[欧州の風力発電最前線]

欧州の風力発電最前線 ― 第6回 日本のスマートグリッドがガラパゴス技術にならないために ―

2015/08/01
(土)
安田 陽 関西大学 システム理工学部 准教授

スマートグリッドと系統柔軟性

次に、2つ目のキーワードである「系統柔軟性」についても見てみよう。系統の柔軟性(flexibility)とは、本連載第4回(5月号)でも言及した通り、再エネの変動成分などを管理し電力系統の安定度や信頼度を維持する能力であり、系統の柔軟性を供給する構成要素として、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の定義によると、

  1. 制御可能な電源
  2. エネルギー貯蔵
  3. 連系線
  4. デマンドサイド(需要側)

の4つに分類される。この柔軟性は、欧州や北米の電力系統の設計・運用の分野でここ10年ほどで盛んに議論されている重要なキーワードであるが、このキーワードが重要視される背景にはもちろん再エネの目覚ましい躍進がある。この柔軟性という用語は、もちろんスマートグリッドに関する海外文献でもかなりの頻度で登場する。

 例えば、国際エネルギー(IEA)では、「テクノロジー・ロードマップ」を公表しており、さまざまなエネルギー技術の2050年までのロードマップを予想・提言している。このロードマップは、現在までに21の分野が順次公開されているが、スマートグリッド編も2011年に発表されている注9。このIEAの「テクノロジー・ロードマップ(スマートグリッド編)」からいくつかの文章を引用すると、

  • スマートグリッドによって系統運用者はリアルタイムの系統情報を得ることができ、電源や需要、電力品質を管理することが可能となる。その結果、系統柔軟性が向上し、安定度や需給バランス維持することができ、より大量の変動電源を導入することが可能となる
  • 電力需要が増加し、近年の供給支障も増えているため、信頼度を向上させる(特に系統柔軟性を増すことによって)ためのスマートグリッドの役割は、ますます注目されるようになっている

などのように、「柔軟性」というキーワードが多く登場することがわかる。

 同様の記述は、特に欧州では、さまざまな政策文書やプロジェクトの報告書に見ることができる。例えば、欧州では、「欧州テクノロジー・プラットフォーム」(ETP)注10の枠組みの1つに「スマートグリッド戦略的研究計画」(SRA:SmartGrid Strategic Research Agenda)というプロジェクトがあり、2007年に「スマートグリッドSRA 2035」という文書を発表している注11。この文書でも、はっきりと「再エネと分散型電源の系統連系」や「電源および需要の柔軟性向上」が主要課題として挙げられている。


▼ 注9
International Energy Agency, “Technology Roadmap―Smart Grids―”, 2011, https://www.iea.org/publications/freepub lications/publication/smartgrids_roadmap.pdf

▼ 注10
欧州テクノロジー・プラットフォーム (ETP、European Technology Platform):欧州の民間ベースの研究推進協議団体。現在はEUの科学技術政策の一翼を担うものとして欧州委員会からも認識されている。

▼ 注11
“SmartGrids SRA 2035 〔European Technology Platform SmartGrids〕”, Mar.2012, http://www.smartgrids.eu/documents/sra2035.pdf

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