[特別レポート]

スマート分電盤からマルチベンダHEMSプラットフォームの普及へ! 河村電器産業の電力小売全面自由化後の戦略を聞く!

2016/03/17
(木)
奥瀬 俊哉 インプレス SmartGridニューズレター コントリビューティングエディター

 いよいよ2016年4月1日から電力小売全面自由化が始まる。これに続き、内閣官房 国家戦略室が作成したグリーン政策大網(注1)では、2020年までにZEH(ネット・ゼロエネルギーハウス、注2)を実現する新築住宅が必須に、そして2030年までにHEMS(注3)を全世帯に普及していくことが予定されている。
 HEMSに必須となるスマート分電盤の開発を積極的に進めている河村電器産業株式会社(以下、河村電器産業)は、電力小売全面自由化後のHEMS戦略をどのように考えているのか。同社マーケティング統括部 東日本ビジネス開発課の湯本 広文(ゆもと ひろふみ)氏へのインタビューをもとに解説する。

HEMSの設置が急がれる背景

 前述した、政府のグリーンエネルギー大網では、日本国内における民生部門のエネルギー消費を抑制するため、2030年までに全世帯へのHEMSの普及が目標の1つとして掲げられている。

 スマートハウス(コネクテッドホーム)やスマートマンションへHEMSを導入するには、系統電力から供給される電気を安全に使用するために必要な漏電遮断器(漏電ブレーカー)や配線用遮断器(安全ブレーカー)を1つにまとめた「分電盤」と、経済産業省が定めた重点8機器注4を中心に構成されることになる。

 また、2012年2月には、経済産業省によって日本国内でのスマートメーターとHEMSをつなぐ標準プロトコルとして「ECHONET Lite注5」が認定された。これにより、家電機器メーカーや分電盤メーカー、HEMSサービス事業者にとって、ECHONET Liteへの対応は喫緊の課題であり、各社とも急ピッチで対応を進めている。

河村電器産業のスマート分電盤

 HEMSに関して積極的な動きを見せている企業の1つが、河村電器産業株式会社(以下、河村電器産業)である(表1)。

 同社は現在、次の4つの市場で「安全/安心」に加え、「測定/監視/制御」の領域を開拓することを目指している。

 (1)創エネルギーシステム連携市場
 (2)エネルギーマネージメントシステム(EMS)市場
 (3)次世代配電システム市場
 (4)ユビキタスICTネットワーク市場

 家電製品の多様化や電力需要の増加や、2016年4月から始まる電力小売全面自由化に際して、同社が主力製品として押し出しているのが分電盤「enステーション」と、エネルギー計測機能を内蔵した「enステーション EcoEye」である。それぞれの特長を次に説明する。

表1 河村電器産業のプロフィール

出所 河村電器産業のサイト(http://www.kawamura.co.jp/corporate/corporate.php)をもとに編集部作成

〔1〕enステーションの特長

 昨今の住宅では、次に示す理由によって、必要な電気の回路数が増え、住宅用分電盤が大型化してしまうことが課題となっている。

 (1)省エネ/環境対策
   ・エネルギーの見える化(計測/制御器の設置)
   ・太陽光/燃料電池(連系ブレーカーの追加)
   ・電気自動車など(専用ブレーカーの追加)

 (2)快適性の追求
  ・クッキングヒーター/食器洗浄機などのオール電化の普及(専用回路の増大)

 (3)安全/安心の追求
  ・避雷器/感震器など(保護機器の追加)

 このような課題を解決するため、河村電器産業では、ブレードブレーカー1枚を10mmまで薄くすることで、多機能/多回路を備えつつもスペースを抑えた分電盤「enステーション」(エンステーション)の開発に成功した(図1)。

図1 enステーションのサイズ比較
出所 河村電器産業資料より

 さらに、オプションで太陽光発電連系用ブレーカーや、EV(電気自動車)充電用ブレーカー、漏電ブレーカー、感震リレーなど、多様なエネルギー利用や防災機能のためのブレーカーも搭載できるよう、拡張性の高い構造となっている。

〔2〕enステーションEcoEyeの特長

 このenステーションに、エネルギー計測機能を内蔵した分電盤が「enステーションEcoEye」(エンステーションエコアイ)である。

 スマートメーターは、各家電と直接つながっているわけではないため、家庭全体の電力の計測しかできない。しかし、enステーションEcoEyeでは、微力な電力でも計測可能な小型の高感度センサーを内蔵しているため、詳細な電力情報の収集が可能である(図2)。

 また、従来は、計測センサーを系統・分岐ブレーカーへ取り付ける必要があったが、分電盤に内蔵することで、計測センサーの取り付けの時間がかからず、取り付けミスも軽減できる。

