[特集]

NGN時代を支えるイーサネット(802.3ah)標準:その逆転のドラマ(第2回:最終回)

2008/08/22
(金)
SmartGridニューズレター編集部

日本の情報通信ネットワークの標準化機関であるTTC(情報通信技術委員会)は、毎年TTCの目指す標準化活動やその普及を図ることに貢献した技術者や研究者などの表彰を行っている。今回は、去る2008年6月24日に東京・芝公園にあるメルパルク東京で授賞式が行われ21名の方々が受賞された。ここでは、そのうち見事にTTC会長賞を受賞された日立電線の瀬戸康一郎氏に受賞の喜びと、受賞に至るご苦労話および標準化活動の重要性などをお聞きした。瀬戸氏の受賞理由は、NGN時代の光アクセス技術(FTTH)の基本ともなる光イーサネットの国際標準化(逆転のドラマ)への多大な貢献であった。
第1回では、TTC会長賞受賞の喜びと逆転のドラマを中心に語っていただきましたが、今回(第2回:最終回)は、日本の技術者の標準化活動での活躍ぶり、なぜPBBやイーサネットOAMに人気があるのか、標準化と企業ビジネスの関係などを中心にお話いただきました。

NGN時代を支えるイーサネット(802.3ah)標準:その逆転のドラマ"

≪1≫IEEE 802委員会における日本の技術者の活躍

■ 前回は、TTC会長賞の受賞に至るご苦労話ありがとうございました。お陰さまで、読者からのアクセス数も多く好評です。ところで、最近、標準化については、国際的に欧米勢とともに中国や韓国などのアジア勢も取り組みを強化してきていますね。IEEE 802委員会における日本勢の活躍ぶりはいかがでしょうか?

瀬戸康一郎氏
瀬戸康一郎氏

瀬戸 私は802.3(イーサネット)の標準化については、17年前(当時26歳)の1991年から現在も参加していますが、長くやっているというばかりです。これは謙遜ではなくてほんとうにそう思っているのです。最近、IEEE 802委員会に出ていますと、日本の若い技術者がとても多く参加するようになってきていて、ほんとうに昔とは変わったと思います。と同時に心強く思っています。私が初めて802.3(イーサネット)のワーキング・グループに参加した頃は、日本人は私以外にせいぜい2、3人くらいが参加している程度でした。

しばらくは、そういう時代が続いたのですが、とくにイーサネット(802.3)が注目されるようになって以降は、日本からの参加者が増えてきました。これに比べて、無線LANの標準化を推進する802.11WGは人気があり、当初から、非常に多くの日本人が参加していました。

■ 2、3人程度だった802.3WGのほうは現在、何人ぐらい日本から参加していますか?

瀬戸 正確に数えたことは無いのですが、私の感じでは、802.3WGには20~30人は参加しているのではないでしょうか。

■ そんなに多いのですか。

瀬戸 はい。その半分以上が、現在、GE-PON(Gigabit Ethernet Passive Optical Network、ギガビット・イーサーネットPON)に続く10GE-PONの802.3avタスク・フォース(Task Force。802.3では、タスク・グループではなくタスク・フォースという)に出席しています。

イーサネットによるGE-PONは、NTTの事業方針と合致したということもあって、日本で非常に普及しました。逆に言うと、GE-PONは日本でしか普及していないと言うべきかもしれませんね。中国や韓国でも使われてはいますが、日本ほどは普及していません。

■ 欧米では、ITU-T標準のATMベースのG-PON(※1)が、日本ではイーサネット・ベースのIEEE 802.3標準のGE-PONが普及しているということですね。

瀬戸 そのようです。そのような背景もありまして、日本勢は、IEEE 802.3標準のGE-PONの次の高速規格である10GE-PONに対しても、日本でのGE-PONで得た経験などを802.3にフィードバックし、適用できるような方式にしようと、802.3avタスク・フォースには大勢の日本人技術者が参加しています。さらに、現在、802.3baタスク・フォースで次世代の超高速な40Gbps/100Gbpsのイーサネット規格の標準化も活発化してきていますが(図1)、そちらにも、光デバイスのメーカーも含めて、たくさんの日本勢が参加しています。また、最近では、「改訂版 10ギガビットEthernet教科書」の共同監修者であるNTT未来ねっと研究所の石田修さんも活躍されています。

※1 G-PON:Gigabit Passive Optical Network。G-PONとは、光ファイバを使用してギガビット(Gbps)の伝送速度を実現する国際標準の光アクセス技術のこと。ATM(Asynchronous Transfer Mode、非同期転送モード)を使用。PONとは、局側からくる光信号を複数のユーザーに分岐するために光スプリッタ(光分岐装置)が使用されるが、この光スプリッタは自分で発光したり、信号を生成したりしない(これを「パッシブ」という)ところから、一般に、PONと呼ばれている。標準規格は、ITU-T標準G.984.1他、『Gigabit-capable Passive Optical Networks(GPON):General characteristics』(ギガビット-PON:一般的な特性)等


図1 イーサネット(IEEE 802.3)標準化の推移(瀬戸氏資料による)(クリックで拡大)


■ 日本の出席メンバーからの標準化へのコントリビューション(提案)は活発に行われていますか?

瀬戸 けっこう、活発にやっています。昔は、私なども含めて日本勢は、基本的にはIEEE 802委員会に参加して情報を得るだけというスタイルが多かったのですが、最近は、米国勢ほどではないにしても、かなりコントリビューションが多くなってきています。時々、日本人同士で提案内容が別れてしまい、激論する場面も出るほど活発化しています。これは、国際標準という場ならでは熱気のようなものを感じます。

■ 標準化活動をとおして、とてもうれしかったこととか、悔しかったこととか、印象に残っていることはありますか。

瀬戸 たくさんありますが、やはり今回の表彰の対象になった、802.3ah(EFM)のように、NTTの方々の力を借りたりしながらも日本のTTC規格(TS-1000)を紹介して、米国勢からの提案をひっくり返し、何とか日本の提案を標準化にするという貢献ができたということは、私にとって非常にうれしいことでした。

■ そのEFMの標準化では、米国勢の提案に傾いている大勢をひっくり返った瞬間、つまり今まで絶対優勢だった人たちが負けてしまう場合、何か衝撃が走ったりするものなのですか?

瀬戸 運営は民主主義的に行われていますので、あるときは勝ったり、あるときは負けたりしますので、そこは意外と粛々としています。

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