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「石炭から取り出した水素で燃料電池を駆動」、NEDOが第1段階となる実証試験を開始

2017/04/03
(月)
SmartGridニューズレター編集部

NEDOは、石炭から可燃性のガスを取り出して発電する実証試験を開始したことを発表した。

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2017年3月30日、石炭から可燃性のガスを取り出して発電する実証試験を開始したことを発表した。NEDOの助成を受けた大崎クールジェンが実施するもので、中国電力大崎発電所の敷地内に設置した試験設備で実施する。

図 中国電力大崎発電所の敷地内に設置した試験設備

図 中国電力大崎発電所の敷地内に設置した試験設備

出所 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

石炭から可燃性のガスを取り出して発電する方法は「石炭ガス化複合発電(Integrated coal Gasification Combined Cycle:IGCC)」と呼ぶもの。「ガス化炉」に微粉末にした石炭を投入し、酸素を送り込みながら蒸し焼きにすることで水素(H2)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)といった可燃性のガスを取り出す。石炭を蒸し焼きにする過程で、酸素に加えて蒸気も送り込む方法もあるが、今回は酸素だけを加える。酸素だけを加える方式を「酸素吹石炭ガス化複合発電」と呼ぶ。

図 実証試験で使用する試験設備の概要

図 実証試験で使用する試験設備の概要

出所 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

取り出したガスはガスタービンに送り込み、高温で燃焼させながらタービンを回して発電する。さらに、タービンの排気の熱を利用して水蒸気を作り、この水蒸気で別のタービンを回して、ここでも発電する。石炭を直接燃焼させる方式よりも、CO2や窒素酸化物の排出量を抑えられるという利点がある。

実証試験の期間は2017年3月28日から2019年2月28日の2年間。性能、運用の難易度、信頼性、経済性などについて検証する。1300℃級のガスタービンを駆動して、蒸気タービンの電力と合わせて送電端効率40.5%を達成することを目標とする。NEDOはこの目標を達成することで、1500℃級ガスタービンを使用したIGCCで、送電端効率46%を達成するめどが立つとしている。また、5000時間以上の長時間耐久試験を実施し、年間70%以上の利用率を達成することも目指す。この利用率は商用機と同等のレベルだ。

図 3段階に分かれる実証試験のそれぞれの実施計画

図 3段階に分かれる実証試験のそれぞれの実施計画

出所 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

そして、この実証試験はあくまで第1段階に過ぎない。第2段階では、試験設備にCO2を分離回収する設備を設置し、その効果を確かめる。2019年度中の実証試験開始を予定している。

第3段階では、第1段階で使用した試験設備に燃料電池を組み合わせる。ガス化炉で石炭を蒸し焼きにして取り出す可燃性ガスのうち、水素(H2)を分離回収して、燃料電池を稼働させるという計画だ。2020年度中に実証試験を開始する予定。


■リンク
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
大崎クールジェン

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