[クローズアップ]

世界最大規模の東電・スマートグリッドシステムを「東芝」と「NTTデータ」が構築へ!

2013/06/01
(土)
SmartGridニューズレター編集部

【インプレスSmartGridニューズレター 2013年6月号掲載記事】2700万台のスマートメーターを導入し、世界最大規模となる東京電力のスマートグリッドシステムのパートナー事業者が、「スマートメーター用通信システム」では東芝、「スマートメーター運用管理システム」においてはNTT データに決定し、2013年5月1日に発表された。これらのシステムは、両社のリーダシップのもとに2013年度内に実証実験を開始し、2014年4月には商用段階に移行し、各家庭にスマートメーターを導入する計画〔初年度(2014年度)190万台〕であり、新しい局面を迎えた。ここでは、今回の事業者選定の背景や今後の展開を解説する。

東京電力(以下、東電)は、経営再建を目指して2012〜2021年度の10年間で、3.3兆億円のコスト削減を目指す「総合特別事業計画」注1を推進している。これに基づいて、スマートグリッドの導入に向けて「スマートメーターの国内外からのオープンな調達・導入の拡大」および「スマートメーターを活用した家庭等を対象とする新たなサービスの展開」の検討が進められている。

このような背景から、東電がすでに東日本大震災以前から準備・検討していた独自の「スマートメーターの初期仕様」については、オープンで標準技術を採用することを基本に、ゼロベースから見直し(全面見直し)が行われ、新しい仕様が策定されることになった。(例:スマートメーター計量部の新仕様を開示2012年10月)。

「通信システム」は東芝へ、「運用管理しシステム」はNTTデータへ

〔1〕オープンで低コスト化なスマートメーターの導入

このような流れを受けて、東電は、すでに原子力損害賠償支援機構(以下、原賠支援機構)の協力を得て、国内外の企業から「スマートメーターへの意見募集」(RFC:Request For Comment)を2012年3月〜4月に実施しており、その結果、応募意見数482件、応募者数88件と多数が寄せられた。

この意見募集を受けて、東電は、「RFCを踏まえたスマートメーター仕様に関する基本的な考え方」(2012年7月12日)注2を発表した。

この「基本的な考え方」では、寄せられた多くの意見(RFC)を採用するとともに、「スマートメーターの仕様」決定については、スマートコミュニティ・アライアンス(JSCA)における検討内容注3を反映することを前提として、原賠支援機構と協議のうえ決定すること、などが盛り込まれた。

さらに、「基本的な考え方」では、重要な3つの視座(原則)、すなわち、

①徹底したコストカットの実現(他事業者の既存インフラの最大限の活用)

②外部接続性の担保(標準的でオープンな通信プロトコルの採用)

③技術的拡張可能性の担保(将来のサービスの多様化への対応)

が設定され、オープンで低コストなスマートメーターの導入を目指すことになった。

〔2〕国内外の企業からシステムの提案募集(RFP)を実施

さらに東電は、すでに「スマートメーター用通信システム」および「スマートメーター運用管理システム」について、次の通り、国内外の企業からシステムの提案募集(RFP:Request For Proposal)を行い、書類審査でそれぞれ4社が合格した。

(1)「スマートメーター用通信システムに関する提案募集(通信RFP)」(募集期間:2012年11月19日〜2013年2月28日、RFP提出企業数5社のうち4社が合格)

(2)「スマートメーター運用管理システムに関する提案募集(システムRFP)」(募集期間:2012年12月17日〜2013年3月8日(RFP提出企業数8社のうち4社が合格)

また表1に示すように、スマートメーターに関しては、「通信システム」「運用管理システム」「スマートメーター」関連の事業者選定の3つパート、すなわち図1の領域①〜③に示す3つのパートに分けて、事業者を選定するポイント(選定内容)が提示されている。

表1 スマートメーター関連の事業者選定の3つパート

表1  スマートメーター関連の事業者選定の3つパート

〔出所 東京電力2013年5月1日プレスリリース 別紙2、http://www.tepco.co.jp/cc/press/2013/1226967_5117.html

これに基づいて、図1に示す、

  • 領域①:スマートメーター
  • 領域②:スマートメーター通信システム(AMI)
  • 領域③:スマートメーター運用管理システム(MDMS)

の領域に関して、今回は、領域②(通信システム)と領域③(運用管理システム)の2つの領域について審議が行われた。

その結果、それぞれパートナー事業者(インテグレータ)として、

  • スマートメーター用通信システム:東芝
  • スマートメーター運用管理システム:NTTデータ

が選定され、2013年5月1日に発表された。

なお、図1に示す領域①のスマートメーターに関しては、本年(2013年)10月から国内外の新規参入企業も含めオープンに競争入札が実施される。すでに、2013年3月25日には入札ガイダンスが実施され、国内外から23社(うち海外3社)が参加した。

初年度の2014年度には、スマートメーター190万台の導入が予定され、遅くとも2023年度までに東電管内の全家庭(計2700万台)に導入される予定となっている。

図1 スマ―トメーターに関するシステム構成図とパートナー事業者の選定(決定)

図1  スマ―トメーターに関するシステム構成図とパートナー事業者の選定(決定)

〔出所 http://www.toshiba.co.jp/about/press/2013_05/pr_j0101.htm


▼ 注1
総合特別事業計画:2012年4月27日に原子力損害賠償支援機構と東京電力で策定され、2012(平成24)年5月9日公表された。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/images/120509j0601.pdf

▼ 注2
東京電力「RFC を踏まえたスマートメーター仕様に関する基本的な考え方」、2012年7月12日、http://www.tepco.co.jp/corporateinfo/procure/rfc/repl/t_pdf/2_concept-j.pdf

▼ 注3
JSCAスマートハウス標準化検討会「スマートハウス標準化検討会とりまとめ(案)」、2012年2月24日、http://www.meti.go.jp/press/2011/02/20120224007/20120224007-2.pdf

ページ

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...