LoRaWANとスカパーJSAT衛星通信の共同実証に成功
さらにソラコムと、日本で唯一かつアジア最大の有料多チャンネル放送・衛星通信事業者スカパーJSATの両者は、ソラコムが提供する「SORACOM Air for LoRaWAN」とスカパーJSATの運用する衛星通信回線を接続する共同実証実験を行い(図4)、衛星通信がIoT用途でも活用可能であることを確認する実証実験に成功した注11。
図4 スカパーJSAT衛星通信とLoRaWANを用いたIoT広域通信ネットワークの実証実験
バックホール:中継回線
出所 ソラコム「SORACOM Conference “Discovery」、2017年7月5日
今回の共同実証実験は、携帯電話(LTE/3G)の電波が届かない2地点(宮崎県立花ダムと山梨県瑞牆山荘(みずがきさんそう)で実施された(表5)。「SORACOM Air for LoRaWAN」は、LoRaWAN端末から受け取った情報をLoRaWANゲートウェイで受けとった後、通常はAir SIM(SORACOM Air for セルラー)注12を利用して、携帯電話網経由でIoT通信プラットフォーム「SORACOM」に送る仕組みであるが、この実証実験では、携帯電話網利用の区間をスカパーJSAT衛星通信回線に置き換えて接続実験が行われた。
表5 ソラコムとスカパーJSATの共同実証実験内容と結果
出所 http://www.sptvjsat.com/load_pdf.php?pTb=t_news_&pRi=924&pJe=1
https://soracom.jp/press/2017070504/
写真1に、実証実験で使用されたスカパーJSAT衛星通信用の75cm可搬型アンテナを示す。
写真1 今回の実証実験で使用されたスカパーJSAT衛星通信用の75cm可搬型アンテナ
出所 ソラコム「SORACOM Conference “Discovery」、2017年7月5日
「真のマルチLPWA通信事業者」への挑戦
ここでは、2017年7月4日のソラコムの主な発表について、内容を紹介した。間もなく、2020年に250億個とも500億個とも言われるIoTデバイスが接続される本格的なIoT時代が到来する。それらの膨大なIoTデバイスを接続するソラコムの「SORACOM」は、セルラー(LTE/3G)網だけでなく、920MHz帯を使用する非セルラーLPWAであるLoRaWANやSigfox、ソニーのLPWAなど、マルチLPWAに対応したIoT通信プラットフォームであり、同社では、IoT時代の第1フェーズの体制が整ってきた。2017年後半は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなど日本の大手携帯電話事業者だけでなく、全世界の携帯電話事業者が、LTEネットワークの周波数帯の一部を使用する、NB-IoTやeMTC注13などのセルラー系LPWAのサービスを開始する。
「SORACOM」が、非セルラー系LPWAだけでなく、このようなセルラー系LPWAをも統合する激しい競合と協調が始まる第2フェーズに、どのようにビジネスを展開するのか。「真のマルチLPWA通信事業者」に挑戦するソラコムに、大きな期待と注目が集まっている。
▼ 注11
http://www.sptvjsat.com/load_pdf.php?pTb=t_news_&pRi=924&pJe=1、https://soracom.jp/press/2017070504/
▼ 注12
SORACOM Air forセルラー:国内で月額300円〜(1日10円ベース)、グローバルで180円〜の基本料金で提供されていたが、通信量がきわめて少ない用途では、月額の新料金約45円(月額で数Mバイト程度の利用に最適化。例えば月1回の在庫確認など)が発表されている(2017年5月)。
▼ 注13
NB-IoT、eMTC:LTE/3G等の国際標準を策定している組織「3GPP」で2016年に策定されたセルラー系LPWA標準。NB-IoTは、Narrow Band-IoTの略で、狭帯域IoT規格(固定通信向け)で、Cat-NB1(Category-NB1)とも言われる。eMTCは、LTE enhancements for Machine-Type Communications(単に、enhanced MTCとも言われる)の略で、MTC(3GPPにおけるM2Mの表現)の拡張規格(移動通信向け規格)。