[新動向]

ECHONET LiteやSEP 2も検証する 日本初の「EMS新宿実証センター」が開設!

─HEMSを核にデマンドレスポンス技術の実証・評価を実施へ─
2012/12/01
(土)
SmartGridニューズレター編集部

経済産業省と早稲田大学先進グリッド技術研究所(所長:林泰弘教授)は、JSCAスマートハウス・ビル標準・事業促進検討会 の活動の一環として、電気・ガス事業者、通信事業者、ハウスメーカー、自動車メーカー、エネルギー・家電・通信機器メーカーなど25 社の協力を得て、早稲田大学内に「EMS(Energy Management System)新宿実証センター」を2012 年11 月1日に開設、HEMS を核にデマンドレスポンス技術等の実証・評価を開始した。

プロシューマー時代にEMS新宿実証センターの重要な役割

写真1 同センターの説明をする林泰弘教授

写真1  同センターの説明をする林泰弘教授

EMS新宿実証センターのオープンにあたって、所長の林泰弘教授(写真1)は、「これまで電力は一方的に電力会社から需要家側に供給されていたが、東日本大震災以降、需要側、つまり使う側に太陽光発電や電気自動車、蓄電池など、さまざまな機器が急速に導入され始めている。このため、電力を使う側だけだった需要家側が、今度は電気をつくったり、移動させたり、溜めたりすることができるようになってきた」と述べ、さらに「需要家側が電力をつくる、すなわちProduser(プロデューサー)という立場となり、同時にConsumer(コンシューマー)という使う立場でもあるという両方を足し合わせて「Prosumer」(プロシューマー)と呼ばれているが(欧米でもそう言われている)、この時代が今まさに到来している」と語り、プロシューマー時代における同センターの重要な役割をアピールした。

実証プラットフォームを構築しデマンドレスポンスを実証・評価

表1 実証センターにおける3つの実証の目的

表1  実証センターにおける3つの実証の目的

この実証センターには、図1に示すような実証プラットフォームが構築され、表1のようなデマンドレスポンス制御技術の実証・評価などが行われる。具体的には同センター内に設置される4つのスマートハウスで、HEMSを核にスマートメーターをはじめ、太陽光発電、電気自動車、電気自動車用充電/充放電装置、燃料電池、ヒートポンプ給湯器、エアコン、蓄電池などを相互に連携させる。これによって、宅内の最適制御を行い、電力会社との契約アンペアに収まる範囲において、電力をリアルタイム制御し、電気料金が高い時間帯には電力使用量を自動で抑制する「ピークカット/ピークシフト」技術を開発する。

また、同センターには、図1の左下に示すデマンドレスポンスサーバ(Grid EMS)をはじめ、配電系統制御模擬システム(ANSWER)なども導入され、Aルート、Bルート、Cルートの通信・制御環境も実証される。

この環境下で、日本の標準通信規格である「ECHONET Lite」や米国のNIST注3が採用を決定している「SEP 2」(Smart Energy Profile 2)を実装したHEMSを用いて、デマンドレスポンス技術の実証・評価などが行われる。

図1 EMS新宿実証センターの実証プラットフォーム

図1  EMS新宿実証センターの実証プラットフォーム

世界初のZigBee IPモジュールでECHONET LiteとSEP 2を走らせる

同センターのHEMSの通信モジュールには、世界初の920MHz対応のZigBee IP注4を採用した通信アダプタ(アドソル日進製)が使用されているなど、最新技術も導入されており参加者を驚かせた(写真2)。

写真2 EMS新宿実証センターの心臓部となるDR(デマンドレスポンス)対応のHEMS(住友電工製、写真右上)とZigBee IPを採用した通信アダプタ(アドソル日進製、写真右上下)。見える化ディスプレイはシャープ製(写真下)

写真2  EMS新宿実証センターの心臓部となるDR(デマンドレスポンス)対応のHEMS(住友電工製、写真右上)とZigBee IPを採用した通信アダプタ(アドソル日進製、写真右上下)。見える化ディスプレイはシャープ製(写真下)

ZigBee IP(2013年に標準化完了予定)は、ZigBeeアライアンスによって開発されているオープンなZigBeeプロトコルである。このZigBee IPの上で、前述したスマートグリッドの中核的なアプリケーションであるECHONET LiteやSEP 2などを走らせ検証が行われる。

同センターは日本のスマートグリッドの重要な開発拠点の1つであり、日本のスマートハウスやスマートビルを普及させるうえで重要な役割を果たすものと期待されている。


▼ 注1
経済産業省は、日本型スマートハウス・ビルの更なる普及拡大に向けた課題について議論を行うため、スマートコミュニティアライアンス(JSCA)の中に「スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会」を設置(2012年6月22日)した。

▼ 注2
参加企業25社は以下の通り。旭化成ホームズ、アドソル日進、大阪ガス、オムロン、関西電力、KDDI、九州電力、シャープ、住友電気工業、ダイキン工業、中部電力、デンソー、東京電力、東京ガス、東芝、トヨタ自動車、日産自動車、日本電信電話、日本電気、パナソニック、日立製作所、富士通、三菱自動車工業、三菱総合研究所、三菱電機。

▼ 注3
NIST:National Institute of Standard and Technology、米国国立標準技術研究所。

▼ 注4
本誌「特集1:創刊記念スペシャルインタビュー ─後編─」の表3参照。

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...