[クローズアップ]

ソラコムのIoT通信プラットフォーム「SORACOM」の戦略

― 世界初のマルチLPWA通信事業者を目指す ―
2017/08/10
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

IoT通信プラットフォーム「SORACOM」の仕組み

〔1〕無線ネットワークとクラウドを連携させる基盤

 図1に示すように、「SORACOM」は、

(1)左側に示す①セルラー(LTE/3G)、②LPWA(LoRaWAN、Sigfox)注4など、いろいろな無線ネットワーク(Wireless Agnostic注5)と、

(2)右側に示すAWSやAzure、Google、パートナークラウドなど、いろいろなクラウド(Cloude Agnostic注6

の中間に位置し、あらゆる無線ネットワークとクラウドをセキュアにつなぐ、通信とクラウドを融合させたIoT通信プラットフォームとなっている。

図1 SORACOM:あらゆる無線とクラウドをセキュアにつなぐIoT通信プラットフォーム

図1 SORACOM:あらゆる無線とクラウドをセキュアにつなぐIoT通信プラットフォーム

出所 ソラコム「SORACOM Conference “Discovery」、2017年7月5日

〔2〕SORACOMが提供するサービスの構成

 図2に、「SORACOM」が提供するサービスの構成を示す。また表2に、図2に示した、「SORACOM」のA〜Jの各サービス名とその内容を示す。

図2 IoT通信プラットフォーム「SORACOM」が提供するサービスの構成

図2 IoT通信プラットフォーム「SORACOM」が提供するサービスの構成

出所 SORACOMのサービス

表2 SORACOMのサービス名(A~J)とその内容

表2 SORACOMのサービス名(A~J)とその内容

LwM2M(LightweightM2M):OMA (Open Mobile Alliance、携帯電話の規格策定等を行う国際組織、2002年6月設立) が定めた軽量の M2M 用プロトコル

VPG: Virtual Private Gateway、仮想専用ゲートウェイ

ミラーリング:VPGを通過するパケットのコピーを指定の宛先に送信する機能

リダイレクション:VPG を通過するユーザーパケットが常に顧客が指定したサーバを経由するように経路を変更(リダイレクション)して転送する機能

インスペクション:VPG を通過するパケットの統計情報を提供する機能。パケットを解析し、アプリケーションの判別やバイト数、パケット数といった統計情報を提供する機能

出所 ソラコム「SORACOM Conference “Discovery」、2017年7月5日をもとに編集部作成

 表2に示すように、SORACOM「Air」(通信サービス)、SORACOM「Beam」(データ転送支援サービス)から、今回(2017年7月5日)発表されたSORACOM「Inventory」(デバイス管理サービス)、SORACOM 「Junction」(透過型トラフィック処理サービス)に至る、10種類のサービスが提供されている。表2には、各サービスの概要を紹介しているが、詳しくは、https://soracom.jp/services/を参照していただきたい。

 以降では、クラウドと連携するうえで重要となるSORACOM Fuunel(クラウドリソースアダプタ)について紹介していく。

〔3〕クラウドとの連携:SORACOM Funnel

 SORACOM Funnel(ファンネル)は、デバイス(Air SIM搭載)から直接クラウドサービスにデータを転送する、アプリケーション連携サービスである。その仕組みはSORACOM Beamと似ているが注7、Funnelは「アダプタ」と呼ばれるクラウドごとの接続機能が提供されており、クラウドサービスに特化したデータ転送サービスとなっている。

 Funnelでは、サポートされるクラウドサービスと、そのクラウドサービスの接続先のリソースを指定するだけで、データを指定のリソースにインプットすることができる。クラウドサービスへアクセスするためのパスワードをデバイスに保持する必要もないなど、ユーザーは、最小限の手間で迅速にクラウドサービスを利用できるようになる。

 これまで、表3左に示すようなメガクラウド・ベンダのクラウドサービスに対応した5つのFunnelアダプタを提供していたが、ソラコムのSPS認定済ソリューションパートナー41社(表4参照)も、それぞれクラウドサービスをもっている。そこで、各パートナーのクラウドに対応できるように、「Partner Hostedアダプタ」という新しい仕組みが開発された。

表3 SORACOM Funnelのクラウドアダプタ

表3 SORACOM Funnelのクラウドアダプタ

出所 https://soracom.jp/services/funnel/

 これによって、ソラコムがすべて開発するのではなく、パートナーが「Partner Hostedアダプタ」部分だけを開発すれば、「SORACOM」プラットフォームを利用して、そのままパートナーのソリューション(クラウド)に直結できるようになる。

 表3右に示すように、すでに5社からPartner Hostedアダプタが開発されている。このうち、インフォテリアの「Platio」とブレインズテクノロジーの「Impulse」が、2017年7月5日から連携を開始すると発表された。


▼ 注4
LPWA:Low Power Wide Area、IoT向けの省電力広域通信ネットワーク

▼ 注5
「無線に依存しない」という意味。

▼ 注6
「クラウドに依存しない」という意味。

▼ 注7
SORACOM Beamを参照。

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