[視点]

日本型スマートグリッド発展への提言

30年後を見据えた新しい都市の在り方実現に向けた提言
2015/01/01
(木)
東大グリーンICTプロジェクト Beyond2020検討チーム

1990年代にインターネットが普及し始めてから、およそ20年が経過し、ICT(情報通信技術)は広くさまざまな分野で利活用されるようになってきている。特にエネルギー分野における利活用は顕著に進められており、BEMS、HEMS注1などビルや住宅への適用のほか、それらの群管理を実現するとともに、供給側の情報をも利活用する面的管理システムであるCEMS注1、更にはエネルギー源に制限を受け難い都市づくりであるスマートシティなどへの適用も検討・実証的検証が進められている。
東日本大震災後、我が国のエネルギー安全保障は、大きな岐路に立っている。本稿では、2030年を見据えた新しい都市の在り方の実現に向けて課題を整理したうえで、提言していく。

主な提言

2030年、2040年にあるべき社会像

東日本大震災以後、従来型の電力供給システムに依存し続けることが困難であることが明白になっているにもかかわらず、再生可能エネルギーの活用は十分に進んでいないのが現状である。電力供給方法をより効率化・多様化し、ますます複雑高度となる需要サイドとのマッチングを図るには、いまだ解決すべき課題が多く残されている。

2030年、2040年、あるいはそれより先を見据えたとき、環境負荷の低いエネルギーを活用しつつ、持続発展可能な経済活動と快適な社会生活を送ることができ、かつそれが持続可能である注2必要がある。

これを実現するには、単に環境負荷の低いエネルギーの導入を進めるのみならず、現在未利用あるいは有効活用できていないインフラやエネルギー資源、技術等々のリソースを、技術および制度の双方の観点から活用できる仕組みが必要である。

例えば、エネルギーインフラに関して言えば、日本には信頼性の高い送配電網や中高圧ガス供給網が存在している。そうしたネットワークインフラを安全かつ自由度高く利活用可能なように制度対応できれば、需要家同士でのエネルギー資源の相互融通を、現在より柔軟に行うことが可能になる。

また、系統電力網を安定的に保つため逆潮流させられないという理由で使われていない電力や、ひたすら廃棄され続けている地下水、更には災害時にのみ利用することを想定して、何年あるいは何十年と利用されていない非常用発電設備等も、多数・多量に存在している。こうしたエネルギー源や設備を有効活用することが可能となれば、負荷の高いエネルギー源への依存度を軽減することができる。

2030年、2040年には、こうした現在未利用あるいは有効活用できていないリソースを、安心かつ安全に利活用可能とすることで、環境負荷が低く安心・安全な社会を実現することが望まれる。

2020年に世界的な注目が東京・日本に集まることを契機として、前述したような新しいエネルギー利活用方策の一部を試行的に社会実装することによって、東京・日本の先進的かつ先端的な取り組みを世界に対して広くデモンストレーションし、さらに、10年後の2030年に向けての持続的な取り組みによる、東京のスマートタウン実現を強烈にアピールすることが重要である。

我々の提案のポイントは図1の通りである。

図1 提案のポイントと提唱する2030年に目指すべき都市イメージ

  1. インターネット(The Internet)への接続と利用を前提に、かつ、インターネットのアーキテクチャの特徴である自立性、自律性、分散性、協調性、相互接続性を持ったインフラを設計構築する。
  2. 街づくりに際しては、街区においてエネルギー供給源となり、また耐災害性の高い施設(コンプレックス注、大規模商業施設、廃棄物・下水処理施設等)を中心に据えることにより、平時のみならず災害時にも人々の安心・安全を確保可能な街づくりを進める。22kVレベルの配電網によりカバーされる区域(街区)を1つの都市として捉え、災害時であっても、当該街区内において必要最低限のエネルギーセキュリティを確保可能なインフラを構築する。
  3. 上記を実現するために、エネルギーインフラの活用を検討する。

    ①電力網について、既存の系統電力網を活用し、22kVレベル配電網単位でCEMSを構築する。現在のところ系統電力網(配電網)は6.6kVが主流ではあるが、10万kW規模のCEMSの構築(大型コンプレックス等は現在のところ5万kW規模)や将来的な大規模分散電源の収容を見据えた場合には、22kVレベルの配電網の整備を進めるべきである。

    ②CEMSを構築する場合、地域のエネルギー供給源の確保が重要となるが、これについて、地域に存在する廃棄物・下水処理施設等を活用するとともに、現在多くの大型コンプレックスに設置されているコジェネに代表される常用発電設備の活用を進める。

    現在、多くの大型コンプレックスでは自施設のエネルギーの一部を賄うために常用発電設備を設置・運用しているが、災害時にはこれら設備による発電電力を系統電力網の活用により、地域に提供できる仕組みを確立する。

    こうした常用発電設備に関しては、災害時にも強い中高圧ガス供給を活用することにより、より災害に強い街づくりをすすめる。

    また、政策レベルでこうした常用発電設備の設置を支援することにより、災害時及び平時により安定したエネルギー供給を行える仕組みを実現する。

    ③平時において余剰の電力が生じた際に、当該電力を活用するための1つの方策として、水素製造(併せて貯蔵)設備を整備する。水素貯蔵基盤を活用し、環境負荷の低い公共交通機関を整備する

    ④その他、現在十分には利活用されていないエネルギー源の活用を進めることで、より高度なエネルギーセキュリティを実現する。現在十分には  利活用されていないエネルギー源としては、例えば以下に示すようなものが存在する。

    • 東京都の地下に潤沢に存在する地下水:冷媒としての利用。
    • 災害時対応を目的とした非常用発電設備:常用化することで電力源として利用。
  4. 上記のインフラを整備するために必要な施策を行う。

    ①制度面:特区の整備、補助金制度の確立 等
    ②技術面:ICTを安心して利活用な能なセキュリティ基盤の確立 等

(注)コンプレックス:複合体

図1 提案のポイントと提唱する2030年に目指すべき都市イメージ


▼ 注1
BEMS:Building and Ene-rgy Management System
HEMS:Home Energy Ma-nagement System
CEMS:Community Ene-rgy Management System

▼ 注2
すなわちその社会的コストを、市民や企業が受容可能なものであること。

ページ

関連記事
新刊情報
 2015年頃より、IoT(InternetofThings)や人工知能(AI)が注目され始め、これらの技術を使って家電や自動車などあらゆるモノがネットワークにつながり、効率的な社会を創造することが期...
 いよいよ日本でも、IoT時代に必須のLPWA(Low Power wide Area、省電力型広域無線網)サービスがスタートします。  第4次産業革命に向けて、エネルギー、ヘルスケア、製造業、...
 NIST(米国国立標準技術研究所)が2009年11月に立ち上げた委員会「SGIP」(スマートグリッド相互運用性パネル)は、2013年にSGIP 2.0となり、新たな活動を展開している。  SG...