[特集:特別対談]

可決・成立した新FIT法と再エネ・新エネ戦略〔後編〕―地域に産業と雇用が生まれるビジネス構造への転換―

経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課長 松山 泰浩 vs. 東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授 江崎 浩
2016/08/03
(水)
SmartGridニューズレター編集部

2016年5月25日に可決・成立した、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(通称:FIT法)等の一部を改正する法律」により、2017年4月1日からFIT(固定価格買取制度)が変わる。
本誌では、経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課長 松山 泰浩氏と、東京大学大学院 情報理工学系研究科 江崎 浩教授に対談していただき、新FIT法改正のポイントとその詳細について伺った。
新FIT法が、再エネ事業を安定させ将来の新たな投資を呼びこむことにつながるのか、込められた真の目的について、後編の対談から見ていく。

地方自治体・地域の役割が重要

Hiroshi Esaki

〔1〕主導権をもたせた認可制度に

江崎:お話を伺っていてとてもいいなと思ったのは、自治体に拒否権をもたせましょう、という点です。

 先日、あるところで、再エネも含めたエネルギーのポートフォリオ(エネルギー構成)を考えると、たぶん都会(特に東京)と地方とではまったく違うポートフォリオになる、という話題が出ました。

松山:ええ、そうですね。

江崎:エネルギーシステムについても変わると思います。そうすると、それを国のレベルで行っても制度的にうまく進まないので、自治体レベルでローカルな判断ができるようにしないといけないだろう、と。

 そうはいっても自治体では対応できない面も多いので、そこは国が助ける、というモデルが一番いいのではないかと思います。

 特にソーラーパネル(太陽光発電)に関して言うと、「土地が安いから地方が選ばれる、そして国がOKすれば、自治体は文句も言えずパネルを設置されてしまう」という面はあります。そうではなくて、自治体にインセンティブ(奨励金)があり、主導権をもった形で認可制を動かしていくことがすごく大事だと思います。

〔2〕地域と共生して再エネ電源を長く定着させる

松山:やはり自治体は鍵になると考えています。運用面を考えると、再エネは地域密着型、つまり地域に根差すものだと思います。推進する場合でもブレーキをかける場合でも、自治体の役割は非常に大きい。ただ、地域との調整という点では、なかなか難しいところはあります。

 これまで、再エネについては国が主導して具体的な導入を行うべきという議論もありましたし、地域がすべて認定する仕組みを作るべき、という意見もありました。国が行う場合、地域の実情(詳細)までは把握しきれず、判断がつかないのが現実であり、基本は条例レベルの話になるのです。

 一方で地域個別の認可制にすると、これらの導入プロセスを自治体がすべて処理するのは現実的にはなかなか難しい面があります。問題が生じるたびに認定を止めていくと、再エネ導入拡大の道は非常に険しくなると思うのです。

 そこで、前編で述べた情報公開の話注1につながるわけです。

 認定申請の情報を国は自治体と全部共有する。もし問題があったら自治体が調整に入る。自治体はそのための条例を作る。つまり、認定すべき案件かどうかを含めて自治体にご意見をいただくことになるのです。今回のFITの改正では、そのようなメカニズムを内在させました。

 認定情報データベースを公開して、各担当省庁およびその地方支部・部局、もしくはこれを受けている都道府県と共有する。私たちがプッシュ型で各種の情報を提供することによって、自治体の方々が問題ないかどうかをチェックして、条例違反などによって(認定や運用を)止めるべきと判断したら、そういうご連絡をいただく、という仕組みにしていきたいと思っています。これは、健全に地域と共生する形で、再エネ電源を長く定着させていくことが目的なのです。

江崎:地域が自立していくことは重要だと思います。例えば、地域で消費する電力以外のガスや水、熱をどう事業者や他の地域に売っていくかを、各地方自治体は知恵を絞ったほうがいいと思いますね。


▼ 注1
『インプレスSmartGridニューズレター』2016年7月号、「特集:特別対談 ―前編―」12ページ参照。

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