[[創刊4周年記念:特集1]ー 電力自由化後の新展開 ー VPP、マイクログリッドに取り組む次世代電力事業と小売電気ビジネスの行方[前編]]

VPPでエネルギーの地産地消を実現する自治体新電力「ローカルエナジー」(鳥取県米子市)

2016/11/09
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

地域内電源でほとんどの電力を賄い、エネルギーの地産地消を実現しているユニークな地域電力がある。2015年12月に設立されたばかりの鳥取県米子市の新電力、ローカルエナジー株式会社である。出資は米子市と地元企業5社で、米子の地域特性を生かし、5年後には同社の電力事業だけで16億円の地域内の資金循環効果が期待されている。Part2では、実現の背景とそのビジネスモデルをレポートする。

エネルギーの自立を目指した地域エネルギー会社「ローカルエナジー」

〔1〕鳥取県米子市のプロフィール

 米子市(よなごし)は、鳥取県の西側、山陰のほぼ中央に位置する、約132平方キロメートルの面積に約15万人が生活するコンパクトシティである(表1)。

表1 米子市のプロフィール(2016年10月現在)

表1 米子市のプロフィール(2016年10月現在)

出所 http://www.city.yonago.lg.jp/をもとに編集部作成

美保(みほ)湾に面した弓ヶ浜半島の東端に、山陰有数の皆生(かいけ)温泉をもち、南部は大山(だいせん)の裾野として丘陵地になっている(図1)。

図1 鳥取県米子市の所在地

図1 鳥取県米子市の所在地

〔2〕ローカルエナジーのプロフィール

 2015年12月21日、ローカルエナジー株式会社は小売電気事業者として設立された(表2、写真1)。地域外のエネルギーに依存するのではなく、地域内で自立したエネルギー環境を目指すことで地域経済の自立を目指すという理念のもと、米子市と地元企業5社の出資によって設立された。「エネルギーの地産地消による新たな経済基盤の創出」を目指した地域エネルギー会社なのである。

写真1 ローカルエナジーの所在するビルと社内の様子

写真1 ローカルエナジーの所在するビルと社内の様子

出所 編集部撮影

 主な出資者は、株式会社中海テレビ放送(50%、CATV事業者)、山陰酸素工業株式会社(20%、ガス卸業)、米子市(10%、自治体)、三光株式会社(10%、廃棄物処理)、米子瓦斯株式会社(5%、都市ガス)、皆生温泉観光株式会社(5%、源泉供給)で、表2に示す、

  1. 電力小売卸売事業
  2. 地域熱供給事業
  3. 電源熱源開発事業
  4. 省エネルギー改修事業
  5. 次世代エネルギー実証事業
  6. 視察受入/コンサルティング

の6つの事業領域を主軸に展開している。現在の収益源の主な事業は、電力小売卸売事業で、2016年度の計画では4億円の売上げを目標としている。

表2 ローカルエナジー株式会社のプロフィール

表2 ローカルエナジー株式会社のプロフィール

出所 http://www.lenec.co.jp/をもとに編集部作成

〔3〕官民一体で地域特性を生かしたエネルギー事業の検討から具体化

 米子市では、平成23(2011)年度から、スマートコミュニティ、スマートグリットなどを官民一体で検討を始め、平成27(2015)年度までに総務省、内閣府などの事業を活用して、その事業の可能性調査を行ってきた。

 具体的には、

  1. 平成25(2013)年6月28日に国が認定した「鳥取発次世代社会モデル創造特区」、
  2. 平成23(2011)年度の総務省「緑の分権改革」調査事業、
  3. 平成24(2012)年度の総務省「ICT街づくり推進事業」(後述)、
  4. 平成25(2013)年、平成26(2014)年の総務省「分散型エネルギーインフラプロジェクト」

などである。

 「その結果、意欲とリスクをとる覚悟がある地域企業の皆様と官民一体でエネルギー会社を立ち上げることが決まり、米子市も10%出資したのです。市内210箇所への公共施設への電力供給は、エネルギーの地産地消、地域内資金循環を具現化するために行うこととしました」と鵜篭 博紀(うかご ひろき)氏(米子市 経済部 経済戦略課 産業開拓室 室長)は言う。

 2016年4月1日の電力小売全面自由化を契機に、地域内にエネルギー供給事業者が存在することで、エネルギーの地産地消が促され、これまでエネルギーを地域外から購入することによる地域外への資金流出を抑制し、地域内での資金循環が可能となった。このことが地域経済の基盤となり、地域経済自立のインフラを強化することにつながることを見据えて、ローカルエナジーの設立に至ったのである。

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