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環境発電でセンサーデータを数km先まで無線送信、福島の農協が果樹園の監視に向けて導入

2017/04/26
(水)
SmartGridニューズレター編集部

ふくしま未来農業協同組合は、果樹園の防霜対策としてNTT東日本の圃場センシングシステム「eセンシング For アグリ」を導入し、運用を始めたと発表した。

ふくしま未来農業協同組合は2017年4月25日、果樹園に霜が降りるのを防ぐ(防霜:ぼうそう)ための対策として東日本電信電話(NTT東日本)の農地(圃場:ほじょう)センシングシステム「eセンシング For アグリ」を導入し、運用を始めたと発表した。

eセンシング For アグリは、圃場に温度、湿度、照度などを検知するセンサーを設置し、その検出値を無線通信でゲートウェイに飛ばすというものだ。ゲートウェイに届いたデータはそのまま光回線でインターネットを通り、NTT東日本が運営しているクラウドのストレージサービス「フレッツ・あずけ~る」に送信する。農業生産者は、フレッツ・あずけ~るにWebブラウザやスマートフォンでアクセスすることで圃場の環境の変化をグラフなどの形で確認できる。さらに、センサーの検出値が事前に設定したしきい値を超えた、あるいは下回ったときに、警報メールを送信する機能も提供する。

図 NTT東日本のeセンシング For アグリのシステム構成図

図 NTT東日本のeセンシング For アグリのシステム構成図

出所 東日本電信電話

ここまで見ると、他社も提供している圃場監視システムとあまり変わらないように思えるが、1つ大きく違うところがある。センサーと、その観測値を送信する無線通信機に、電源が要らないものを採用したという点だ。具体的にはドイツEnOcean社が2017年4月に発表した無線通信技術「EnOcean Long Range」を採用した。

EnOcean社のセンサーと無線通信技術は環境発電(エナジーハーベスティング)で動作に必要な電力を得るため、電池などの電源が不要という大きな特徴がある。しかし、通信距離が建物内で30m程度、見通しがきく屋外でも300m程度と短いためか、日本国内での採用例はあまり多くなかった。

EnOcean Long Rangeでは、エナジーハーベスティングによる発電量を少し上げ、その分無線信号の発信に大きな電力を使うようにした。その結果、指向性の強くないアンテナを使っても、数kmの距離で通信できるようになった。指向性を持たせたアンテナを使えば、その距離はさらに延びる。

ふくしま未来農業協同組合管内は、全国有数の果実、野菜の産地だ。桃、梨、りんご、あんぽ柿、きゅうり、トマト、ニラ、なすなどを栽培している。しかし、その果実を生産する上で大きな障害となっているのが霜だ。特に、果実の芽が出るころに霜が降りると、深刻な損害につながる。

従来は、毎年果樹の開花期となる4月に「防霜対策本部」を設置し、霜注意報が出ると職員、組合員およそ60人が管内に点在する56カ所の観測地点の温度を夜通し監視している。その人的負担は大きく、ふくしま未来農業協同組合としても大きな課題ととらえていた。

そこで、自動的に圃場の環境を観測する機器の導入を検討してきたが、圃場に設置するセンサーに電源が必要になることが問題となった。観測データの送信に携帯電話回線を使うものが多いという点も問題となった。通信コストを無視できないと判断したのだ。そこで、電池不要でセンサー計測値を送信できるenOcean Long Rangeを活用したNTT東日本のeセンシング For アグリを選んだ。圃場に設置するセンサー一体型の無線送信機は、電源として太陽光発電パネルを使用しているという。

ふくしま未来農業協同組合は管内55カ所にセンサー一体型の無線送信機と、受信用アンテナを設置した。センサーは観測データを15分ごとにクラウドに送るので、ほぼリアルタイムで圃場の環境変化をとらえることができる。また、ふくしま未来農業協同組合は、霜が降りると判断する基準となる気温が1℃としており、この値を下回ったときには警告のメールが関係者に届くようにしている。

ふくしま未来農業協同組合は、観測データを蓄積して、水稲栽培や営農指導に活用していく方針を示している。NTT東日本は、利用者から要望を聞いて、利用可能なセンサーのラインアップを増やし、より多様な農業生産現場で利用できるようにするとともに、収集したデータをより便利に活用できる機能の開発を検討するとしている。


■リンク
東日本電信電話
ふくしま未来農業協同組合

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