[連載]

欧州の風力発電最前線

─ 第1回 なぜ欧州で風力発電が成功しているのか ─
2014/11/01
(土)
辻 隆男

太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入は、世界的に進んできている。日本においても、3.11の東日本大震災以降、再生可能エネルギーの導入に関しては、国も積極的に取り組んできている。
この連載では、特に昨今その導入が拡大している欧州において、特に風力発電に注目しながら、各国の風力発電を取り巻く環境の違いを整理しながら、導入の成功例、あるいは抱えている問題点について、国ごとに解説していく。
第1回では、欧州と日本の違いを取り上げながら、風力発電と電力システムの関係、および技術的な課題などを概観していく。

普及拡大する欧州における風力発電

〔1〕太陽光で懸念された課題が現実に

持続可能なエネルギー社会の構築に向けて、再生可能エネルギーは非常に有望な発電方式として、国際的に期待が高まっている。

日本における再生可能エネルギーの導入は太陽光発電が計画の中心となり、2030年時点で53GW(ギガワット)という高い導入目標量が掲げられてきた。政府が2012年7月にスタートさせた固定価格買取制度(FIT:Feed-in Tariff)という大きな推進力のもとに、日本の太陽光発電の導入は予想を大きく上回るペースで拡大してきた。

しかし、最近になって電力各社による買取を中断することが相次いで発表されている。その主たる理由は、「電力の安定供給に支障がある」ためとされている。再生可能エネルギーを既存の電力ネットワークに接続して使用する場合、太陽光発電や風力発電(写真1)が、天候に左右される不安定な出力であるため、これらが電力系統の安定運用に及ぼす影響については、当初から多くの懸念の声があった。しかしその後、導入ペースに拍車がかかったこともあり、この懸念が一気に顕在化した形である。

写真1 欧州に続いて日本でも注目されている洋上風力発電(イメージ)

写真1 欧州に続いて日本でも注目されている洋上風力発電(イメージ)

〔出所NEDO http://www.nedo.go.jp/fuusha/haikei.html

〔2〕日本における太陽光と風力の違い

 この再生可能エネルギーと“電力系統との共存”の問題は、風力発電についても同様に懸念されるべき問題である。本連載の主要テーマは“欧州における風力発電”であるが、同地域では後述する通り、風力発電の導入が非常に大きく進展している。

(1)風力の稼働率は30%

 一方、日本では前述した通り、普及拡大が先行する太陽光発電において、早くも大きな壁に突き当たっている感がある。この両者の差異はどこにあるのだろうか。

 最初に、国内外における風力エネルギーの現状を確認してみよう。

 環境省によると日本の風力エネルギーは非常に豊富であり、風力発電の導入見込み量として、2030年時点で最大で70GW程度が導入されるシナリオが検討されている。

 昼間しか発電しない太陽光発電は年間の稼働率が10%程度と言われているが、風力発電は風況さえよければ昼夜を問わず発電が可能であるため、30%程度の稼働率が期待でき、より経済的であるというのが一般的な認識である。

(2)国としての導入目標が不明確

 さらに、風車は多くの部品から構成されるため、その導入進展は産業を多角的に活性化させる側面も大きい。しかし太陽光発電に比較すると、風力発電は固定買取価格制度の対象となった以降、導入拡大は進展しつつあるものの、国としての具体的な導入目標が設定されないため、現実の導入量も2,715MW(2014年3月末:日本風力発電協会)に留まっているのが現状である。

〔3〕海外では風力発電導が拡大・進展

図1 EUで2013年に設置された再生可能エネルギー電力容量のシェア(単位:MW)

図1 EUで2013年に設置された再生可能エネルギー電力容量のシェア(単位:MW)

〔出所 EWEA「Wind in power 2013 European statistics」2014年2月 http://www.ewea.org/fileadmin/files/library/publications/statistics/EWEA_Annual_Statistics_2013.pdf

 一方、この日本の現状と比較して、海外では風力発電の導入がより拡大され、進展している。とくに欧州では、比較的安定した偏西風の恩恵も受けながら、風力発電の普及拡大がダイナミックに進展している。

 欧州では以前から、「20-20-20計画」注1として、「2020年までの温室効果ガス排出量削減20%、再生可能エネルギーの発電量を20%増加、エネルギー効率の20%増加」を目指してきた。この中で再生可能エネルギーとしての中核に風力発電は位置してきたことになるが、その導入量は劇的かつ予想を大きく上回るペースで増加してきた(図1)。

