[特集]

■『インプレス SmartGrid ニューズレター』創刊へのメッセージ■

2012/12/04
(火)

 

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『SmartGridニューズレター』創刊号
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新しいフェーズを迎えたSGIP 〜独立した「SGIP 2.0 Inc.」を設立〜

デイビッド H. スー 〔米国国立標準技術研究所(NIST)高度ネットワーク技術部門 上級技術顧問〕

デイビッド H. スー
米国国立標準技術研究所(NIST)
高度ネットワーク技術部門 上級技術顧問


米国政府が策定した2007年のエネルギー自給・安全保障法(Energy Independence and Security Act of 2007:EISA)を受け、2009年11月に、NIST(米国国立標準技術研究所)はスマートグリッド関連機器あるいはシステムの相互接続性を確立するために、SGIP(スマートグリッド相互運用性パネル)を設立しました。このSGIPへの参加組織はいまや800を超え、欧州やアジアからも多くの組織が参画しています。NISTは、米国における産業技術に関する規格の標準化を促進したり、政府の調達仕様の策定などを行ったりする政府機関(商務省傘下)です。

このSGIP内には、目的に応じたPAP(Priority Action Plan、優先行動計画)が形成され、インターネットプロトコル(IP)規格やスマートメーターのアップグレード要件などをはじめ、スマートグリッドに関する約100の技術が標準仕様としてカタログ化(CoS:Catalog of Standard)される見込みです。

2012年7月、SGIPは、SGIP 2.0 Business Sustainment Plan(SGIP 2.0ビジネス維持計画:将来のスマートグリッドの相互運用性に関するロードマップ)で示されているように、これまでのように政府が支援する組織ではなく独立した組織として、「SGIP 2.0 Inc.」が設立され、従来の「SGIP」から移行することになりました。

このSGIP 2.0 ビジネス維持計画は、2012 年の前半にSGIPの理事会(Government Board)の特別委員会で作成されました。この計画内容については、次のURLを参照してください。

https://collaborate.nist.gov/twiki-sggrid/pub/SmartGrid/BSPWGv2/SGIP_Business_Plan_V2.0.pdf

今後、SGIP 2.0では、これまでのSGIPの活動を継続・発展し、さらに拡張して、スマートグリッドの実導入と高度化を推進します。すなわち、北米におけるスマートグリッド事業は、相互接続や連携運用に必要な技術仕様の検討・承認の段階を終えて、いよいよ本格的に導入・運用され、さらなるイノベーションという次の段階を迎えようとしています。

SmartGridニューズレターの創刊おめでとうございます。SGIP 2.0と同様に、本誌が、日本および世界でのスマートグリッドの研究開発と普及に貢献することを希望・確信しています。

【略歴】
デイビッド H. スー(Dr. David H. Su)

米国国立標準技術研究所(NIST) 高度ネットワーク技術部門 上級技術顧問
ITU-T スマートグリッド・フォーカスグループ(FG Smart) 副議長

Senior Technical Advisor of the Advanced Network Technologies Division, National Institute of Standards and Technology (NIST)
Vice-Chair, ITU-T Focus Group on Smart Grid (FG Smart)

NISTの高度ネットワーク技術部門において、通信プロトコルのモデリング、試験、性能測定および標準化の分野における研究を行う。スマートグリッドのNISTチームの一員であり、スマートグリッド・ネットワーク分野の「IPネットワーク」「無線ネットワーク」「電力線通信(PLC)」に関するPAP(優先行動計画)の主要メンバー。これらPAPの主目的は、スマートグリッド・アプリケーションに関するネットワークの必要条件を定義し、必要とされる新しい標準を確定すること、相互運用性を保証することなどである。

ユーザー主導でエネルギーを利用・制御できる新時代へ

江崎 浩 〔東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授〕

江崎 浩
東京大学大学院
情報理工学系研究科 教授


スマートグリッドは、電力の供給側と需要側の両側においてオープン化とスマート化を実現し、さらに、相互連携させる仕組みです。これまで、「個別システムとして運用されてきた電力システムを相互接続し、有機的な相互連系させる技術は何か?」という議論が、米国NISTが主宰したSGIP(スマートグリッド相互運用パネル)で展開され、その結果、インターネットがキーテクノロジーとして採用される方針が打ち出されました。

