[スペシャルインタビュー]

動き出した日本の電力システム改革

≪前編≫ ─ エネルギー産業の再編と新ビジネスモデルの展開 ─
2014/11/01
(土)
SmartGridニューズレター編集部

電力会社9社(沖縄電力を除く)によってスタートした電力の地域独占体制(1951年5月開始)は、新たな段階に入ろうとしている。新しい電力システム改革のもとに、2015年4月から第1弾として「広域的運営推進機関」がスタート。これを皮切りに、2016年には第2弾の「電力小売の全面自由化」、2018年には第3弾の「送配電分離」と、3段階のロードマップで改革が推進される。
これは、かつて通信の自由化を背景に、インターネットサービスプロバイダ(ISP)が次々に登場し、新しいビジネスモデルを誕生させた時代を彷彿とさせる。まさにエネルギーと情報通信(ICT)を融合したスマートグリッドは、電力業界とガス業界の再編をも加速させ、海外企業の参入も含めて本格的な競争時代に突入する。
そこでこのたび、政府の電力システム改革専門委員会の委員を務められた、富士通総研 経済研究所 主任研究員の高橋 洋氏に、日本の電力システム改革の内容と特徴を整理していただくとともに、そこから起こる新しいビジネスチャンスなど、パラダイムシフトする電力業界の最新動向についてお聞きした。

今なぜ電力システム改革なのか

─編集部:なぜ今、電力システム改革なのでしょうか。

高橋:日本の電力システム改革は、欧米に比べると10年から20年くらい遅れているといえるかと思います。実は、日本においても1995年頃から電力自由化(制度改革)という名前で改革は始まっていました。その頃であれば、欧米からの遅れは5年程度でしたので、非常に遅れているという感じではありませんでした。

 しかし、2003年のいわゆる第3次自由化(第3次制度改革)において、はっきりとその動きは止まってしまい、これで日本の電力自由化は終了したかのようになりました(表参照[編集部注])。端的にいうと、これ以上の自由化はしないと、電力の安定供給のためにはむしろ部分自由化のままが良いというのが、当時の評価でした。電力会社はもちろん、政府も経済界も研究者も、自由化についてそれ以上進めようという流れは止まったということです。

[編集部注]日本における電気事業法の改正(電気事業制度改革)と電力自由化の主な流れをまとめると以下のように整理できる。

[編集部注]日本における電気事業法の改正(電気事業制度改革)と電力自由化の主な流れをまとめると以下のように整理できる。

〔出所 勝又 淳旺、「スマートグリッドの実像に迫る! 第5回」、『SmartGridニューズレター』2013年6月号〕

 ですから、もしかしたら2011年3月11日の東日本大震災が起こっていなければ、現在の電力システム改革の動きはなかったかもしれないのです。

 しかし、不幸にもあれだけの大震災が起きてしまった。震災の影響で福島第1原子力発電所だけでなく、太平洋岸の複数の大型火力発電所も止まり、東京電力管内の供給力が絶対的に不足したため、関東に十分な電気を送ることができなくなり、計画停電や電気の使用制限の措置が取られました。このような問題の表面化が、電力(エネルギー)の安定供給への危機につながってきたのです。

 そこで、「単なる電力の自由化ではなくシステムを改革するんだ」という認識が日本でも高まってきたということが、背景としてあるのではないかと思っています(図1)。

図1 どうして今、電力システム改革なのか?

図1 どうして今、電力システム改革なのか?

〔出所 富士通総研 高橋 洋、「電力システム改革によるビジネスチャンス」、2014年6月〕

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