[M2M/IoT向けサブGHz版Wi-Fi規格「IEEE 802.11ah」と市場展望]

日本のサブGHz帯域(920MHz帯)の割り当てや応用事例

M2M/IoT向けサブGHz版Wi-Fi規格「IEEE 802.11ah」と市場展望 第2回
2015/05/01
(金)
大澤 智喜 株式会社ブリッド 代表取締役社長/インプレスSmartGridニューズレター コントリビューティングエディター

スマートグリッド、M2M/IoT時代を迎えて、米国電気電子学会(IEEE)において、900MHz(サブGHz)帯域で運用できる新しい無線LANの国際規格「IEEE 802.11ah」(いわゆるWi-Fiグループ)の標準化が、2016年3月の完了を目指して、急ピッチで進められている。第1回では、既存のWi-SUNやZigBee IP、Z-WaveなどのサブGHz帯の無線規格(日本では920MHz帯)などと比較しながら、IEEE 802.11ahの基本的な規格動向を解説した。第2回では、日本におけるサブGHz帯域(920MHz帯)における電波の割り当て状況や半導体チップベンダの動向、応用事例などを中心に解説する。

日本におけるサブGHz帯域(920MHz帯)の状況

 サブGHz帯域である920MHz帯(915〜928MHzの13MHz幅)の通信仕様は、通信・放送分野における電波の利用に関する研究開発を行っている、一般社団法人 電波産業会(ARIB:Association of Radio Industries and Business)の標準規格「ARIB STD-

T108」(920MHz帯テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備、〔平成24(2012)年2月14日策定〕)で規定されている。

 この規格のなかで使用制限としてデータの「送信休止時間」注1が規定されているため、920MHz帯では連続通信が許されておらず、通信する際には「送信休止時間」を挿入しなければならない。したがって、電波干渉がない場合でも、この制限によって、自由なタイミングでのデータの送信が不可能となっている。これは、使用するチャネル別(通信路別)に制限事項が異なるため、制御が煩雑になる。

 具体的には、キャリアセンス(空間の電波を検出する)時間も、注1に示すように、①5ms以上と、②128μs以上の2通りが定義され、それぞれ連続送信時間と1時間あたりに許された送信時間、休止時間が異なっている。このため、この規格に従った送信を行うための制御ソフトウェアの開発は複雑さを増すことになる。さらに、複雑なソフトウェアを処理するために、通信の遅延時間が長くなり、例えば、M2Mのような端末数が多いネットワークでは、応答速度が低下してしまう懸念がある。

 920MHz帯において、11ahは他の920MHz帯を使用するWi-SUNやZigBee IP、Z-Waveなどの無線技術とともに、パッシブタグシステム注3との共存も想定しなければならない。また、ARIBにおけるチャネル幅使用が1MHz幅のみと限定されているため、現在IEEEで議論されているような高速な伝送速度を見込めない。したがって、11ahを携帯電話網のオフローディング(注4を参照)に使用することは、日本では現実には難しいと思われる。

 また、920MHz帯(915〜928MHz)は、新たにソフトバンクモバイル社に割り当てられた隣接帯域900〜915MHz(モバイル端末から基地局への上りの周波数帯。総務省が2012年3月1日に認定。参考:下りは945〜960MHzを使用)であるため、この周波数帯との相互干渉についても何らかの対策が必要ではないかと思われる(図1参照)。

図1 日本における900〜915MHz帯と隣接する920MHz帯(915〜928MHz)の位置づけ

図1 日本における900〜915MHz帯と隣接する920MHz帯(915〜928MHz)の位置づけ

〔出所:http://www.tele.soumu.go.jp/resource/search/myuse/use/335m.pdf


▼ 注1
送信時間制限装置:例えば、次のように制限されている。
(1) キャリアセンス注2時間5ms以上の場合
中心周波数が920.6MHz以上922.2MHz以下の場合、電波を発射してから送信時間4秒以内にその電波の発射を停止し、送信休止時間50msを経過した後でなければその後の送信を行わないものであること。
(2)キャリアセンス時間128μs以上5ms未満の場合
中心周波数が922.4MHz以上923.4MHz以下の場合、以下の条件を満たすこと。
同時使用チャネル数が1の場合、電波を発射してから送信時間400ms以内にその電波の発射を停止し、1時間当りの送信時間の総和が360 秒以下であること(詳しくは「ARIB STD-T108」を参照)。

▼ 注2
キャリアセンス(空間の電波の検出):無線設備(例:無線端末)が、新たな送信に先立ち、他の端末がその帯域の電波を使用していないかどうかという干渉確認を実行した後、送信を開始すること。

▼ 注3
パッシブタグシステム:パッシブタグ(Passive Tag)とは、RFID(電子タグあるいは無線ICタグ)の種類の1つ。920MHz帯には、応答器(タグ)が自発的に電波を発射することはできず、応答器の送信エネルギーとして質問器(リーダー/ライター)からの搬送波の電力のみを利用するシステムをパッシブタグシステムと呼ぶ。これに対し、アクティブタグ(Active Tag)システムは応答器(タグ)が、内蔵した電池などのエネルギーによって、自発的に電波を発射することが可能なタグシステムである。質問器が、応答器を駆動させるために大きな出力が必要であるパッシブタグシステムに比べて、アクティブタグシステムは、質問器の出力を低減でき、広い範囲で通信が可能である。

▼ 注4
オフローディング:モバイル通信(携帯電話)において、データ通信量(トラフィック)の増大によって、通信速度が低下したり、つながりにくくなった場合に、そのトラフィックの一部をWi-Fiなどを使用して携帯電話網以外へ逃がし、通信網の負荷を分散させること。

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