インターネットによって旧来の電話サービスは大きな変貌を遂げました。同じことが電力(エネルギー)システムにも起こりつつあります。これは、ユーザー主導型でエネルギーを利用し制御できる新しい時代を迎えたともいえます。しかし電力システムの場合は供給者側も需要者側も、インターネット技術を用いない多種多様で莫大な既存インフラであり、このインフラの変革は容易なことではありません。近年、小規模な発電システムのコストは急激に低下してきています。これは、発電機能(発電所)を都市部から排除するというこれまでの前提を否定し、家庭でも発電が可能になるなど、電力供給システムの根本的な変革が促進され始めています。

本SmartGridニューズレターでの議論を通じて問題・課題の理解がいっそう深まり、我々が目指す技術・研究開発が具体化され、我が国が世界最先端のスマートグリッドインフラを構築し、世界に貢献することと期待しています。

【略歴】
江崎 浩(えさき ひろし)

1987年 九州大学修士課程修了後、株式会社東芝入社
1990年より2年間、米ニュージャージー州ベルコア社客員研究員
1994年より2年間、米国ニューヨーク市コロンビア大学CTRにて客員研究員。高速インターネットアーキテクチャの研究に従事
1994年 MPLS技術のもととなるセルスイッチルータ技術を提案、その後、セルスイッチルータの研究・開発・マーケティングに従事
1998年10月より、東京大学大型計算機センター助教授
2001年4月より、東京大学大学院 情報理工学系研究科 助教授
2005年4月より、現職。工学博士(東京大学)

「スマートエネルギー都市:東京」をめざして〜未来への遺産を残すために〜

大野 輝之〔東京都環境局長〕

大野 輝之
東京都
環境局長


現在、建築物のエネルギー消費は世界のエネルギー利用の4割を占めており、建物が集積する都市レベルでのエネルギー対策が、資源の有効利用及びCO2削減という観点から、ますます重要になっています。

東京は世界の大都市として2000年より本格的な温暖化対策を開始し、都内の企業や事業所、家庭の皆さんとともに省エネ対策を推進してきました。また、東日本大震災後の2011年夏における節電の経験は、現在の電力システムの問題点を明らかにするとともに、これまでの電気の使い方を大きく見直し、省エネの取り組みを更に深化させる機会となりました。一方で、人類の生存基盤を脅かす気候変動の危機はますます深刻化しており、CO2削減への取り組みの強化は一刻の猶予もありません。このため、2011年夏以降新たな段階に入った省エネの取り組みを定着化させるとともに、東京を、「賢い節電」を土台とした低炭素、快適性、防災力を兼ね備えた「スマートエネルギー都市」へと進化させていくことが必要です。

いまこの時代に問われているのは未来社会への想像力です。ひとつひとつの取り組みの積み重ねが地球温暖化や電力エネルギー問題を解決できるという志を持ち続けていくことが必要です。さまざまな先進事例や技術、知恵を結集し、「未来への遺産」を残すために、都市はいま変革への行動を強化しなければなりません。今回のニューズレターが、そうした取り組みを推し進める知的誘因となることを期待しています。

【略歴】
大野 輝之(おおの てるゆき)

1979年、東京都に入る。下水道局、港湾局、都市計画局、政策報道室等を経て、1998年より環境行政に携わる。「ディーゼル車NO作戦」の企画立案・実施を担当した後、気候変動対策に取り組む。2008年6月の東京都環境確保条例の改正で導入されたわが国初のキャップ&トレード制度などの気候変動対策諸制度の企画および施行、太陽エネルギー利用拡大施策などを所管。現在、スマートエネルギー都市の創造に向けて、気候変動対策と電力エネルギー問題の両立に取り組んでいる。

