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関西大学と帝人が圧力を検知する「ひも」を開発、結び方で指向性を持たせることも

2017/01/13
(金)
SmartGridニューズレター編集部

関西大学システム理工学部の田實佳郎教授と帝人は、圧力を加えると電気エネルギーを発する「圧電組紐」を開発したと発表した。

関西大学システム理工学部の田實佳郎教授と帝人は2017年1月12日、圧力を加えると電気エネルギーを発する「圧電組紐」を開発したと発表した。世界初の快挙だという。ウェアラブルセンサーに応用できる可能性を秘めたものだ。

図 圧電組紐のサンプル。左が「かごめ十五角結び」にしたコースターで、右が「梅結び」にしたキーホルダー

図 圧電組紐のサンプル。左が「かごめ十五角結び」にしたコースターで、右が「梅結び」にしたキーホルダー

出所 帝人

圧電組紐は圧力をかけると電気エネルギーを発し、電気エネルギーを加えると伸縮する特性を有する「圧電体」の一種。圧電体はスイッチなどのセンサーやインクジェットプリンターのインク圧出機構、スピーカーなどのアクチュエーター(駆動体)などと言った形で実用のものとなっている。圧電組紐は圧電体としての性質を有する「ポリ乳酸」の繊維を編み込んだもので、直径は0.3~0.4mmほど。

関西大学と帝人は2015年にポリ乳酸繊維を使った「圧電ファブリック」というウェアラブルセンサーを開発したが、布全面で圧力を検知するという用途があまりなかったという。心拍、脈拍を検知するにしても、布全面で検知する必要がなかったともいう。そこで今回、ポリ乳酸繊維を編み込んだ圧電組紐を開発した。

圧電組紐は1本の紐で「伸び縮み」「曲げ伸ばし」「ねじり」といった動きを検知できる。圧力を検知する感度は高く、ノイズは低く抑えているという。そして、はんだ付けすることなく、小型コネクタで機器と接続できるようにもなっている。関西大学と帝人は圧電組紐が一般産業用センサーとして、多様な用途で活用できると期待している。

そして圧電組紐の最大の特徴は、結び方によって圧力検知の指向性を持たせることができるという点だ。例えば「吉祥結び」にしたチョーカーを首に巻くと、首から外方向への圧力に対して鋭敏になり、ねじりや振動に対しては鈍くなるので脈拍だけを高い精度で検知できる。結び方による指向性の違いは、数学の「組み紐理論」で説明できるという。

図 圧電組紐で作ったチョーカー。上が「亀結び」で、下が「吉祥結び」

図 圧電組紐で作ったチョーカー。上が「亀結び」で、下が「吉祥結び」

出所 帝人

圧電組紐で作ったチョーカーのデモ、脈拍を検知して、無線LANでスマートフォンに信号を送信している

出所 帝人

一般的な脈拍センサーは、脈拍だけでなく、ほかの振動も拾ってしまうので、専用チップで信号処理をして脈拍の波形だけを抽出する必要がある。一方、圧電組紐で結び方を工夫すれば、信号処理も必要なくなるという。また、脈拍センサーは肌に密着させる必要があるが、圧電組紐で作ったセンサーなら、肌に軽く触れさせるだけでも十分脈拍を検知できる。紐の形で活用するだけでなく、布に織り込んで活用することも考えられるという。

関西大学と帝人は、圧電組紐の研究をさらに進め、1~2年後の商品化を目指すとしている。


■リンク
関西大学
帝人

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