[特集]

申請認可された「小売電気事業者」全40社の顔ぶれ ― 電力・ガス・通信など多様な産業から続々参入 ―

特集 パート5
2015/10/30
(金)
SmartGridニューズレター編集部

経済産業省(以下、経産省)は、電力システム改革第2弾の電力小売全面自由化(2016年4月)に向けて、2015年8月3日から小売電気事業者(以下、小売事業者)の事前登録申請を受け付けている。その結果、2015年10月8日、登録申請があった事業者のうち、まず40件が審査に通過し、小売事業者として初めて登録された。
ここでは、この全40社の概要と電力取引量について一覧し、現時点(2015年10月25日)での参入事業者の傾向を解説する。

初の小売事業者として登録された全40社

〔1〕多彩な強みをもった事業者が参入

 表1に、小売事業者として初めて登録された全40社について、各事業者のサイトや経産省の電力調査統計などをもとに示す。これを見ると、まず、イーレックスやエネット、ダイヤモンドパワーなど、すでに新電力(PPS)として特別高圧・高圧の需要家向けに電力小売事業を行ってきた企業がある。イーレックスは、低圧需要家向けの電力小売事業を目的として2015年9月1日に設立したイーレックス・スパーク・マーケティングとイーレックス・スパーク・エリアマーケティングなどの子会社についても登録しており、今後は、一般家庭への電力販売事業にも注力していくことが見てとれる。

 また、静岡ガス&パワーや北海道瓦斯のようなガス会社や、ケイ・オプティコムのような電気通信事業者も登録されている。電力以外のインフラを担う企業が、電力の提供もセットにした新たなサービスを計画している。

 このほか、昭和シェルや東燃ゼネラルなどの石油販売大手なども登録されており、電力業界に、さまざまな強みや特徴をもったプレイヤーが参入しようとしている。

 具体的なサービス展開については公表していない事業者が多いが、今後、10電力会社の託送料金などが決定するに従い、明らかになると考えられる。

〔2〕電力取引量から見る各事業者の特徴

 次に、各事業者の供給可能電力量を意味する送電端供給力を見てみると、エネットが11億5,186万8,000kWhともっとも大きい。また、昭和シェルやダイヤモンドパワー、出光グリーンパワーなどは、他事業者に比べ、受電電力量に対する送電電力量(表下段の注2と注3を参照)が大きく、日本卸電力取引所(JEPX)を通した売電や、他の新電力への電力販売に力を入れていることがわかる。注目される再生可能エネルギーの発電電力量(表下段の注1参照)や受電電力量については、現状ではほとんど明らかにされていない。

 このほか、SEウイングズのように、自社発電所は所有していないものの、親会社のサニックスエナジーの発電所から電気を調達して販売を行うという業態もある(同社への取材による)。低圧需要家向けの電力販売をきっかけに新たに電力小売市場に参入する事業者もあり、今後、どのような勢力図になるか注目したい。

新たに8社が登録審査を通過

 2015年10月23日、経産省は、開催された第10回電力取引監視等委員会において、伊藤忠エネクスや大阪瓦斯など、新たに8事業者注1が登録審査を通過し、今後正式に小売事業者として登録されると発表した。2015年10月22日時点で、95件の小売事業者などの登録申請が行われており注2、また、2015年10月21日現在、特定規模電気事業者の登録数は774件と、引き続き増加している。今後、どのような事業者が登録されるのか、引き続き注目したい。

 現時点では、各事業者は、小売事業の詳細やサービス内容については互いに手の内を見せていないが、小売事業者が出揃い、各事業者の詳細が明らかになった時点で、続報をお届けする。(特集終わり)

表1 2015年10月24日時点で登録されている小売事業者と、2015年8月度の各事業者の電力取引状況(資源エネルギー庁公表による登録番号順、電力量の単位:1,000kWh、「-」は不明、もしくは実績がないもの)

表1 2015年10月24日時点で登録されている小売事業者と、2015年8月度の各事業者の電力取引状況

表1 2015年10月24日時点で登録されている小売事業者と、2015年8月度の各事業者の電力取引状況

表1 2015年10月24日時点で登録されている小売事業者と、2015年8月度の各事業者の電力取引状況

注1 発電電力量:自社所有の発電所の発電能力。
注2 受電電力量:他社の発電所や電力事業者から受電した電力量。自社所有の発電所による発電電力量は含まない。
注3 送電電力量:日本卸電力取引所(JEPX)や他の新電力事業者(PPS)などへ送電した電力量。
注4 発電所所内用電力量:自社所有の発電所内で消費された電力量。
注5 自家消費等:自社工場などで消費した電力量。
注6 送電端供給力:発電電力量と受電電力量の合計から、送電電力量、発電所所内用電力量、自家消費等を減じた電力量。各事業者の供給可能電力量を意味する。
出所 各事業者の電力取引状況については経済産業省の電力調査統計の「平成27年度 2-(8) 特定規模電気事業者」(http://www.enecho.meti.go.jp/statistics/electric_power/ep002/xls/2015/2-8-H27.xls)の2015年8月度のデータをもとに作成。各事業者の概要については、各社のサイトと取材内容、資源エネルギー庁による登録小売電気事業者一覧(http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/retailers_list/)をもとに作成

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