[スペシャルインタビュー]

KDDIのNGN/FMBC戦略を聞く(3):FMBCが描く放送と通信の融合のサービス像

2008/02/25
(月)
SmartGridニューズレター編集部

KDDIは、2007年12月に2.5GHz帯のモバイルWiMAXの免許を同社が出資する新会社で取得、また電力会社との連携を強め光回線の確保に力を入れるなど、積極的な動きが注目されています。国内外でNGNの動きが本格化しはじめた2008年、KDDIは固定電話(F:Fixed)のネットワークとケータイ(M:Mobile)のネットワーク、そして放送(B:Broadcast)を一体化してサービス提供する独自のFMBC戦略を背景に、具体的なNGNサービスを進めようとしています。そこで、KDDI 執行役員 コア技術統括本部長 安田 豊(やすだゆたか)氏に、「モバイルWiMAXのサービス像」や、「ワンセグやMediaFLOなどの放送系サービス」、「IP overデジタル放送」などの新しい取り組みの現状を交え、KDDIはNGN/FMBCで何を実現しようとしているのか、その具体的な展望をうかがいました。
今回〈第3回〉は、
〈第1回〉:KDDIはNGN/FMBCで何をめざしているのか
=固定通信と移動通信、そして放送が結びついたサービスの実現へ=

第2回:モバイルWiMAXで実現するFMC
=端末を選ばないオープンなプラットフォーム=

に続いて、固定電話とモバイルの融合するFMCの実現の可能性や、モバイル向け放送サービスのMediFLO、そしてIP overデジタル放送などについてお話いただきました(文中敬称略)。

≪1≫日本でFMCは実現するか

■FMCに向けた取り組みは、世界的に見て日本は遅れているといわれています。移動通信と固定通信を両方持っているKDDIにとしては、国内でFMCをもっとも実現しやすい環境にありますが、FMCへの取り組みの現状はいかがでしょうか。また、FMBCは現在、どのステージまで来ているのでしょうか。

安田 豊氏(KDDI 執行役員 コア技術統括本部長)
安田 豊氏
(KDDI 執行役員 コア技術統括本部長)

安田 前にも申し上げましたように、KDDIは、ネットワーク・インフラをIPで統合し、固定通信のサービスも移動通信のサービスも、FMCとして、同じバックボーン・ネットワークで利用できるようにするための準備を進めています。それはユーザーからは直接見えない取り組みなので、ユーザーからは具体的なサービスを、実感としては感じられない状況です。

当社は、図1のように、FMCというサービスよりもFMBCという放送まで融合したサービスの提供を目指しています。そこで、FMBC全体で目指すところからすると、現在はまだ10%か20%ぐらいの到達点です。具体的なFMBCサービスとしては、PC-携帯連携のLISMOサービスおよび放送通信連携のFMケータイ/ワンセグのようなサービスです。それをもっと現実的に魅力があるサービスと思われるようにしていく必要があります。

現在提供しているサービスは、固定通信と移動通信と両方利用すると料金的なメリットを出すau携帯とメタルプラス電話・インターネットのセット割引サービスなどに限られていることもあります。本当の意味で融合したサービスはこれからとなります。2008年には、具体的にFMBCを実感できる新しいサービスを順次増やしていきます。


図1 FMCからFMBC KDDIの取り組み(安田氏資料より)(クリックで拡大)

■KDDIは、FMBCという構想で、FMCからさらに一歩進んで放送との融合までサービスしようとしています。

安田 海外の通信事業者が提供するサービスに目を向けると、欧米では移動通信よりも固定通信のほうが収益性がよい状況も出てきています。その理由は、固定通信サービスのほうが、高画質なテレビやVoD(Video On Demand)などの映像系のサービスが充実しており、ヘビーユーザーをしっかりと取り込んでいるケースがあるからです。

日本ではまだ実現していませんが、欧州では放送した後に、見逃した番組をVoDでみるというサービスが通信回線で提供されており、ニーズも高いものがあります。こうしたサービスであれば、ユーザーは見たい番組はお金を払ってでも見ます。あるいは、放送される前の番組を見たい人もいますが、これは場合によってはサービスのプロモーションにもなるでしょう。一定の条件が整えば、前もって番組を見ることができるサービスという形ですが、これはVODで提供されるのです。

通信回線を使う一番のメリットは、個人個人のニーズに応えられることです。ユーザーがお金を払ってもいいと思えるサービスを充実させることができれば、日本でも固定系のブロードバンドでユーザーを増やすことができると思います。

ページ

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...