデジタル放送と、今までのアナログ放送やインターネットとの相違点から、デジタル放送時代の法制度までを解説していきます
今回は、デジタル放送によって受けられるサービスについて説明します

Q&Aで学ぶデジタル放送(15):デジタル放送による新しいサービスとは??
Q15

Q15:デジタル放送による新しいサービスとは?

デジタル放送によって、どのような新しいサービスを享受することができるのでしょうか?

A15

現在のデジタル放送でも、すでに従来のアナログ放送にはなかったような新しいサービスが始まっています。例えば、

(1)ペイ・パー・ビュー(PPV:Pay Per View、番組ごとに料金を支払う有料放送)
(2)テレビのクイズ番組に家庭から参加できるなどの視聴者参加型の番組
(3)スポーツ中継でスポーツに関連した情報をテキストや静止画で提供するなどのマルチメディア・データ放送
(4)ポイントと呼ばれるユーザー特典を配信してさまざまな付加サービスを提供する番組

など、多彩なサービスがあります。

このようなデジタル放送による新しいサービスはまだ発展途上であり、今後、新しいサービス・アイデアが次々と登場してくるでしょう。動画像と音声以外にも、テキスト情報や静止画などをはじめとする、さまざまなデータを送り届けることができるデジタル放送であるからこそ、このようなことができるのです。どのようなサービスが登場するのか、今後が期待されるところです。

≪1≫蓄積型放送/サーバー型放送

まず、確実に広まるサービスが、蓄積型放送あるいはサーバー型放送と呼ばれているものです。ハードディスクをはじめとする、各種のデジタル蓄積装置の値段が急激に低下していることは、皆さんよくご存知でしょう。例えば、2008年1月現在、500ギガ・バイトのハードディスク・ドライブ装置は、1万円程度で購入できます。この500ギガ・バイトのハードディスク装置を使用すると、MPEG-2で圧縮された通常のテレビ番組を、約200時間分蓄えることができます。蓄積型放送あるいはサーバー型放送とは、この安いハードディスク装置を放送に利用しようというアイデアです。それでは、どのように使用するのでしょうか。

≪2≫ハードディスク装置を利用した放送形態

好きなテレビのニュースや音楽番組を見逃さないようにしようとしても、VTRによる予約録画作業はなかなか面倒です。ボタン1つで好きな番組を呼び出すことができればどんなに便利でしょう。

実は、ハードディスク装置を利用すればこのようなことが可能になります(図1-1)。ただし、放送局側がメタデータ(Q18参照)と呼ばれる番組情報を流してくれることが前提です。もし十分な番組情報が受信機に与えられている場合は、受信機はユーザーの好みに応じて、必要な番組を自動的に録画でき、家に帰ってテレビのスイッチを入れると、見たい番組がすでに録画されており、後はそれを再生するだけということが可能になるわけです。


図1-1 デジタル放送時代のサービス利用形態例(クリックで拡大)


≪3≫QoS保証問題が解消

また、ハードディスクを利用すれば、QoS(Quality of Service、サービス品質)を気にする必要もなくなります。つまり、番組は蓄積されてから後で見ることになるわけですから、番組をリアルタイムで送る必要はなくなります。ということは、QoS保証に問題のあるインターネット(Q9参照)を利用しても、番組を流せるということなのです。

このように、ハードディスクなどの蓄積装置を用いた放送サービスは、従来の放送サービスに対する見方をまったく変えてしまうほどのインパクトがあります。特に、QoSを気にする必要がないというのは重要な点です。これは、デジタル放送を流す媒体は電波だけに限る必要がないということを示唆しており、デジタル放送サービスの広がりを期待することができます。2002年末には、既に、このような製品の第一世代機が民生機器として出荷されています。また、2005年には数百ギガ・バイトのハードディスク容量をもつものが10万円を切って入手できるようになり、中には1テラ・バイトのハードディスク容量をもつものも登場しました。利用している皆さんも、すでにいらっしゃることでしょう。

※この「Q&Aで学ぶ基礎技術:デジタル放送編」は、著者の承諾を得て、好評発売中の「改訂版 デジタル放送教科書(下)」の第1章に最新情報を加えて一部修正し、転載したものです。ご了承ください。

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