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高温高圧の二酸化炭素でタービンを回して発電、2017年の運転開始を目指して東芝など4社が開発中

2016/11/01
(火)
SmartGridニューズレター編集部

東芝は、アメリカ・テキサス州に建設中の発電所に向けて出力25MWのタービンを出荷した。

東芝は2016年11月1日、アメリカ・テキサス州に建設中の発電所に向けて出力25MWのタービンを出荷した。このタービンは世界で初の試みとなる「直接燃焼方式による超臨界CO2サイクル火力発電システム」の試験用施設に使用するものだ。

図 今回出荷したタービン

図 今回出荷したタービン

出所 東芝

直接燃焼方式による超臨界CO2サイクル火力発電システムとは、簡単に言うと高温高圧の超臨界状態となったCO2でタービンを回して発電するシステムだ。東芝によると、外部から間接的にCO2を加熱してタービンを回す方式の研究はいくつか例があるが、燃料を燃焼させて発生したCO2を直接送り込んでタービンを回す今回の方式は世界初のものだという。

この方式の特徴は2つ、1つ目は、単一のタービンだけで、ガスコンバインドサイクル発電システムと同等の発電効率を発揮すること。ガスコンバインドサイクルでは、ガスを燃焼させた排気でタービンを回し、排気の熱を使って水蒸気を作り、この水蒸気でもタービンを回す。合計で2つのタービンを回して発電しているのだが、今回の方式では1つのタービンだけで同等の発電効率を得られるので、施設をコンパクトにできる。またタービン自体も、同程度の発電能力を持つガスタービンと比べて小さく作れる。

もう一つの特徴は、発電施設のほかにCO2を分離、回収する設備を設置する必要がないこと。ガスタービンを回した後のCO2は、高純度、高圧の状態でそのまますべて回収できる。実際にはガスタービンを回した後のCO2は、高温高圧のCO2を作る燃焼器に戻るので、発電施設の中でCO2が循環していることになる。

タービンを回す高温高圧のCO2は、燃焼器で天然ガスなどの燃料を燃焼させて作る。このとき、大気で燃焼させず、純粋な酸素で燃焼させることで、大気を汚染する窒素酸化物を発生させないというところも特徴と言える。

図 直接燃焼方式による超臨界CO2サイクル火力発電システムの構成、黄色い線と赤い線を通ってCO2が循環する

図 直接燃焼方式による超臨界CO<sub>2</sub>サイクル火力発電システムの構成、黄色い線と赤い線を通ってCO<sub>2</sub>が循環する

出所 東芝

燃焼機から出てきたCO2は、高温高圧の超臨界状態になっている。その温度は1150℃で、圧力は30MPa。一般的なガスタービンでは、同程度の温度で、圧力が2MPaほどのガスでタービンを回す。今回の方式では、ガスタービンと同程度の高温で圧力を大きく高めた超臨界状態のCO2でタービンを回すことで発電効率を大きく高めている。しかし、高温高圧に耐えるタービンを作ることは課題の1つでもあった。

現在建設している発電所は、アメリカのNET Power社、Chicago Bridge & Iron社、Exelon社と共同開発しているものだが、東芝は発電システムの中でも重要な、燃焼器とCO2サイクル用タービンを担当している。今後は2017年に検証運転を開始して、稼働データを収集、分析しながら技術を確立し、250MW級の発電所の商用運転を目指すとしている。


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東芝

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