[ニュース]

SiemensとAES、大規模蓄電池專門の新会社を共同で設立へ

2017/07/14
(金)
SmartGridニューズレター編集部

ドイツSiemens社とアメリカAES社は、大規模蓄電池專門の新会社「Fluence社」を共同で設立すると発表した。

ドイツSiemens社とアメリカAES社は2017年7月11日、大規模蓄電池專門の新会社「Fluence社」を共同で設立すると発表した。出資比率は両者とも50%。会社設立の手続きを完了させ、当局の認可を取得するのは2017年の第4四半期になる予定だ。Fluence社の本社はアメリカ・ワシントンDCに設置し、ドイツ・バイエルン州のエアランゲン(Erlangen)にも拠点を設立する。さらに、世界中の主要な都市にも拠点を設立する意向を示しているが、具体的にどの都市に設立するのかということは決まっていないようだ。

イギリスの調査会社IHS Markitによると、2016年の時点で世界中の電力網に合計でおよそ3GW(300万kW)の大規模蓄電池がつながっているが、2022年にはこの数字がおよそ28GW(2800万kW)まで伸びるという。

風力や太陽光などの再生可能エネルギーを利用した発電所が世界中で増加しているが、風力発電所も太陽光発電所も、昼夜などの時間帯や天候によって発電量が大きく変動する不安定な電源だ。そこで、大規模蓄電池を電力系統に接続し、風力発電所や太陽光発電所の発電量の変動を吸収し、電力系統を安定させようという事業者が増えつつある。IHS Markit社の予測は、この動きが世界中でより大きくなるということを示している。

また、大学や企業が大規模蓄電池を設置する例も増えつつある。電力需要が少ない時間帯に系統からの電力を充電しておいて、需要がピークに達する時間には充電した電力を放電することで系統からの受電量を抑える。電気料金の計算に大きな影響を与える電力需要のピーク値を低く抑え、電力コストを削減することを狙った動きだ。

さらに、地域の蓄電池や小規模な発電設備を束ねて仮想的な発電所を構成するVPP(Virtual Power Plant)を構築する動きが本格化すれば、大規模蓄電池の需要はさらに高まるだろう。今回の新会社設立はこれから大きく伸長すると予測できる大規模蓄電池市場で、世界的に大きなシェアを取ることを狙った動きと言える。

AES社は、すでに大規模蓄電池市場で大きな実績を残している。「大規模な蓄電池を利用して電力系統を安定させる」というアイデアをひらめいた同社の社員が2007年に子会社として「AES Energy Storage社」を設立している。電力系統の安定化に活用できるほど大規模な蓄電池など作れるはずがないと誰もが思っていた頃だ。

今やAES Energy Storage社は世界7カ国に同社の大規模リチウムイオン蓄電池「AES Advancion」を設置しており、その合計出力は200MW(20万kW)を超えるという。2017年1月末には、サンディエゴを拠点とする電力、ガス事業者であるSan Diego Gas & Electric社の依頼で、合計出力30MWの大規模リチウムイオン蓄電池を設置している。これは、リチウムイオン蓄電池を利用した大規模蓄電池としては、世界最大の規模になるという。AES社は新会社にAES Advancionだけでなく、大規模リチウムイオン蓄電池を導入、運用してきた経験と知見、電力系統安定サービスの提供で得た知見などを持ち込む。

図 San Diego Gas & Electric社の依頼で、AES Energy Storage社が設置した大規模リチウムイオン蓄電池

図 San Diego Gas & Electric社の依頼で、AES Energy Storage社が設置した大規模リチウムイオン蓄電池

出所 AES社

一方でSiemens社は、世界各国の電力事業者に発電設備や送配電設備を納入してきた実績がある。かつては原子力発電所の建設も手がけていたが、すでにこの事業からは撤退し、今では風力発電設備など、再生可能エネルギー関係の事業で業績を伸ばしている。最近ではマイクログリッドの構築にも携わっている。新会社では、再生可能エネルギーを利用した発電所と電力系統を接続する経験や技術などの面で貢献する予定だ。

またSiemens社も大規模リチウムイオン蓄電池「Siestorage」を開発し、世界各地に導入している実績を持っている。さらに、リチウムイオン蓄電池セルの性能向上を目指す研究にも取り組んでいる。リチウムイオン蓄電池の「次」となる新技術の開発に成功する可能性もあるだろう。

新会社は当面、顧客の要望に応じてAES AdvancionとSiestorageのどちらも供給する。そしてSiemens社が世界160以上の国で関係を築いてきた多数の顧客に大規模蓄電池や、それを活用したサービスを提供していく。Siemens社に比べるとAES社は顧客の数が少なかったが、今回の新会社設立でその弱点を解消できる見込みだ。

さらに、2社共同で新会社を設立することで、大規模蓄電池の部材調達ルートの統一も見込めそうだ。統一して調達規模が大きくなれば、リチウムイオン蓄電池セルを一括で大量に購入することで、蓄電池セル単価の引き下げ交渉を有利にすすめることができるはずだ。会社の規模も顧客基盤も大きくなることで、スケールメリットを活かせるようになるだろう。最近はTeslaも大規模蓄電池の納入で実績を上げてきている。Teslaには、超大規模なリチウムイオン蓄電池生産工場「ギガファクトリー」がある。大量生産によるスケールメリットで、蓄電池セルを安価に調達し、電気自動車だけでなく家庭向け定置型蓄電池、そして大規模蓄電池を低価格で提供しようとしている。今回のSiemens社とAES社による新会社設立を機に、ほかの企業もスケールメリットを狙った提携を結ぶ可能性もあるだろう。


■リンク
Siemens社
AES社
Fluence社

TOPに戻る

関連記事
新刊情報
 2015年頃より、IoT(InternetofThings)や人工知能(AI)が注目され始め、これらの技術を使って家電や自動車などあらゆるモノがネットワークにつながり、効率的な社会を創造することが期...
 いよいよ日本でも、IoT時代に必須のLPWA(Low Power wide Area、省電力型広域無線網)サービスがスタートします。  第4次産業革命に向けて、エネルギー、ヘルスケア、製造業、...
 NIST(米国国立標準技術研究所)が2009年11月に立ち上げた委員会「SGIP」(スマートグリッド相互運用性パネル)は、2013年にSGIP 2.0となり、新たな活動を展開している。  SG...