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ガスタービンと蓄電池のハイブリッドシステムが登場、ガスタービンの欠点を蓄電池が補う

2017/04/20
(木)
SmartGridニューズレター編集部

アメリカGeneral Electric社とアメリカSouthern California Edison社は、蓄電池を組み合せたガスタービン発電機「LM6000 Hybrid Electric Gas Turbine」を発表した。

アメリカGeneral Electric社とアメリカの電力事業者であるSouthern California Edison社は2017年4月18日(現地時間)、蓄電池を組み合せたガスタービン発電機「LM6000 Hybrid Electric Gas Turbine」を発表し、General Electric社は同製品の1号機をSouthern California Edison社に納入した。今後数カ月以内に2台目を納入する予定となっている。

この発電機は出力50MW(5万kW)のガスタービン発電機「LM6000」に、出力10MW(1万kW)で蓄電容量が43MWh(4万3000kWh)の蓄電池を組み合せたもの。ちなみにLM6000はボーイング767などでの採用実績があるターボファンエンジン「CF6-80C2」を発電機用に流用したものだ。

図 蓄電池を組み合せたガスタービン発電機「LM6000 Hybrid Electric Gas Turbine」

図 蓄電池を組み合せたガスタービン発電機「LM6000 Hybrid Electric Gas Turbine」

出所 日本GE

General Electric社とSouthern California Edison社がこの発電機を開発した最大の理由は、不安定な再生可能エネルギーの出力に対応するためだ。Southern California Edison社が電力を供給しているカリフォルニア州は、2030年までに供給電力量のうち50%を再生可能エネルギーによるものとする目標を掲げている。太陽光発電所や風力発電所を無闇に建設するだけではこの目標は実現できない。風速、気候、時間帯などによって大きく出力が変動する出力を吸収する仕組みを構築する必要がある。そのための試みの一つが今回General Electric社とSouthern California Edison社が披露した発電機だ。

電力会社は太陽光や風力による発電量が増えてくると、火力発電所の出力を落として需要と供給のバランスを取る。反対に太陽光や風力による発電量が急減したら、急いで出力を上げないと、供給不足で停電に陥る可能性もある。

しかし、火力発電設備は運転を開始してから定格出力に達するまでにある程度の時間が必要だ。そこで、電力各社は急な発電量減少や、急な需要増加に備えるため、火力発電設備を完全には停止させず、「待機モード」で運転していた。待機モードとはいえ、火力発電設備を運転しているのだから、発電することはなくても燃料を消費していた。

今回、General Electric社とSouthern California Edison社が披露した発電機は、待機モードで燃料を浪費する必要をなくすものだ。太陽光や風力による発電量が急減したり、需要が急増したときは、一瞬で大電力を放出できる蓄電池で対応する。蓄電池で対応している間にガスタービン発電機を定格出力まで上げるという使い方になる。

GE Power Services社の社長兼CEOであるPaul McElhinney氏は「Southern California Edison社の要望は特殊なものだと思っていた。しかし、共同で開発してみると当初思ったよりも広い用途で使えるものだと気付いた。これからも再生可能エネルギーを活用した電力の受け入れや、急な需要増加に対応しようという企業と共同で、「tailor-made」のシステムを開発していきたい」と語った。


■リンク
General Electric社
日本GE

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