[創刊特別企画: 最新の標準化動向を追う]

「M2M」とは何か ─前編─

─新・国際標準組織「oneM2M」の全体像とロードマップ─
2012/11/01
(木)
SmartGridニューズレター編集部

市場の急成長が期待される「M2M」(Machine to Machine)通信の標準化が、いよいよ本格的に動き出した。去る2012 年7 月24 日(日本時間7 月25 日午前)、米国ワシントン州ベルビュー市に、世界の代表的な7 つの標準化開発機関(SDO)の代表が集まり、M2M分野における新しい国際標準化組織「oneM2M」(ワンエムツーエム)を設立するための調印式が行われ、「oneM2M」が正式に発足した。ここでは、スマートグリッド時代およびその先の時代に向けて、M2Mとは何か、IoT(モノのインターネット)との関係、さらにoneM2Mの全体像とそのロードマップについて、NICT(情報通信研究機構)執行役 富田二三彦氏、TTC(情報通信技術委員会)業際イノベーション本部本部長 山中幸雄氏、TTC 担当部長(標準化兼業際イノベーション本部) 高橋竜男氏にお聞きして最新動向をまとめた。

M2Mとは何か? IoTと何が違うのか?

最初に、M2M(Machine to Machine)通信とは何か、簡単な例を挙げて整理しておく。

図1はM2M 通信への通信形態の発展を示したものであるが、第1段階は、電話のように人(Human)と人(Human)が電話網に接続され、電話機を通して通信する形態(H2H)である。続く第2段階は、インターネットのようにパソコンを操作する人(Human)がサーバ(機械:Machine)と通信する形態(H2M)である。

 

これに対して、人を介在させないで、例えばセンサーネットワーク1などによって「スマートメーター」などの機械(Machine)と、家庭のエネルギー管理システムである「HEMS」などの機械(Machine)を直接通信させる形態が、M2Mの通信形態である。

つまりM2Mとは、人が関係しない(介在しない)機械と機械の通信のことを言い、いわば機械の側から見て、機械と機械が自動的に情報をやり取りするシステムの全体を表している。一方、IoT(Internet of Things)とは、「モノのインターネット」と言われるように、人の側から見て、情報を受け取る人へのサービスも含めた概念ととらえることができる。

IoTのシステム部分には、M2Mと同様に人が介在しない機械と機械の情報通信もあるが、サービスの観点から、人が介在することもある状況の中でモノ同士がインターネット通信する全体像と考えられる。例えば、人による判断などを含めて見てみると、観測データはもちろん、人の流れ、物流、エネルギー供給・需要、病院や学校・職場、住居等々のさまざまな種類の情報交換を通じて、時々刻々変化する災害に対して、被災する可能性のある住民ひとりひとりにリアルタイムで的確に対応する、「総合的な耐災害システム」のようなものが考えられる。

このようにM2MとIoTの両者はかなり似ているため、同義とみられる場合もあるが、捉え方によって表1に示すように、IoTはM2Mよりも幅広い概念をもつため、M2MはIoTの1つの要素という見方もできる。

 


▼注1
例えばZigBeeやZ-Wave、Bluetoothなど。
 

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