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産総研など、デジカメ画像からコンクリートのひび割れを高精度で検出する技術を開発

2017/08/08
(火)
SmartGridニューズレター編集部

産総研、首都高技術、東北大学は、デジタルカメラで撮影した画像データからコンクリートのひび割れを高い精度で検出する技術を開発したと発表した。

国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)、首都高技術株式会社、国立大学法人東北大学は2017年8月3日、デジタルカメラやスマートフォンで撮影した画像データからコンクリートのひび割れを高い精度で検出する技術を開発したと発表した。独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から委託を受けて開発した。

高速道路などの社会基盤は、これから建設後50年を経過するものが急速に増加する。当然、経年劣化で損傷する例も増える。社会基盤を安全に利用し続けるには、損傷を正しく検出し、メンテナンスをしていかなければならない。しかし、従来の方法で損傷を探し出していては、メンテナンスにかける資金が足りなくなる。また、損傷を探し出す技能と専門知識を持つ人材が不足しているという問題もある。

今回開発した技術は、コンクリートの画像から幅0.2mm以上のひび割れを高い精度で検出するもの。現在、コンクリートのひび割れ検出は、人間の手作業に頼っている。屋外の現場でノートにひび割れの状況をスケッチし、それを持ち帰ってひび割れ位置とその形を記したCADデータを作成している。

ただし長年、風雨にさらされてきたコンクリート構造物の表面には、キズや汚れが付着し、雨水や排水で表面が濡れることも多い。キズや汚れ、濡れた表面といった要素はひび割れの正確な検出を困難なものにする。今回開発した技術では、コンクリート表面にキズや汚れ、濡れがあっても80%以上の精度でひび割れを正しく検出するという。しかも、熟練の作業者がコンクリート表面をよく見て調べる必要はなく、デジタルカメラやスマートフォンでコンクリート表面を撮影し、その画像データをクラウドにアップロードするだけで、ひび割れの有無と、その位置や形を検出できる。

クラウドでは、機械学習を利用してひび割れを検出する。学習モデルを構築し、教師データとしてコンクリート構造物を撮影したさまざまな画像を利用して学習させて、80%の精度でひび割れを検出することを実現した。教師データの撮影、収集は首都高技術が点検作業時に道路橋やトンネルなどの画像を撮影して集めた。東北大学は路面の画像収集と技術評価を担当し、産総研が画像解析技術を組み込んだシステムの開発を担当した。

従来の方法によるひび割れ検出の精度と、今回開発したシステムを利用した際のひび割れ検出精度を比較したところ、従来の方法では誤検出が多く、正解率は12%にとどまった。一方、今回開発した技術を利用すると、80%以上の確率で正解を出したという。

図 コンクリート壁の撮影画像(左)と、今回開発した技術でひび割れを検出した結果(中)。80%以上の確率でひび割れを検出している。右は従来の手法でひび割れを検出した結果。誤検出が多く、正しく検出した割合は12%にとどまる

図 コンクリート壁の撮影画像(左)と、今回開発した技術でひび割れを検出した結果(中)。80%以上の確率でひび割れを検出している。右は従来の手法でひび割れを検出した結果。誤検出が多く、正しく検出した割合は12%にとどまる

出所 国立研究開発法人産業技術総合研究所

今回の技術を開発するプロジェクトは2018年度末で終了する予定。それまでに首都高速道路などのコンクリート構造物を対象に実証実験を重ねて、システムの実用化を目指す。実用化の際には、人間の手作業なら300分かかるところを、30分で作業を完了させる、つまり作業時間をおよそ1/10に短縮することを目指す。また、今回開発した技術をWebサービスの形で無料で公開する。Webサービス利用者がアップロードしたコンクリート画像と、ひび割れ検出結果も検証し、実用化に向けた精度向上に活用する。


■リンク
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
首都高技術
国立研究開発法人産業技術総合研究所
国立大学法人東北大学

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