図2  enステーションEcoEyeの各部の説明
CT:Current Transformer、電流センサーのこと。
PV:Photovoltaic。太陽光発電システムのこと。
出所 河村電器産業資料より

〔3〕enステーションEcoEyeのHEMS連携機能

 また、enステーションEcoEyeは、通信プロトコルとしてECHONET Liteを採用しており、LANケーブルでつなぐことで、通信計測ユニットとHEMSコントローラを連携することができる。河村電器産業では、「enステーションEcoEye」から取得した各家庭の電力利用データを、提携しているHEMSサービス事業者に提供することで、HEMS事業者がより精度の高いHEMSサービスを行えるようにしている。いわゆるディスアグリゲーション注6サービスのためのデータ提供を行っている(図3)。

図3  enステーションEcoEyeとHEMSサービスとの連携

出所 河村電器産業資料より

 同社によれば、すでに京セラやオムロン、デンソー、岡谷鋼機などのHEMSベンダとの接続検証を終えており、さまざまなHEMSモデルが用意され(図4)、今後も提携するHEMS事業者を増やしていくとしている。

図4  enステーションEcoEyeと連携しているHEMSサービスベンダ
出所 河村電器産業資料より


▼注1
グリーン政策大網:http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/pdf/20121127/shiryo4-1.pdf

▼注2
ZEH:ネット・セロエネルギーハウス。経済産業省が推進している、年間に消費するエネルギーをほぼゼロにする住宅の構想。建築物における一次エネルギー(自然から直接得られるエネルギー。例えば、石油・石炭・天然ガス等の化石燃料や、原子力燃料のウラン、水力・太陽・風力・地熱等の自然エネルギーなど)消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイト〔需要側(消費者側)の近くに設置する太陽光発電などの電源〕での再生可能エネルギーの活用などにより削減し、年間での一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロまたはほぼゼロとなる建築物のこと。

▼注3
HEMS:Home Energy Management System、家庭用(宅内)エネルギー管理システム。スマートハウスにおける中核的な装置で「宅内エネルギー管理システム」と言われる。HAN(ホームネットワーク)に接続され、IT 技術を使用して家庭内に設置された各機器を効率的に運用するための装置。例えば、次の機能をもっている。
 (1)監視機能:宅内(家庭用)のエネルギー使用状況を把握する機能。
 (2)表示機能:宅内(家庭用)のエネルギー使用を表示機器に表示し「見える化」する機能。
 (3)制御機能:宅内(家庭用)の家電機器や住宅設備機器を遠隔自動制御する機能。
HEMS は、ホームコントローラあるいはホームサーバなどとも言われる(企業・団体によって呼び名は異なるが、基本的な機能はほぼ同じもの)。日本では、HEMS の推奨インタフェースとして「ECHONET Lite」(注5参照)が経済産業省傘下のJSCA(スマートコミュニティ・アライアンス)で選定されている。

▼注4
重点8機器:①スマートメーター、②太陽光発電、③蓄電池、④燃料電池、⑤EV/PHV、⑥エアコン、⑦照明器具、⑧給湯器のこと。

▼注5
ECHONET Lite:ECHONET コンソーシアムによって策定(2011年6月30日)され、一般公開(2011年12月22日)された、スマートハウス(スマートグリッド)構築向けの規格である。エアコンや照明機器などの家電の制御や消費電力量の把握などをネットワーク経由で可能にするIP対応の通信規格である。さらに太陽光発電システムなどの発電機器や蓄電機器の制御、状態監視も可能となっている。
ECHONET Liteは、2011年12月に経済産業省から日本国内でのHEMS標準プロトコルとして認定され、さらに2012年2月に同省から日本国内でのスマートメーターとHEMSをつなぐ標準プロトコルとして認定された。ECHONET Lite仕様の最新版は、“The ECHONET Lite Specification Version 1.12”(2015年9月30日)となっている(注:一般公開のバージョンは、Version 1.2)。

▼注6
ディスアグリゲーション:家庭の分電盤に簡単な測定装置を設置して、流れる電流の波形を観測し、クラウド上で機械学習を使ったAI(Artificial Intelligence、人工知能)によって家電機器(例:エアコン、冷蔵庫、電子レンジ)ごとの電流波形に分離して、家電機器ごとの消費電力量やオン/オフの状態(稼働状態)などを推定する技術。
電力分野では、節電することによって使われなくなった電力(ネガワット)を集めて販売することを「アグリゲーション」(Aggregation)と呼び、そのようなプレイヤーを「アグリゲータ」と呼ぶ場合がある。これに対し、「ディスアグリゲーション」(Disaggregation)とは、「集める」ことの反対の「分離」という意味を表す言葉である。

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