[特別レポート]

Googleのスマートコミュニティ戦略

2014/12/25
(木)
SmartGridニューズレター編集部

〔1〕「Google Y」の創立

「Emerging Technology Review」 の2014年9月19日の記事によれば、GoogleがGoogle Glassや自動走行車などの研究で知られる高度技術研究所「Google X」に続き、効率的な空港やモデル都市を研究する「Google Y」の創立を計画し、スマートシティの研究開発に向かうとしている。

この記事の根拠として、Google創業者の1人であるラリー・ペイジ氏が、2013年のGoogle I/Oカンファレンスで発表した「Google 2.0」の構想で、空港やモデル都市開発に触れられていることと、Google Ventures社によるUrban Engine社への投資が挙げられている。

Urban EngineのWebサイトによれば、日々の通勤の負荷を減らすため、インセンティブの手法(例えばオフピークの利用ではポイントが貯まるなどの手法)と、空間解析技術、行動経済学理論を組み合わせたシステムで、既存の交通インフラをより効率的に使うことを実現するとしている。

Urban Engine社が特徴的なのは、センサーなどで直接交通量などを監視するなどの物理的手段ではなく、ICパスの利用情報などの間接的情報を統計的に分析し、インセンティブ配分などで間接的に利用者の行動をコントロールしようとしていることである。これは、ハードウェアや物理的なインフラをもたない純粋なIT企業であっても、スマートシティにおいては、物理的インフラに関係する産業に参入できる可能性があるという点でも注目に値する。

Googleは、自動運転車の開発も積極的に進めており、スマートシティ関連でのキーとなる事業を確実に押さえようとしているとも考えられる。

〔2〕スマートシティを目指す起業家

近年、利益や成長よりも社会的貢献を主眼にした「社会起業」が増えているが、今後はスマートシティをテーマにした起業が増加する可能性を感じる現象がある。
 
スタートアップウィークエンド というイベントがある。このイベントは、週末の54時間を使い、技術やデザイン、ビジネスなどのバックグラウンドをもつ参加者が実際にチームを作り、リーンスタートアップ を行い、最小限必要な機能をもった試作品のデモまでを行うといもので、本当の起業を疑似体験できるイベントとして世界各地で開かれている。
 
2014年7月、ロンドンのグーグル・キャンパスで開催された同イベントは、スマートシティをテーマに行われた。起業体験イベントのテーマになり得るということは、実際のベンチャー向け市場として十分な魅力があることを感じさせる。
 
図:アムステルダムのFlexible street lightingプロジェクトのイメージ
自転車の周囲と前方のみを明るくし、それ以外の照明を落としている。
 

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