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日立など、米国でコンパクトな1MWコンテナ型蓄電システムによる実証プロジェクトを開始

2015/02/26
(木)
SmartGridニューズレター編集部

株式会社日立製作所(以下:日立、東京都千代田区、執行役社長兼COO:東原 敏昭)の地域統括会社であるHitachi America,Ltd.(以下:日立アメリカ社、社長:渡部 眞也)と、コネチカット州およびニューヨーク州トロイに拠点を置くスマートグリッドテクノロジー企業であるDemansys Energy,Inc.(以下:ディマンシス社、CEO:ジェフリー・ラインズ)は、2015年2月26日、日立の1MWコンテナ型蓄電システム「CrystEna」※1を使ったリチウムイオン蓄電システムの設置および試運転を完了し、ニュージャージー州サマーデールにおいて、実証プロジェクトを本格的に開始した。

蓄電システムを電力系統に導入し、適切に運用・制御することで、設備投資の抑制や地球温暖化の防止の効果が期待される。蓄電システムの活用により、風力発電や太陽光発電の大量導入による急激な出力変動や、電力供給量が需要量を上回ることにより生じる系統の不安定化を回避でき、CO2を排出しない自然エネルギーの大規模導入が実現される。また、電力需要の少ない時間帯に余剰電力を蓄電システムに充電し、電力需要の大きい時間帯に放電することにより、系統から供給する電力を平準化でき、送配電設備を増強するための投資を抑制することができる。

日立とディマンシス社は昨年、周波数調整市場およびキャパシティー市場※2において、日立の「CrystEna」を活用した実証プロジェクトを推進することに合意した。ディマンシス社が、ニュージャージー州サマーデールに日立の「CrystEna」を設置し、実証試験全体を取りまとめる。

実証プロジェクトでは、米国最大の独立系統運用機関であるPJM※3と実証が進められているキャパシティー市場と、PJMが運営する周波数調整市場において、今後2年間にわたる運用データを収集し、蓄電システムの電力系統の安定化への有効性を検証する。さらに、米国のアンシラリー市場における蓄電システムの大規模適用を目的として、実際の電力取引を通じて蓄電システムの性能評価と信頼性、有効性の検証を行う。

日立が提供する蓄電システムは、北米で初めての導入例となる、コンテナ型蓄電システム「CrystEna」であり、リチウムイオンバッテリーやパワーコンディショナー(PCS)、バッテリー管理システム、冷却装置、火災消火システムがすべて12mクラスの運送コンテナの中に収められている。日立は、本プロジェクトを通して、PJMのアンシラリー市場における本蓄電システムの有効性を検証し、収集したデータを活用し、性能向上に取り組んでいく。

実証プロジェクトの施設整備はディマンシス社が担当し、PJMとの相互系統接続プロセスの管理や施設の建設、機器の調達、システムの遠隔運用に必要なSCADA※4および制御システムの供給などを行っている。また、PJMのアンシラリー市場において、時間単位での蓄電システムの入札を行い、蓄電システムはPJMの系統制御システムからリアルタイムに制御される。


※1:日本と米国で商標登録済み。

※2:キャパシティー市場
系統運用者が、将来にわたる十分な供給力と需要側の電源を効率的に確保するために、調整余力を市場で取り引きする仕組み。現在、PJMでは蓄電池用にルール化を進めている。

※3:PJM
PJM stands for Pennsylvania New Jersey Maryland Interconnection LLC。米国の大西洋中部地域および中西部地域における独立系統運用機関。計13州を網羅する北米最大手の機関である。PJMという名称は、ペンシルバニア州、ニュージャージー州、メリーランド州を表したもの。

※4:SCADA
産業制御システム、コンピュータによるシステム監視とプロセス制御を行う。

 

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日立

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