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ディープラーニングを利用して蓄電池システムの状態を自動で監視、GSユアサなどが実証実験

2017/10/02
(月)
SmartGridニューズレター編集部

GSユアサとNTTコミュニケーションズは、リチウムイオン蓄電池システムの自動状態監視を目指す実証実験を実施すると発表した。

GSユアサとNTTコミュニケーションズは2017年9月29日、リチウムイオン蓄電池システムの自動状態監視を目指す実証実験を実施すると発表した。NTTコミュニケーションズが提供するディープラーニングを活用したデータ処理サービスで、蓄電池システムの状態監視、診断に挑む。

リチウムイオン蓄電池は性能向上に合わせるように、その用途が広がっており、現在では大規模太陽光発電所(メガソーラー)や風力発電所で発電した電力を一時吸収する用途で大規模蓄電池システムの導入も進んでいる。同時に、今後急速に普及が進むと定期点検などを請け負う作業員がさらに必要になり、運営コストが上昇するという課題も顕在化しつつある。

従来、大規模蓄電池システムの定期点検や状態診断では、作業員が電圧や電流などの計測値を分析して、状態を判断していた。自動測定で収集した検出値を事前に想定した関係式やしきい値管理で半自動的に管理する例もある。いずれにせよ、今後さらに蓄電池システムが普及すると、検出値を分析する作業員を増員しなければならない。

今回の実証実験では、稼働中の蓄電池システムを構成するリチウムイオン蓄電池の電圧や電流などの値の推移をセンサーで検知し、そのデータをディープラーニングの学習モデルに与えて学習させ、蓄電池の状態を診断するシステムを構築し、検証する。蓄電池の状態を示すセンサーデータはネットワーク経由でクラウドに送信し、クラウド側でディープラーニングを活用した手法で状態を診断する。

GSユアサとNTTコミュニケーションズは今回の実証実験に先立って、2016年からディープラーニングを褐葉してリチウムイオン蓄電池の種類を判別する試験を続けてきた。蓄電池の電圧や電流などのセンサーデータを基に、ディープラーニングの手法で学習モデルを構築し、さらにセンサーデータを与えて追加で学習させた。学習データの増加に伴って、分類精度がどのように変化するかGSユアサが評価したところ、僅かな電池特性の差異を識別して、高い精度で電池の種類を分類できると確認できたという。

図 様々な種類の蓄電池で計測した電圧や電流のパターンを学習させて、正体不明の蓄電池を高い精度で分類できるようになった

図 様々な種類の蓄電池で計測した電圧や電流のパターンを学習させて、正体不明の蓄電池を高い精度で分類できるようになった

出所 GSユアサ

NEDOと日立製作所は重要社会基盤の事業者と共同で検討しながら、どうすればこのアルゴリズムを制御システムに導入しやすくなるか協議した。その結果、この技術を活用した装置を作り、制御システムネットワークの外側に設置して、ネットワークを監視する構成が最適と結論づけた。ネットワーク内の装置、機器を外側から監視する構成とすることで、セキュリティ対策を打てない古い装置が混在する場合でも、システムを防御できるとしている。

今回の実証実験で利用する技術を利用することで、ネットワーク経由で遠隔地から蓄電池システムの状態を監視が可能になるだけでなく、蓄電池の遠隔制御や、状態が今後どのように変化するか予知することも可能になるという。

GSユアサは、今回の技術を活用して蓄電池システムの充電状態(SOC:State Of Charge)、劣化状態(SOH:State Of Health)をより高い精度で確実に把握し、バランス良く必要な量の電力を充放電できる最適な環境を保つことを目指す。自動制御で最適な環境を保つことで、蓄電池システム運用業務の効率を改善し、地球環境や防災、現在に貢献する製品やサービスを提供するとしている。NTTコミュニケーションズは、状態検知、予知を担当するディープラーニング技術の精度をさらに高め、ほかの製造業での活用を目指す。


■リンク
GSユアサ
NTTコミュニケーションズ

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