[特集]

日本版次世代工場「Industry 4.1J」の実証実験開始へ ≪後編≫ ― 国際標準「OPC UA」とプライベートクラウドで、2017年3月に実用化へ ―

2015/08/01
(土)
SmartGridニューズレター編集部

世界のモノづくり(製造業)をリードしてきた日本でも、VEC(Virtual Engineering Community)とNTTコミュニケーションズが中心となって、次世代工場に向けた新戦略「Industry 4.1J 実証実験プロジェクト」をスタートさせた。
本特集の前編(2015年7月号)では、国際競争力が低下し始めた欧州と日本の製造業の動向を見ながら、Industrie 4.0注1の歴史的経緯を整理し、シーメンスの工場に見るIndustrie 4.0(CPSシステム)の事例を紹介した。さらに、同実証実験プロジェクトの基本的な概要についても解説した。
後編では、IECのセキュリティ標準プロトコル「OPC UA(IEC 62541)」をはじめ、国際的なサイバー攻撃の事例や日米の公的機関におけるセキュリティ関連の規制について、その動向を解説していく。また、2017年3月にセキュアな次世代工場の実現をめざすIndustry 4.1Jの、今後のロードマップなどについても解説する。
なお本記事は、VEC事務局長 村上 正志(むらかみ まさし)氏、NTTコミュニケーションズ株式会社 技術開発部 担当課長 境野 哲(さかいの あきら)氏および同社技術開発部 堀越崇(ほりこし たかし)氏への取材を元にレポートする。

スタートしたIndustry 4.1J実証実験システム

〔1〕Industry 4.1J 実証実験システムの具体的な構成

 ドイツのIndustrie 4.0は、産官学による製造業の高度化に向けたアクションプランであり、「CPSプラットフォーム」(CPS:Cyber Physical Systems)をベースにネットワーク化された「考える工場」(スマートファクトリー)を実現するプロジェクトである。この第4次産業革命「Industrie 4.0」のコンセプトをベースに、よりセキュアなシステムを目指すのが日本版「Industry 4.1J」である。

 図1は、前編で紹介したIndustry4.1J 実証実験システムを、より具体的に示したシステム構成図である。ここでは大きく、①プライベートクラウド(Bizホスティング Enterprise Cloud;後述)、②模擬プラント(NTTコミュニケーションズビル内)、③遠隔監視デモシステムなどで構成され、ここで使用される各社の監視・制御ソフトなどを含むアプリケーションソフトウェア製品の例は、表1の通りである。

表1 Industry4.1Jの実証実験システムで使用される各社の製品

表1 Industry4.1Jの実証実験システムで使用される各社の製品

〔出所 VEC、NTTコミュニケーションズ「製造現場とクラウドをセキュアにつなぐIndustry4.1J実証実験、中間報告」、2015年6月を元に作成〕

図1 Industry4.1Jの実証実験システムの具体的な構成

図1 Industry4.1Jの実証実験システムの具体的な構成

〔出所 VEC、NTTコミュニケーションズ「製造現場とクラウドをセキュアにつなぐIndustry4.1J実証実験、中間報告」、2015年6月〕

〔2〕生産システムへのサイバー攻撃

 2015年6月、日本年金機構において複数の職員の端末がサイバー攻撃を受け、過去最大規模となった約125万件の年金情報(加入者の氏名と基礎年金番号等の個人情報)が外部に流出したと発表された。一方、米国では、2,150万の個人情報が流出した可能性があると発表される(2015年7月)など、日米政府の情報システムが大規模なサイバー攻撃を受けたことは記憶に新しい。

 このようなサイバー攻撃に対して、日本では2016年4月からの電力小売全面自由化を控え、経済産業省が、家庭などに対して電力が安定的に供給できるよう(サイバー攻撃などによって停電などが発生しないよう)、スマートメーター(次世代電力計)へのサイバー攻撃に対する具体的な枠組みを取りまとめた注2

 現在、サイバー攻撃およびその懸念は国際的にも拡大しているが、今後、さらに攻撃の領域が広がり、「情報システム」に続いて「生産システム」へのサイバー攻撃が多くなることも予想されている。

 「生産システム」へのサイバー攻撃に対して、「Industry 4.1J」はどのようにセキュリティ対策を実現しようしているのだろうか。セキュリティに関する国内外の動きを見ながら、解説していく。


▼ 注1
Industrie 4.0:ドイツが中心となって推進しているため「Industrie 4.0」とドイツ語で表現(Industrie)しているが、日本版の「Industry 4.1Jプロジェクト」では英文表記(Industry)になっていることに注意。以降、このように使い分けて表現している。

▼ 注2
http://www.meti.go.jp/press/2015/07/20150710001/20150710001.html

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