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「温度変化に合わせて家電を自動制御」、大和ハウス工業がAIを活用した実証事業に着手

2017/05/30
(火)
SmartGridニューズレター編集部

大和ハウス工業は、AIとセンサー技術を活用して住宅にある機器を自動制御するシステムを構築する実証事業に着手すると発表した。

大和ハウス工業は2017年5月26日、人工知能(Artificial Intelligence:AI)とセンサー技術を活用して住宅にある機器を自動制御するシステムを構築する実証事業に着手すると発表した。経済産業省の「平成28年度補正 IoTを活用した社会システム整備事業(スマートホームに関するデータ活用環境整備推進事業)」を受託した、三菱総合研究所からの再委託を受けて実施する。

今回の実証事業では、住宅に設置した温湿度センサーなどの値をクラウドに集積し、AIで解析し、その結果に応じて住宅にある家電製品などを自動制御するシステムを構築する。また、ユーザーによる操作インタフェースも、スマートフォンのタッチパネルを利用したものだけでなく、音声認識を利用したものを開発する。

例えば、温度センサーによる検出値の推移に応じて、電動窓やエアコンを自動制御し、快適な環境を作るといったことや、住環境に関する情報をTwitterやLINEへの通知、ロボットから音声でユーザーへの伝達、ユーザーからの音声による指示を受けて家電製品の運転状況を操作するということを実現する。

具体的には、温湿度などを計測する環境センサー、玄関などの扉の錠の開閉状況を検知する鍵センサー、スマートメーターなどのデータを収集し、AIで分析してエアコンやLED照明、赤外線リモコン対応家電などを制御するなど、住宅に設置するHEMS(Home Energy Management System)単独では実現不可能なことを可能にする。

図 住宅に設置したセンサーの計測値をAIで分析して、家電製品を自動制御する

図 住宅に設置したセンサーの計測値をAIで分析して、家電製品を自動制御する

出所 大和ハウス工業

システムを構築する際には、家電製品やWebサービスが備えているAPI(Applcation Programing Interface)を活用し、既存の機器、サービスを接続する。新たにAPIから開発するよりも、開発期間を短縮でき、コストを圧縮できる。運用コストも低減できるという。

データを集積する中心となるサーバーはAmazon Web Services(AWS)上に構築する。さらに、AWSが提供する機械学習などのAI関連サービスを活用する。この点でもすでにあるものを活用して開発コストを抑える。さらに、使った分だけ料金を支払うパブリッククラウドサービスを利用することで、開発時は最小限のシステムを運用し、利用者数の増減に応じてコンピュータリソースを伸縮させることで、運用コストも削減する。この部分の開発は富士ソフトに依頼するという。

図 センサーデータを集約するサーバーはAmazon Web Services(AWS)に構築し、AWSが提供する機械学習などのサービスを利用してデータを解析する

図 センサーデータを集約するサーバーはAmazon Web Services(AWS)に構築し、AWSが提供する機械学習などのサービスを利用してデータを解析する

出所 大和ハウス工業

さらに、利用可能な部分ではヤフーが提供するIoT機器連携サービス「myThings Developers」を活用する(関連記事)。環境センサーとLED照明との連携、Googleカレンダーを活用した機器の運転スケジュール管理などを、アイコンのドラッグアンドドロップとちょっとした設定で実現する環境だ。

さらに、インターネット接続回線が途切れたときに備えて、住宅に家電を制御する機能を持つ多機能ゲートウェイを設置する。このゲートウェイは大和ハウス工業が開発したHEMS「D-HEMS」が搭載する「住宅API」の機能と、ソニーコンピュータサイエンス研究所が開発し、オープンソースで公開しているホームゲートウェイ組み込み向けソフトウェア「Kadecot(カデコ)」を活用して開発する。長期に渡って使用することを考えて、通信手段の変化にも柔軟に対応できる作りにする予定だ。

システムが完成したら、大和ハウス工業が茨城県つくば市で提供した戸建住宅30世帯に必要な機器を設置し、動作を検証する。検証を続けながら、ユーザーインタフェースの改善を続けることも予定している。具体的には、各サービスをすべて制御できるポータル画面の改善や、音声認識ロボットを利用したユーザーとのコミュニケーションの取り方、SNSへの情報配信の方法などを改善していく。さらに、機器の遠隔保守サービスに対するユーザーの満足度を調査し、向上を目指して改善していく。

さらに、2017年秋頃には大和ハウス工業の戸建分譲地内に完成予定のモデルハウスにも、このサービスを導入し、訪問客にサービスを体験してもらうとしている。


■リンク
大和ハウス工業

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