飛躍的に進歩するスマートグリッド技術と国際標準

合田 忠弘〔九州大学 大学院総合理工学研究院 特任教授 工学博士〕

合田 忠弘
九州大学 大学院総合理工学研究院
特任教授 工学博士


スマートグリッドとは次世代電力供給システムの在り方を示す新しい概念です。このスマートグリッドは、地球温暖化問題や一次エネルギー供給問題を解決して持続可能な社会を構築するという社会的要請と、再生可能エネルギーなどの分散形電源技術や情報通信技術(ICT)などの普及・開発促進という技術環境整備とがあいまって、今まさに実現の絶好の機会を迎えようとしており、世界中で開発計画が実施されています。

さらに最近では、スマートグリッドの概念は、従来の電力供給システムに公共交通網、水資源供給網や公共の安寧や医療システムなどを加えた「統合型公共インフラの構築」へと広がりを見せており、人々の生活に大きな意識改革をもたらすものとして注目を集めています。

しかし、実生活に密着し、超分散化された複雑なシステムを相互に連携し効果的に運用していくためには、複雑なシステムを適切な要素に分け、各要素を的確に定義したうえで、うまく接続させるための国際規格の作成が重要です。今後、本ニューズレターが技術開発面のみならず、実効的運営を実現する国際規格の動向にも注目して、スマートグリッドの構築のための有効な情報発信源となることを期待しています。

【略歴】
合田 忠弘(ごうだ ただひろ)

大阪大学大学院工学研究科修士課程修了。1973年4月に三菱電機株式会社入社、電子計算機やマイクロプロセッサを使用した電力系統の保護制御システムの開発・製造、パワーエレクトロニクスや電力自由化・規制緩和関連システムの開発・製造、系統解析シミュレータやマイクログリッドの開発に従事。同社の電力系統技術部長、電力流通システムプロジェクトグループ長を歴任。2006年3月に三菱電機を退社、同年4月九州大学大学院システム情報科学研究院教授、2012年4月から現職。スマートグリッドの運用制御方式の研究および国際標準作りを担当。

幅広い社会的価値の達成とスマートシティへの期待

小林 光〔慶應義塾大学 政策・メディア研究科/環境情報学部 教授〕

小林 光
慶應義塾大学
政策・メディア研究科/環境情報学部 教授


今年(2012年)の夏は、天気に一喜一憂し、なおのほか暑かった印象が強い。節電は引き続き喫緊の国民的課題となっていて、真剣な努力が続いている。私達は、単に、停電が怖い、というだけではなく、社会経済の在り方の選択という深い意義を感じ、努力をしている。

また私達は、放射能の汚染や地球温暖化といった社会費用の顕在化に直面し、そうした心配を最小限にしたいと切実に願っている。大規模電源に依存した構造は災害時に弱い以上、足元のエネルギーをもっと汲み上げ、安全なエネルギーインフラをもちたいとも願っている。さらに、節電・省エネも、単なる節約ではなく、発電に替わる大きな意義をもつとの評価も定着し、今後の新興国の経済成長に伴う燃料価格高騰の見通しの中で、一層戦略的に進めていくべきものとなった。つまり、エネルギーの問題は、単なる価格や供給量の問題ではなくなり、幅広い社会的価値の実現策の設計の問題となった。

そこで、これらの諸価値を同時達成する賢い仕組みとして、スマートシティへの関心が日増しに高まっている。私も、北九州やマウイ島の取り組みに着目し、ウォッチしているが、広い視野を持つ専門ジャーナリズムには大いに期待したい。

【略歴】
小林 光(こばやし ひかる)

1973年慶應義塾大学経済学部卒業、1981 年フランス国立パリ12大学都市研究所満期退学。2010年東京大学工学部大学院都市工学科(まちづくり大学院)修了(工学修士)。1973年に環境庁入庁。環境管理局長、地球環境局長、大臣官房長、総合環境政策局長、事務次官などを歴任。地方では、北九州市産業廃棄物課長を務める。2011年1月に退官し、同年4月から、慶應義塾大学(湘南藤沢キャンパス)教授。エコ経済、エコまちづくりなどを一貫して担当。自宅のエコハウス化でも有名。著書には『日本の公害経験』『エコハウス私論』などがある。

