[クローズアップ]

DALI照明をKNXで制御するABB社のゲスト用会議室

― 人感センサーと照度センサーで自動調光を実現 ―
2016/06/07
(火)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

国際的にスマートハウス、スマートビル、スマートシティなどの取り組みが活発化している。日本では、スマートハウス向けのエネルギー管理プロトコルとしてECHONET Liteが普及しているが、欧州を中心にスマートハウスやスマートビルにおいて、国際標準となって世界的規模で普及している「KNX」(ケー・エヌ・エックス)プロトコルが、日本でも急速に注目され始め、普及しようとしている。
ここでは、昨年(2015年)10月に新オフィスビルにKNXを導入したABB日本法人の本社オフィスにおけるKNXの導入事例を紹介する。ABBとはどのような企業で、KNXとはどのようなプロトコルなのか。本記事は、ABB日本法人のKNX導入の責任者でもある、電力制御機器事業本部 営業部部長 髙橋 宏行(たかはし ひろゆき)氏と同社電力制御機器事業本部 マーケティング部プロダクトマネージャ 増野 啓太(ましの けいた)氏への取材をベースにまとめたものである。

ABBのプロフィール

〔1〕電力とオートメーションに特化したビジネス

 スイス・チューリッヒに本社を置くABBは、ともに重電エンジニアリング企業である、

  1. スウェーデンのアセア(Asea)社(1883年創立)と
  2. スイスのブラウン・ボベリ(Brown Boveri)社(1891年創立)

の合併によって1988年に設立された、国際的な重電エンジニアリング企業である。

 同社の売上規模は、2015年12月時点で、年間約355億USドル(約4兆円)、従業員数は13万5,000人、活動拠点約100カ国という、この分野では世界的なリーダー企業である。同社のビジネスのターゲットは、他の重電ベンダのように、医療機器やファイナンスなどには手を出さず、電力とオートメーションに特化したビジネスを展開している。

写真1 ABB株式会社の新オフィスの受付カウンター(東京・品川区大崎)

写真1 ABB株式会社の新オフィスの受付カウンター(東京・品川区大崎)

出所 編集部撮影

表1 ABB株式会社のプロフィール

表1 ABB株式会社のプロフィール

出所 http://www.abb.co.jp/cawp/jpabb802/b5259ddda68607ef49256d0b0027b348.aspxなどをもとに編集部で作成

 日本のABB株式会社は、ABBジャパンとして他に3社のジョイントベンチャーを含む企業グループの1社であり、表1に示すように1960年に設立され、2015年10月より東京・品川区大崎に本社オフィスを移転した。なお、グループ全体の従業員数は約750名を数える。

〔2〕ABBの事業再編と事業内容

 ABBは、変化する市場に対応して事業の再編が行われ、2016年より、

  1. パワーグリッド事業本部
  2. 電力制御機器事業本部
  3. オートメーション・モーション事業本部
  4. プロセスオートメーション事業本部

の4事業本部体制となった。

 この再編によって、例えば「電力とオートメーション」の代表的な製品やソリューションは、図1に示すようになった。

図1 事業部門の再編成:電力とオートメーションの代表的製品、ソリューションの例

図1 事業部門の再編成:電力とオートメーションの代表的製品、ソリューションの例

(注)ナノグリッド:地域的な分散電源システムである「マイクログリッド」に比較して、より小規模な家庭規模の分散電源ステムを「ナノグリッド」と言う。
出所 「ABBについて:電力とオートメーションの世界的リーダー」、2016年5月

具体的には、

  1. 「電力」分野は、変圧器や特別高圧電力機器、変電所の自動化などの「系統」向け電力とオートメーション機器
  2. 「産業や交通・社会インフラ」分野は、低圧・高圧電力機器やEV充電システムやビルオートメーションなどの、産業、交通と社会インフラの各現場に向けた電力とオートメーション機器

などとなっている。なお、ABBは、ビジネスを国際的に展開するうえで、日本をはじめ欧米企業とのパートナーシップ戦略を強めており、例えば、日立製作所とABBの両社は、日本国内向けの高圧直流送電(HVDC)事業に関する合弁会社「日立ABB HVDCテクノロジーズ株式会社」を2015年10月に設立している(HVDC:High Voltage Direct Current)。

 また、ABB全体の事業内容の内訳を示すと、図2に示すようになっており、地域的に見ると、AMEA(アジア、中東、アフリカ)37%、南北アメリカ30%、欧州33%と地域的にバランスのとれたビジネスが展開されていることがわかる。

図2 ABBの事業内容

図2 ABBの事業内容

(注1)AMEA:アメア。Asia, Middle East and Africa、アジア、中東、アフリカ
(注2)格付け:http://www.financial-glossary.jp/%E6%A0%BC%E4%BB%98%E3%81%91
出所 「ABBについて:電力とオートメーションの世界的リーダー」、2016年5月

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