[特集]

首都圏において電力供給サービスを開始した「関電エネルギーソリューション」のビジネスモデル ─ 後編 ─

2014/06/01
(日)
SmartGridニューズレター編集部

新しいビジネスモデルを求めて、新電力の動きが活発化している。2014年5月16日現在、新電力への参入企業は225社に達し、多彩な業種が名乗りをあげ、新市場におけるビジネス機会を目指してしのぎを削っている。前編は、2014 年4月1日から新電力として、首都圏でビジネスを開始した株式会社関電エネルギーソリューションのプロフィールやビジネスモデルと、そのビジネス展開を紹介した。後編では同社のユーティリティサービスの詳細や具体的な導入事例、コストの削減イメージなどを紹介する。なお、本記事は、同社の営業本部 ユーティリティ営業部長 田宮久史氏、総務部 広報グループ部長 小田敏広氏への取材をベースにまとめたものである。

1.関電エネルギーソリューション(Kenes)のユーティリティサービス

前編(本誌2014年5月号)で述べたように、関電エネルギーソリューション(以下、Kenes)が提供するユーティリティサービスは、次のとおりである。

顧客の施設運営のために必要となる電気、ガス、熱、冷水などを供給するためのユーティリティ設備を、Kenesが設計、施工して設備を保有し、運転・保守・運用管理に至るまでの全部または一部の業務を顧客に代わって、一括して実施するサービス。

ここでは、その内容を詳しく見てみよう。 図1は、左側に顧客の自己資金によるユーティリティ設備の設計から運用管理に至るまでの支出を示し、右側にKenesユーティリティサービス活用の場合を示して比較している。企業がビルを建設する場合、設計事務所やゼネコンなどに依頼し、建設資金を銀行等から借り入れて、自分の資産として運用するケースが一般的である。しかし、ユーティリティ設備の全部または一部について自前で建設・運営するのではなく、Kenesにアウトソーシングすることが可能である。 例えば自己資金の場合、初年度の「設備費・設計費」(図1左側)については、熱源設備(ボイラー、給湯機、冷凍機等)や受変電設備などエネルギーに関するユーティリティ設備に対して、Kenesが資金調達して設計・建設を行えば、顧客側ではその費用が不要となる。すなわちKenesによって、①初期投資(イニシャルコスト)が支払われるため、設備費・設計費としてのまとまった資金調達は不要となる。また、図1の②に示すエネルギーコスト(光熱水費)に関しても同社でエネルギー利用方法のチューニング(調整)をすることにより削減できる。さらに、毎年変動するメンテナンス等の費用(ランニングコスト)はKenesへ支払うユーティリティサービス料金として平準化される(③)。 顧客は、エネルギーに関するユーティリティ設備をアウトソーシングすることで、本業に集中することが可能となる。なお、このサービス期間は、顧客とKenesの協議によって設定されるが、設備等の法定耐用年数等も考慮して、原則として15年間の契約となっている。

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