[特集]

電力小売全面自由化スタート!

― その本質に迫る! 誰のための自由化なのか ―
2016/04/01
(金)
SmartGridニューズレター編集部

 いよいよ4月1日から電力売全面自由化がスタートする。スタート時には、270社を超える電力事業者が参入する。
 既存の電力会社やガス会社や携帯電話会社、電鉄会社などから新たな料金メニューが次々に発表されているが、その多くがセットメニューやポイントなどとの組み合わせである。電力料金の比較サイトや関連するアドバイザーなども出現し、8兆円の市場へ新たに参入できるとしてやや浮足立っている様子がネットやテレビで見受けられる。
 同時に需要家には、電力自由化をめぐるトラブルもすでに起こり始めている。(注1)今回の電力システム改革の第2段階である「電力小売全面自由化」は果たして何のための、誰のための自由化なのか、ここでは、その本質に迫ってみる。

日本の電力自由化の歴史

 これまで日本の電力の自由化は、図1のように、(制度改革によって1995年から電力卸売自由化は行われているが)ここでは2000年3月以降の段階的な動きを示している。

 今回、2016年4月からスタートする電力小売全面自由化は、一般家庭やコンビニ、町工場など向けへの新規参入が可能となり、一般家庭を含むすべての需要家が、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになる。しかし、需要家にとっては電力会社の選択肢が広がるだけでなく、これまでにはなかった義務(例えば、引越の際に小売事業者の指定をしなければならないなど)も伴い、また冒頭に述べたようなトラブルのリスクも伴うことになる。

 それでは、なぜ2005年以降止まっていた自由化が、今回の全面自由化へと進展したのだろうか?

 その一番のきっかけは、不幸にして起こった2011年3月11日の東日本大震災である。政府は、以下の3つの観点から、電力システム改革を進めることになった(「電力システム改革について」、経済産業省 資源エネルギー庁、2015年11月)注2

  1. 安定供給を確保する
  2. 電気料金を最大限抑制する
  3. 需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大する

 このような背景から、2012年に電力システム改革専門委員会が設置され、2013年4月に「電力システムに関する改革方針」が閣議決定された。これを受けて、2013年(第1弾改正)、2014年(第2弾改正)、2015年(第3弾改正)と電気事業法改正法案の成立を経て、今回の電力小売全面自由化に至ったのである(図2)。

その結果、約8兆円という新しい市場が開放されることになり、すでに自由化されている契約電力部分も含めると、実に約18兆円という巨大な電力市場が拓けたのである(図3)。


▼ 注1
2016年3月14日、経済産業省が電力自由化に関連するトラブル相談事例と消費者へのアドバイスを公表

▼ 注2
http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/pdf/system_reform.pdf

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