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東北大など、大容量の蓄電が可能な「リチウム空気電池」用電極材料を開発

2015/09/02
(水)
SmartGridニューズレター編集部

2015年9月2日、東北大学原子分子材料科学高等研究機構(以下:AIMR)の陳明偉教授らは、JST戦略的創造研究推進事業の一環として、3次元構造を持つナノ多孔質グラフェン※1による高性能なリチウム空気電池※2を開発したことを発表した。

開発のポイント

  • リチウムイオン電池の6倍以上の電気容量を持ち、100回以上繰返し使用が可能な「リチウム空気電池」の開発に成功。
     
  • 高性能な多孔質グラフェンと触媒により長寿命と大容量を実現。
     
  • 1回の充電で500km以上の走行が可能な電気自動車の実現を視野に入れている。

 図 ナノ多孔質金属の3次元立体図

現在の電気自動車に使われているリチウムイオン電池の電気容量では、200km程度しか走行できず、走行距離を飛躍的に伸ばすために新しいタイプの大容量の蓄電池の開発が望まれている。
近年、注目されている新しい二次電池の中に「リチウム空気電池」がある。この電池はリチウムイオン電池とは異なり、正極にコバルト系やマンガン系の化合物を用いることなく、リチウム金属、電解液と空気だけで作動し、リチウムイオン電池の5~8倍の容量を実現できるとされている。

陳教授らはこのリチウム空気電池の正極に新たに開発した多孔質グラフェンを使用し、電極の単位重量あたり2,000mAhの大きな電気エネルギーをもち、かつ100回以上の繰返し充放電が可能なリチウム空気電池の開発に成功した。

正極に使用した多孔質グラフェン(図参照)は、グラフェンのもつ電気伝導性に加えて、大きな空隙をもつことから、大容量の電極材料となりうることに着目したものである。現時点では、少量の貴金属を触媒に使用し、また、充電時の過電圧が大きいなどの課題は残るが、実験結果を電気自動車の走行距離に換算すると充電1回あたりで500~600kmの走行に相当する結果が得られた。今後、さらなる改善を行うことで実用的な電気容量と寿命への到達が期待される。


※1 ナノ多孔質グラフェン/ナノ多孔質金属:ナノ多孔質グラフェンは物質の内部にナノサイズの細孔がランダムに繋がったスポンジ状構造体(ナノサイズの細孔を持つ多孔質構造体)のこと。

※2 リチウム空気電池:リチウム空気電池とは、負極にリチウム金属、正極に電気伝導性多孔質体(金属や多孔質炭素など)を採用し、正極でリチウムイオンと酸素が反応し、Li2O2を生成する(放電)ことで電気を得るメカニズムである。また、生成したLi2O2をLiと酸素に分解する(充電)ことで再放電が可能となる。リチウム空気電池はこのようなLiと酸素だけのやり取りで蓄電ができ、極めて単純な化学反応式で表すことが可能。

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東北大学

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