[連載]

欧州の風力発電最前線

─第3回 風力発電の拡大と電力需給バランス:風力発電にできること─
2015/01/01
(木)

風力発電は、出力が不確実に変動する電源であるため、その普及拡大に伴って、既存の電力系統の“需要と供給のバランス(需給バランス)”に影響を及ぼすことが問題となる。そのため電力系統側は、既存電源の出力調整をして需給バランスを維持することに努めるが、調整が追いつかない場合には、電力系統の周波数が変動してしまうという問題が生じる。この問題は、風力発電(および太陽光発電)など再生可能エネルギーの導入限界を定める主体的な要因として議論されることが多い。
そこで第3回では、風力発電の導入拡大が電力の需給バランスに及ぼす影響や、風力発電側で期待される対策の1つとして、「発電出力の抑制」技術について解説する。

風力発電と電力の需給バランス

 言うまでもなく、風力発電は風況に応じて出力が変動する不安定な電源である。一方で、電力系統においては常時、系統全体(交流連系系統全体)での“需要と供給のバランス(需給バランス)”が維持される必要がある。風力発電の導入拡大に伴って需給バランスの変動が大きくなると、系統側で、この常時の需給バランス維持が困難となるため、風力発電の導入限界量が決まってしまう場合がある。

 現在、周知の通り、日本における再生可能エネルギーの系統連系における可能容量を適切に評価するために、経済産業省の下で“系統ワーキング”が設置されているが、ここでもこれらの問題を軸として多角的な議論が展開されている。

〔1〕電力系統の需給バランスと周波数

電力系統における需給バランスと周波数の関係については、本連載第1回(図3参照)で解説した。その要点を述べると、“電力系統全体における供給量と需要量を比較した場合に、供給量が需要量を上回ると系統の周波数が増加し、逆の場合は周波数低下が生じる”ことになる(図1)。系統周波数が大きく変動すると、需要家の受電電力の周波数が規定値から外れてしまい、電力の品質低下が生じるとともに、発電機保護の観点から電源停止(発電所の発電停止)などの緊急事態が生じ、波及的に他電源の停止を伴いながら大規模な停電につながる恐れがある注1

図1 需給バランスと周波数変動

図1 需給バランスと周波数変動

〔出所 SmartGridニューズレター2014年11月号〕

〔2〕風力発電の出力変動

再生可能エネルギーの導入がされていない従来の電力系統では、需給バランス変動の主な要因は需要側における電力需要の変動であり、その変動量はある程度限定的であった。例えば、昼と夜とでは電力需要が大きく異なるように、日間を通じた1日周期での変動量は非常に大きい。その一方で、1時間以内程度の変動量は限定的であり、一般的には、朝方の需要の立ち上がりや、昼間の一時的な需要量の落ち込みが最も激しい需要変動と考えられてきた(もちろん、電源の緊急的な停止などによる非常時では、より大きい需給バランスの変動が生じる)。

このような電力の需要変動に風力発電の出力変動が重なると、当然その影響はより大きくなる。風力発電出力の変動をエリア(前述の交流連系系統など)全体で考えると、系統電力と風力発電出力の互いの出力変動のタイミングは必ずしも同一でないため、出力変動の「平滑化効果」が現れる(連載第1回参照)。

例えば図2に、東北地域におけるウィンドファーム(風力発電群)間の平滑化効果の事例を示す。個別には20分間に100%変動する場合(発電量ゼロからフル発電の場合)があると示される一方で、確かに平滑化効果が期待できる様子がわかる。

図2 ウィンドファーム間の平滑化効果の事例

図2 ウィンドファーム間の平滑化効果の事例

〔出所 新エネルギー小委員会 第2回系統ワーキンググループ、「風力発電の系統連系可能量拡大策」より〕

しかし太陽光発電に比較すると、風況の変動は地理的な多様性が高いと考えられるため、現時点で、風力発電の普及拡大時の平滑化効果の様相を適切に想定することは簡単なことではない。そこで、20分間で100%とまではいかなくとも、従来の負荷変動よりもかなり大きな変動の生じることを想定して、その対策を議論する必要がある。


▼ 注1
これに関する詳細については、第1回の記事を参照されたい。

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