日本の先進技術によるエネルギー・マネージメントシステムの実現を

野村 淳二〔パナソニック株式会社 顧問〕

野村 淳二
パナソニック株式会社
顧問


1882年、トーマスエジソンが米マンハッタンで59カ所の利用者に直流110Vの電力供給を開始してから今年(2012年)で130年になります。現在、従来の電力送配電網および住宅、店舗、工場内等内線機器網の充実とともに、新たに太陽光発電や燃料電池、蓄電池等、発電から蓄電まで、電気を消費する場所で行うことが可能となっています。 インターネットはエジソン電力供給開始から100年後の1982年に、TCP/IPが標準化されて以来、世界規模で相互接続され、日常生活に不可欠なインフラとなっています。 今、国レベルのエネルギー問題解決のみならず、地球レベルの環境問題にも大きな役立ちとなるよう、日本の先進技術であるIPv6技術などのIT技術を活用した、住宅エネルギーや工場・店舗エネルギー、地域エネルギーのマネージメントシステムの実現が求められています。本SmartGridニューズレターが、さまざまな関連する先進技術やその動向について、見やすく、そして分かりやすく提供されることを大いに期待しています。

【略歴】
野村 淳二(のむら じゅんじ)

1971年3月 京都大学工学部を卒業。同年、松下電工株式会社(当時)に入社
1997年12月 同社システム開発センター所長に就任
2002年以降、同社取締役 新規事業推進担当、情報機器事業分社社長、ビルソリューション・エンジニアリング事業担当、専務取締役 オートモーティブ事業担当などを歴任
2006年6月 同社代表取締役副社長に就任
2009年6月 パナソニック株式会社 常務取締役に就任
2010年2月 同社技術担当。同年4月から代表取締役専務に就任
2011年4月からIEC(国際電気標準会議)のCB委員に就任。同年6月から現職。工学博士

スマートグリッド/スマートコミュニティ実証事業で日本の技術を世界に展開

古川 一夫〔独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 理事長〕

古川 一夫
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
理事長


東日本大震災やその後の原子力発電所の事故を受け、日本のエネルギー戦略は根本的な見直しを余儀なくされました。一方では新興国の急発展を受け、エネルギーの効率的な利用が世界的に喫緊の課題となっています。

米国ではスマートグリッドを景気浮揚対策として打ち出し、多くの施策が講じられ、また欧州ではEU指令により2020年までに20%の温室効果ガスの排出削減、省エネと新エネ導入を達成する目標が掲げられ、スマートコミュニティの市場が世界的に立ち上がろうとしています。さらにエネルギー供給面からの変化も激しく、米国ではシェルガスの登場で、電力購入よりもガスによる自家発電のほうが有利になるケースも出始め、マイクログリッド市場にも大きな変化が起きています。また燃料電池やコジェネシステムの技術革新も進み、分散型電源の有効性や必要性が再認識されています。

NEDOは国内で培った技術を用いて、米ニューメキシコ州、仏リヨン市をはじめ世界10カ所以上でスマートグリッドやスマートコミュニティの実証事業を立ち上げ、日本の技術を世界に展開しております。そのようななか、本ニューズレターが発刊されることは誠に喜ばしく、最新技術や市場の素早い情報入手と深い理解を助け、日本の新産業創出に寄与するものと大いに期待しています。

【略歴】
古川 一夫(ふるかわ かずお)

1971年3月 東京大学大学院(電気)修士課程修了
1971年4月 株式会社日立製作所に入社
2006年6月 同社取締役 代表執行役 執行役社長
2009年4月 同社取締役 代表執行役 執行役副会長
2009年6月 同社特別顧問
2011年10月 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構理事長(現職)

主な社外団体役員:2007年5月〜2009年5月 社団法人日本経済団体連合会 副会長、2011年5月〜現在 一般社団法人情報処理学会 会長


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