[特別レポート]

太陽光発電の大量導入の影響を解決し、ビルの独立運転も実現へ

─米ニューメキシコ州実証の内容とその成果 ─
2015/01/01
(木)

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、2009年度から海外実証事業の第1号として、米国ニューメキシコ州のロスアラモス郡(一般住宅)とアルバカーキ市(商用ビル)の2カ所で日米共同プロジェクト「スマートグリッド実証事業」を4年余にわたって展開し、2014年3月に終了した(デマンドレスポンス実証は1年延長し、2015年3月まで)。
この実証事業は、出力が不安定な再生可能エネルギー(太陽光発電)による電力が、配電系統へ大量に導入された場合に与える影響についての解決手段などを実証する事業であった。まさに日本のほか、各国が直面している大きな課題でもある。
ここでは、NEDO新エネルギー環境本部 スマートコミュニティ部 統括研究員 諸住 哲(もろずみ さとし)氏への取材を元に、実証事業の内容とそこから得られた成果について、紹介する。

ロスアラモス郡(住宅地域)とアルバカーキ市(商用ビル)の実証

 ニューメキシコ実証プロジェクトは、基本的には、日本のスマートグリッド(マイクログリッド)技術を海外で広めることが目的の1つでもあった。このとき、米国ニューメキシコ州政府側では、次世代の電力システム整備に向けた研究開発プロジェクト「グリーン・グリッド・イニシアティブ」(New Mexico Green Grid Initiative)計画があり、スマートグリット関連のさまざまな実証を行いたいという希望をもっていた。

 最終的には同研究開発プロジェクトの実証サイトとして、ニューメキシコ州のロスアラモス郡とアルバカーキ市の2カ所が選定された。

〔1〕ロスアラモス郡:配電系マイクログリッドの実証

 同プロジェクトのロスアラモス郡は、マンハッタン計画で有名なロスアラモス国立研究所が存在する2万人規模の小さな自治体であるが、この自治体は小さな電力会社を所有している。米国の郡部では、1940年代から50年代にかけて(第2次世界大戦以降)電化されたところが多い。ロスアラモス郡の場合も戦時中に、核兵器開発のための秘密研究地域としてスタートした頃に電化された地域である。

 米国では、このような小さな自治体や組合が経営する電力会社が、米国の全電力会社約3,000社のうち、2,000社程度あると言われている。このような小規模な電力会社は発電所をもたず、需要家に安定した電力を提供するために、卸売市場から電気を買う必要性がある。

 このような事情から、小規模な電力会社には、マイクログリッド注1技術を使うことによって、卸売電力市場に対して、有利な立場をとれるような状況をつくりたいというニーズがあった。

 このような背景から日本のマイクログリッド技術に注目し、実証を受け入れたのである(図1)。

図1 ニューメキシコ実証の実施体制

図1 ニューメキシコ実証の実施体制

〔出所 NEDO〕

〔2〕アルバカーキ市:商用スマートビル(BEMS)の実証

 一方のアルバカーキ市は、人口75万人規模のニューメキシコ州最大の都市である。同市には「メサ・デル・ソル」(Mesa del Sol)という新開発地域があり、そこに同名の不動産会社注2がある。同社が以前から商用ビルなどの不動産をスマート化し、それによって不動産価値を高めることを志向しており、それを実現したいというニーズがあった。このことと日本側の「技術を広めたい」というニーズが合致してスタートした。

〔3〕ロスアラモス郡とアルバカーキ市

 2つの実証のうち、ロスアラモス郡は、配電系統のスマート化とスマートハウス(HEMS)の実証、さらにスマートメーターの導入に伴うデマンドレスポンス(電力の需要管理)の実証が行われた。

 一方、アルバカーキ市は、スマートビル(BEMS)を対象にした実証が行われた。さまざまな分散電源を導入し、場合によっては、ビルが自立し単独で電力を供給できるスマートグリッド的な商用ビルの実証が行われた。

 ロスアラモス郡では2012年の9月から、アルバカーキ市では2012年5月から、いずれも2014年3月末まで実証運転が行われた注3


▼ 注1
マイクログリッド:Microgrid。太陽光発電や風力発電などの分散電源(再生可能エネルギー)を用いて、電力の地域的な自給自足を可能とする小規模な電力供給網のこと。

▼ 注2
親会社はフォレスト・シティという大きな不動産会社。

▼ 注3
ロスアラモス郡でのデマンドレスポンス実証は2015年3月までの1年間延長された。

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