 2000年時点では、風力発電と太陽光発電の合計容量は系統全体の容量に対してわずか2%であったが、2013年度時点では、風力発電13%および太陽光発電9%と、およそ5倍に成長した。2000年頃は、デンマーク、ドイツ、スペインの3カ国によって、年間3GWの風力発電が導入されていた。その後もこの3カ国に牽引される形で年間導入量は増加し、2013年には11GWにまで拡大している。依然として、年間導入量の3割程度は上記3カ国で占められている。

 なお、この間に天然ガスや石炭火力の容量も大きく増加しているが、再生可能エネルギーの導入拡大の影響によって、そのシェアは天然ガス22%、石炭火力19%程度となっている。

〔4〕FITからFIPへ

このような風力発電の導入拡大を支えたものとして、前述したFIT(固定価格買取制度)制度の存在がある。未成熟な産業の発展を促すために、再生可能エネルギーによる発電出力を固定高値で一定期間買い取ることを補償した制度である。再生可能エネルギーの導入拡大に合わせて徐々に買取価格は減少していき、近年では通常の電気料金並みにまで低下している国が複数見られ、ドイツ、スペイン、イタリアのようにFITを廃止する国もある。

また、風力発電の開発が未成熟な期間を脱しつつあるとして、徐々にフィード・イン・プレミアム(FIP:Feed-in Premium)制度への移行が勧告されつつある。

同制度は電力市場価格における取引価格にプレミアム(割増料金)を上乗せしたものを買取価格とする制度であり、FITと同様に風力発電導入のインセンティブ(誘因)として機能するものの、市場価格変動のリスクを同時に受ける必要がある。

このように優遇策の緩和が徐々に低減していることは、世界的に風力発電の発電単価が低減して、他の在来電源と比較しても強い競争力をもつようになってきたことからもわかる注2

 これは、FITおよびFIPによる政策が着実に進行してきたことの証であろう。ただし上記のような優遇策は、前述の通り未成熟な産業に対する急速な発展を促すことが目標であるため、急激な投資増加により再生可能エネルギー導入の年度展開の構想が大きく崩れる可能性がある点にも注意されたい。

 意図する電源構成比率からの乖離が生じれば、経済効果が損なわれる場合もある。欧州における風力発電の普及拡大も数字上は大きな進展が確認できるものの、その効果はより慎重に評価されなければならない。

〔5〕欧州各国における風力発電の導入量

表1に、欧州各国における風力発電の導入量を整理したものを示す。同表の通り、風力発電導入容量の観点からは、ドイツ(1位)、スペイン(2位)、英国(3位)が大きく、イタリア、フランスと続いている。一方、風力発電を受け入れる立場からは、電力系統の容量に対する風力発電の比率が重要な指標となる。

表1 EU加盟国の主要な風力発電導入国

表1 EU加盟国の主要な風力発電導入国

*導入率の定義は、年間の総電力需要量に対する風力発電の発電量の割合。
〔出所 導入量:EWEA annual statistics 2013、年間発電量:WIND ENERGY BAROMETER 2013、消費電力量:ENTSO-E webページ、Data portal〕

この風力発電シェアに関しては、デンマーク(1位)、ポルトガル(2位)、アイルランド(3位)が上位の3国となり、ここにスペインやドイツが続く。後述するように、風力発電の大量導入時の大きな課題は、その出力変動の不確実性にある。したがって、各国の系統(電力システム)ごとに需給バランスを維持することを運用の基本指針と考えるならば、風力発電のシェアが大きな国では、系統運用者の担うべき負担はより一層大きなものとなる。

それでは、前述のように高い導入率を達成している国では、どのようにしてこの技術的な課題を克服しているのだろうか。


▼ 注1
EU(欧州連合)で2009年4月に採択された「気候変動とエネルギーに関する包括的施策」(The EU climate and energy package)の2020年までの目標値。

▼ 注2
例えば、国際再生可能エネルギー機関(IRENA:Inter-national Renewable Energy Agency)の“RENEWABLE ENERGY TECH- NOLOGIES: COST ANALYSIS SERIES, Wind Power, Vol1. Issue 5, 2012”においては、風力発電の発電単価が6〜14円/kWh程度に低減してきたことが述べられている(1ドル=100円換算)。

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