[クローズアップ]

センサスの「FlexNet」戦略を聞く!

─すでに世界中で1200万台のスマートメーターを導入─
2013/05/01
(水)
SmartGridニューズレター編集部

2013年2月27日から3月1日までの3日間、東京ビッグサイトで開催された「スマートエネルギーWeek 2013」(リードエグジビションジャパン主催)において、すでに1200万台のスマートメーターを導入実績をもつセンサス(Sensus。本社:米国ノースカロライナ州)もブースを出展。会場において、アジア太平洋地域(APAC)の営業担当バイスプレジデント マイケルM. マーフィー(Michael M. Murphy)氏と、ビジネスデベロップメント/マーケティング担当ディレクターアンディ・スレイター(Andy Slater)氏に同社の歴史や技術、そして日本における戦略をうかがった。

センサスのプロフィール

センサスは、1843年に創立された水道メーター会社を起源とし、2003年に現在の企業名になった。2012年12月現在、世界42カ国で事業を展開し、約3600人の従業員を抱えている。

設立当初から手がけている水道メーターに加え、現在は電気およびガスメーター関連の事業も行っている。水道メーターは世界トップシェアを誇っているほか、電気メーターやガスメーターでも、常にシェア上位に名を連ねている。これまでの歴史のなかで、約8000万台の各種メーターを導入してきた同社だが、最近ではスマートグリッド関連の事業にも力を入れている。

現在、世界中で175件以上のスマートグリッドプロジェクトにかかわっており(完了しているものもあれば、現在進行中のものもある)、現在までに導入したスマートメーターは1200万台を超えている。このような積極的な事業展開を行ってきた結果、収益に占めるスマートメーターと通信ネットワークソリューション事業の割合が50%を超えているとしており、今まさに同社は大きな事業転換を迎えていると言えるだろう。

写真1(左) アジア太平洋地域(APAC)営業担当バイスプレジデント、マイケルM.マーフィー(Michael M. Murphy)氏
写真2(右) ビジネスデベロップメント/マーケティング担当ディレクター、アンディ・スレイター(Andy Slater)氏

写真1(左)  アジア太平洋地域(APAC)営業担当バイスプレジデント、マイケルM.マーフィー(Michael M. Murphy)氏<br />
写真2(右)  ビジネスデベロップメント/マーケティング担当ディレクター、アンディ・スレイター(Andy Slater)氏

FlexNetとは?

スマートグリッドビジネスに注力するなかで、同社の核となる技術が「FlexNet」と呼ばれる通信技術である。「FlexNet」とは、一言でいえば、スマートメーターからコンセントレータまでのFAN(Field Area Network、地域通信網)において利用される通信技術である注1

この通信技術は、既存の電波塔(ベースステーション)などにFlexNetアンテナと呼ばれるアンテナを設置し、そのアンテナとスマートメーターが通信を行う広域無線を用いたスター方式のネットワークを用いている点が特徴である。周波数帯としては、英国やブラジル、そしてブルガリアでは400MHz帯、北米では900MHz帯を利用している。

FlexNetで利用されるスマートメーターは、電力の検針データ交換に利用されている一連の標準規格(IEC 62056)であるDLMS/COSEM注2対応のもので、通信プロトコルとしてはZigBeeやM-Bus注3などに対応したものが利用できる。そのほか、FlexNet基地局までのFANおよび基地局からヘッドエンドシステムまでのWAN(Wide Area Network、広域通信網)で使用されるスタック構成例を示したものが図1である。

図1 FlexNetのネットワークとスタック構成例

図1  FlexNetのネットワークとスタック構成例

〔出所 センサス担当者へのヒアリングを元に著者作成〕

センサスが採用しているスター方式に対して、米国のスマートグリッドプロジェクトではメッシュ方式のネットワーク構成を採用している場合が多い。スマートメーターにおいてメッシュ方式を採用した場合、バケツリレーのようにスマートメーター同士が通信を行い、コンセントレータまでデータを転送する。ただし、本ニューズレターの2013年2月号に掲載した「AMI分野のプレイヤー動向とPG&Eのケーススタディ」でも紹介したように、メッシュ方式の場合、オプトアウトプログラム注4などによってスマートメーターが取り外されてしまうと、メッシュの構成が変わってしまい、通信のパフォーマンスに悪影響があることが指摘されている。

センサスの場合は、スター方式を採用しており、すべてのスマートメーターが近くにある基地局にデータを送ることになるため、メッシュ方式のように周辺の機器の設置状況には影響を受けないと言われている。1つの基地局がカバーする範囲は半径5〜20kmと広く、最大で約5万台のスマートメーターに接続することができる(写真3)。さらに、基地局がカバーする範囲を重複させることによって、スマートメーターは一度に2つ以上の基地局と接続することができる。そのため、仮に特定の基地局に接続できないという障害が生じたとしても、FlexNetでは無線環境を常に監視し、接続可能な基地局に接続することができる。これによって、信頼性の高いスマートメーターネットワークが実現されるのである。

写真3 センサスの基地局(カナダで導入したもの)

写真3  センサスの基地局(カナダで導入したもの)

さらに、FlexNetの用途はスマートメーターネットワーク(AMI)向けに限定されているわけではなく、配電自動化やデマンドレスポンスなど、スマートグリッドに関するさまざまなアプリケーション向けの通信にも適用することができる。


▼ 注1
FlexNetアーキテクチャについては、下記サイトを参照。
http://sensus.com/ja/web/japan/capabilities/flexnet/architecture-for-japan

▼ 注2
DLMS:Device Language Message Specification/Companion Specification for Energy Metering、デバイス言語メッセージ仕様/エネルギー計測関連仕様。

▼ 注3
M-Bus(Meter-Bus):メーターバス、欧州標準(European standard)。遠隔から電気・ガス・水道等の消費量を読み取る欧州のメーター標準規格。物理層/リンク層(EN 13757-2)、アプリケーション層(EN 13757-3)のほか、無線M-Bus(EN 13757-4)などのプロトコルで構成。

▼ 注4
需要家からの依頼に応じて、すでに取り付けたスマートメーターを取り外し、従来型のメーターに取り替えること。

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