[特別レポート]

電力の自由化に向けて シュナイダーエレクトリックが新戦略を発表

2015/02/12
(木)

エネルギーマネジメントを主軸に国際事業を展開しているシュナイダーエレクトリックは、2015年1月27日、大手町サンケイプラザにて、2015年の事業戦略を発表した。

エネルギーマネジメントを主軸に国際事業を展開しているシュナイダーエレクトリックは、2015年1月27日、大手町サンケイプラザにて、2015年の事業戦略を発表した。
 
同説明会に登壇した代表取締役社長の安村義彦氏(写真1)は、まず、シュナイダーエレクトリックの日本におけるこれまでのビジネス展開について、図1を示しながら紹介した。
 
53年前の1962年に日本国内の事業を開始したシュナイダーエレクトリックは、事業を拡大しながら、最近では2013年にソーラー事業を、2014年にデマンドレスポンス事業を開始するなど、電力の自由化に向けて、着々とエネルギーマネジメント事業に力を入れ始めていることがわかる。
 
写真1 シュナイダーエレクトリック 代表取締役社長の安村義彦氏
 
 
 
図1 日本におけるシュナイダーエレクトリックの展開
 〔出所 シュナイダーエレクトリック配布資料より〕
 
このように、同社は、エネルギーマネジメント分野を主軸に事業を展開し始めており、スマートシティやデータセンター、太陽光発電システムやビルのエネルギーマネジメント、電気自動車などを構成する製品やサービスも提供している。
 
具体的には、図2に示すように「受配電&ビルディング」「エネルギー」「インダストリー」「IT」の4分野に分けられ、それぞれの売上や主要製品は図2中段のようになる。
 
図2 シュナイダーレクトリックの4つのメインビジネス
 〔出所 シュナイダーエレクトリック配布資料より〕
 

日本国内におけるマーケットトレンド

〔1〕重要な3つのマーケットトレンド

安村氏は、今後、新興国における産業の進展、先進国でのIoT時代の到来などによって、エネルギー問題は非常に重要な問題となること示し、エネルギーの有効活用と、クリーンで再生可能なエネルギーの利用が重要になると話した。
 
これを受け、これからの日本のマーケットトレンドとして、
 
(1)安定的・効率的・持続可能なエネルギー
(2) グローバル化への対応
(3)地方創生
 
などの分野が重要となると語った。
 
 

〔2〕各分野におけるシュナイダ―の取り組み

前述した(1)の安定的・効率的・持続可能なエネルギーの分野において、同社は電力自由化が先行している欧州で事業を展開してきたため、日本がこれから迎える電力自由化時代においては、その蓄積したノウハウと活かし、コンサルティングを含めた製品やサービスの提供を行いたいという。
 
(2)のグローバル化への対応では、日本企業が今後グローバルマーケットで競争を展開していく際に、同社のグローバル展開の経験から、適切なコンサルティングを含めてサービス提供を行えると自信を見せた。
また、同じく、データセンターや工場のインフラなどに関して、グローバルスタンダードの製品やシステムを提供できる点も強調された。
 
(3)の地方創生については、人口問題などでリソースが足りなくなってきている日本において、同社のオートメーション技術を提供することで、新たなビジネスモデルを生みだしたいと意欲を示した。
 

シュナイダーエレクトリックの2015年日本における事業戦略

続いて発表された、2015年の同社の日本国内における事業戦略として、
 
(1)既存ビジネスの強化
(2)One Schneider
(3)新規ビジネスの戦略的立ち上げ
 
という3つのコンセプトが掲げられた(図3)。次に、それぞれについて説明する。
 
図3 シュナイダーエレクトリックの2015年の事業戦略
 
〔出所 シュナイダーエレクトリック配布資料より〕
 
 

〔1〕既存ビジネスの強化

同社は従来、コンシューマ向けの「APC」、産業界向けの「Pro-face」などのブランドについて、ブランドごと、商品ごとに展開を行っていた。
しかし今後は、2015年1月1日に立ち上げたフィールドサービス事業部を中心に、既存ユーザーに対して、事業部ベースではなく、製品の保守やリモート監視、コンサルティングなどを含めたサービスとして提供していく。
 

〔2〕One Schneider

続く「One Schneider」というコンセプトは、前述のフィールドサービスと似ているが、同社では今後、従来、事業部ごとに独立していた同社の製品を、トータルソリューションとして提供することに注力する。
 
「工場」「ビル」「データセンター」「プラント」など、それぞれのエリアに主担当を置き、顧客に対して、シュナイダーグループのすべての商材を案内できるようにする。これにより、コミュニティや街全体としてエネルギー効率を最大限に引き出すことを目指す(図4)。
 
図4 One Shneiderのコンセプト
〔出所 シュナイダーエレクトリック配布資料より〕
 
また、産業向けプロセスオートメーションシステムを提供するインベンシス プロセスシステムス株式会社を2014年2月に買収したことによって、インダストリー業界も含めて総合的に案内できるようになった。
 

〔3〕新規ビジネスの戦略的立ち上げ

同社が、経済産業省の協力のもとに行っているデマンドレスポンス事業は、実事業に向けて準備を進めている。
 
デマンドレスポンスについては、日本では実証実験中であるが、電力自由化が先行している韓国においては、同社の関連会社であるエナジープールが、すでに韓国企業と共に実事業を開始している(図5)。
 
図5 デマンドレスポンス事業について
 〔出所 シュナイダーエレクトリック配布資料より〕
 
今回のシュナイダーエレクトリックの戦略発表は、電力の自由化を目前に控えて、外資系企業が、自社の経験をもとに日本でダイナミックなビジネスを展開していこうという意欲が見られた。今後の展開に注目していきたい。
 
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