[イベント]

脱炭素に向けて本格的に走り出したBEV/FCEV

― 「人とくるまのテクノロジー展2020 YOKOHAMA」レポート ―
2022/06/12
(日)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

2050年カーボンニュートラルの達成を目指して、「人とくるまのテクノロジー展2022 YOKOHAMA」(主催:公益社団法人自動車技術会)が2022年5月25日〜27日の3日間、神奈川県のパシフィコ横浜で開催された。今回はコロナ禍がやや落ち着いてきたこともあり、リアル展示(484社)とオンライン展示(511社。5月31日まで開催)のハイブリッドで開催された。リアル会場への来場者は延べ4万3,665名であった(注1)。
展示会では、脱炭素に向けて、再生可能エネルギー(以下、再エネ)を活用した発電システム、蓄電池やエネルギー運搬の最新技術、電動車の高効率化と既販車対応技術などに加え、各社から、ZEV時代に向けた多彩な製品・技術が繰り広げられた。

主催者企画展示:「創る」「蓄える」「使う」

〔1〕主催者側の企画展示

 主催者側の企画展示として、図1に示す15の展示協力企業・団体が、「新たな脱炭素が照らすカーボンニュートラルへの道」をテーマに、化石燃料から再エネ主体へ移行する次世代自動車の全体像を、「創る」「蓄える」「使う」の3ゾーンに分けて展示を行った。

  1. 「創る」:再エネを活用した発電システム
     カーボンニュートラル時代の電動車に欠かせないエネルギーを、太陽光や風力などの再エネから生み出される技術や、CO2を回収して再エネから得られた水素と反応させて内燃機関用燃料に変える技術など、エネルギーを作る工程で可能な限りCO2を発生させない技術について展示された。
  2. 「蓄える」:蓄電池やエネルギー運搬の最新技術
     P2G注2への期待が高まる中、海外の未利用資源を用いて水素を製造し、日本へ輸送する水素サプライチェーン(供給網)を構築する取り組みや、効率的に水素を車載する技術、また新たな発想で開発が進む新型電池や電池の劣化度を診断する技術など、水素・電気を「いつでも、どこでも、誰でも利用可能とする技術」について展示された。
  3. 「使う」:電動車の高効率化と既販車対応技術
     自動車の原動力技術の高効率化にフォーカスし、従来エンジンの燃焼効率をさらに高め、バイオ燃料や合成燃料といった次世代燃料の活用をも目指した新技術、電動車を効率化する電動技術などの最新動向を紹介するとともに、カーボンニュートラルの実現につながるモビリティ(MaaS)普及の可能性について展示された。

図1 主催者企画展示「新たな脱炭素が照らすカーボンニュートラルへの道」

図1 主催者企画展示「新たな脱炭素が照らすカーボンニュートラルへの道」

展示協力企業・団体(五十音順):AHEAD(次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合)/inQs/NTTアドバンステクノロジ/シャープ/デンソー/東芝/戸田建設/トヨタ自動車/日産自動車/日本大学/NEDO/HySTRA(技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構)/日立製作所/日立造船/本田技研工業
出所 https://aee.online.jsae.or.jp/ja/special_exhibits/images/panel_yokohama.jpg

日立Astemo:高い環境性能と走行性能を両立する
電動車用電動パワートレインシステム

 日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業が経営統合し、2021年1月に誕生した日立Astemo(東京都千代田区)注3は、CASE注4の代表的な「コネクテッド」「自動運転」「電動化」の技術を開発し、自動車および二輪車事業の分野において先進的で持続可能なモビリティ技術を提供している。

 同社は、脱炭素社会の実現に向けて、高い環境性能と走行性能を両立する電動車用電動パワートレインシステム注5のラインナップ(写真1、図2)とともに、開発中の小型・軽量インホイールモーターをはじめ、薄型インバーター注6、バッテリー電気自動車(BEV)用インバーター、BEV用モーター、バッテリーマネジメントシステム(BMS)などを紹介した。

写真1 日立Astemoの電動車用電動パワートレインシステム

写真1 日立Astemoの電動車用電動パワートレインシステム

出所 いずれも編集部撮影

図2 日立Astemoのインホイール式EV向けダイレクト駆動システム

図2 日立Astemoのインホイール式EV向けダイレクト駆動システム

出所 編集部撮影


▼ 注1
https://aee.expo-info.jsae.or.jp/ja/yokohama/topics_page/?id=566

▼ 注2
P2G:Power to Gas。再エネの電力を利用して水を電気分解し水素(Gas)を製造し、様々に利用する技術。

▼ 注3
https://www.hitachiastemo.com/jp/corporate/exhibitions/technology2022_yokohama/menu.html?anchor=xev

▼ 注4
CASE:C(Connected:コネクテッド)、A(Autonomous:自動運転)、S(Shared & Service:シェアリング/サービス)、E(Electric:電動化)の頭文字をとった造語。

▼ 注5
電動パワートレインシステム:モーターの回転がタイヤに伝わるまでに経由する動力伝達装置。具体的には、BEVなどの電動車向けの小型・軽量・高効率なモーターやインバーター、走行用バッテリーの残量を高精度に検出して制御を最適化する電子制御システム。

▼ 注6
インバーター:電動パワートレインにおける主要機器の1つ。パワー半導体内蔵のパワーモジュール、制御基板、コンデンサー、電流センサーなどから構成され、電池に蓄えられたエネルギーを交流電力へと変換する装置。

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