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2025年までにコンビニの全商品をRFIDタグで管理、経産省がコンビニ運営5社と合意

2017/04/19
(水)
SmartGridニューズレター編集部

経済産業省は、2025年までにコンビニエンスストアの全取扱商品に電子タグを取り付けて活用することについて、コンビニエンスストア事業者5社と合意したと発表した。

経済産業省は2017年4月18日、2025年までにコンビニエンスストアの全取扱商品に電子タグ(RFID)を取り付けて活用することについて、条件付きでコンビニエンスストア事業者5社と合意したと発表した。合意に参加したのはセブン‐イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、JR東日本リテールネット(JR東日本駅施設内の「ニューデイズ」を運営)の5社。

今回の合意の背景には、少子高齢化による人手不足と人件費上昇という、コンビニエンスストア事業者が直面している問題がある。整備が行き届いた物流網で、大量生産の製品が高い頻度で各店舗にやってくるが、それに対応しきれるだけの人員がいない、いても慣れていないために処理に時間がかかるという場面を店舗で目にした人は多いだろう。また、賞味期限が切れた食品や返品となった商品の処理といった問題もある。このような問題は現場で働く店員に重い負担をかけることにつながり、結果として店舗運営コストが増大するということになりかねない。

そこで注目を集めているのがRFIDタグだ。実際、全商品にRFIDタグを取り付けてコンビニエンスストア店舗で活用する実証実験などは始まっている。コンビニエンスストアの商品管理にRFIDを利用することで得られる利点は2点。

1点目は個々の商品を容易に管理できるようになるという点。例えば、同じ牛乳でもそれぞれ製造時刻が異なるということはよくある。現在は、消費期限が切れた商品は処分しなければならないが、RFIDのデータと価格表示板を連携させることで、消費期限が近い商品の値段を自動的に下げるといったことが可能になる。1つ1つの商品の情報をそのRFIDタグとひもづけることで、商品の生産から物流、販売、消費までのサプライチェーン全体で何が起こっているのかを把握することも可能になる。

もう1点は、店舗運営の省力化。RFIDリーダーはRFIDタグに電波を発信して、返ってくる信号を読み取ることで、情報を得る。その際は、バーコードを読み取るように、商品1つ1つのRFIDを読む必要はない。複数のRFIDタグの情報を一括で取得できる。この仕組を利用して、例えば商品陳列棚にRFIDリーダーの機能を仕込んでおいて、棚卸しの際にはリーダーを稼働させて陳列棚に並んでいる商品すべてのデータを一瞬で取得するといったことも可能だ。

図 店舗でRFIDタグを活用することで得られるメリットの例

図 店舗でRFIDタグを活用することで得られるメリットの例

出所 経済産業省

商品を精算するときも、1つ1つの商品のバーコードを読むようなことはする必要がない。RFIDタグが付いた商品をかごに入れて、RFIDリーダーが付いたレジに置けば、瞬時に精算が完了する。レジに店員を配置する必要すらなくなる。実際、商品にRFIDを付けて、専用の無人レジでの精算を試みる実証実験はすでに実施済みだ。

図 RFIDタグが付いた商品と専用レジを利用した実証実験の様子

出所 パナソニック

今回は2025年までにという期限を付けて合意に至ったが、条件も付いた。その条件とは2つ。1つ目はRFIDタグの価格だ。一般的な電子タグの単価(ICチップ+アンテナ+シール化等のタグの加工に関する費用)が1枚当たり1円以下になっていることが条件となった。レンジで温める商品や、金属容器、冷凍チルド商品、極細商品などの特殊な条件の商品に向けたRFIDタグはこの条件の対象外となる。

この点については、2017年3月7日に大日本印刷がRFIDタグの低価格化を目指した開発に着手すると発表している。同社は2025年に単価1円を目指しているが、さらなる低価格化が必要になるかもしれない(関連記事)。

もう1つは、商品を生産するメーカーが、商品出荷前にRFIDを付ける「ソースタギング」が実現し、商品が流通する過程などほぼ全てをRFIDタグで管理できることという条件だ。経済産業省は、一般消費者の家庭にRFIDタグ読み取り機能が付いた冷蔵庫が普及し、収納している食品の状況を簡単に管理、把握できるようになるということまで想定している。

今後は、各企業が調査、技術開発を進めることで、先述の条件をクリアして、2025年までにコンビニの全商品をRFIDタグで管理する仕組みを作っていくことになる。そして2018年には今回の合意に参加したコンビニエンスストア事業者5社が、特定の地域で取扱商品にRFIDタグを貼り付けて商品を個別管理する実験を開始する予定となっている。


■リンク
経済産業省
セブン‐イレブン・ジャパン
ファミリーマート
ローソン
ミニストップ
JR東日本リテールネット

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