2015年6月10~12日、幕張メッセ(千葉県千葉市)にて、Interop Tokyo 実行委員会主催、一般財団法人インターネット協会/株式会社 ナノオプト・メディア運営のもと、「Interop Tokyo 2015」が開催された。出展社数は486社、来場者数は3日間合計で13万6,341人となり、盛況を見せた。
今年のInteropは、「Endless Possibility ― ここから広がる“コネクテッド・エコノミー” ―」をテーマに開催され、IoTプラットフォームを構築するための具体的な技術やソリューションが多数展示され、注目を集めた。
今年は、リアル(M2Mネットワーク)とサイバー(IoT)を融合するCPS(Cyber Physical System)時代を迎え、IoT活用サービスの新時代の到来を感じさせた。ここでは、「CPS技術でコトづくり」を目指すNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の展示と、IoT活用の将来の可能性を示すエブリセンスジャパン、富士通の展示内容を中心にレポートする。
写真1 Interop Tokyo 2015の入場口
NEDOの成長戦略 「CPS技術でコトづくり」
NEDOは、同機構の成長戦略の1つである「CPS技術でコトづくり」についてパネルを用いて説明。「CPS」とは、Cyber Physical Systemの略語であり、実世界(Physical)で起こるさまざまな出来事を、各種センサー(例:M2Mネットワーク)などを介してIoTの世界(Cyberの世界)に取り込み、適切に処理を行うことで、実世界をより高度に、快適に、そして便利にするシステムのことを指している(写真2)。
同機構は、「CPS技術でコトづくり」の研究分野として、具体的に、「ノーマリーオフコンピューティング基盤技術開発」「クリーンデバイス社会実装事業」「高信頼・低消費電力型スケーラブルデータ制御基盤の技術開発」「IoT時代を支える多種大量データ処理基盤技術に係る先導研究」などを中心に展示した(写真3)。
ここでは、展示が行われていた「健康長寿社会を実現するノーマリーオフ生体計測技術」と「最新の電子デバイス(クリーンデバイス)の用途開拓推進事業」を紹介する。
写真2 日本で初めて登場した、
展示会場におけるCPS時代の到来を告げる「CPS」(NEDOブース)の看板
展示会場におけるCPS時代の到来を告げる「CPS」(NEDOブース)の看板
写真3 「CPS技術でコトづくり」の展示内容
センサーの長時間稼働を実現するノーマリーオフ技術
ノーマリーオフ(Normally-off)技術とは、通電しなくても記録データを失わない新デバイスである「不揮発性メモリ」(NVRAM:Non-Volatile RAM)を活用し、処理中であっても、そのなかの本当に動作が必要な構成要素以外の電源を積極的に遮断(オフ)することで、「ほとんどの電源をオフにしたまま処理を行う技術」のことを指す。
展示では、この技術を利用した生態信号計測SoC(System on a Chip)を組み込んだ、平均消費電流20μAで動作可能なウェアラブル生体センサーについて説明。同センサーでは、10mAhの小型電池で2週間以上、モニタリングを必要とする患者の日常生活の情報を取得できる(写真4、写真5)。
写真4 「健康長寿社会を実現するノーマリーオフ生体計測技術」の研究内容
写真5 ノーマリーオフ技術を組み込んだ貼付型心拍・活動量計モジュールと基盤
メーカーやサービス事業者の連携でクリーンデバイス普及を促進
クリーンデバイス(図1参照)とは、実用化間近であり、各機器に実装されることで省エネルギーを実現できる革新的な電子デバイス(例:高周波半導体や不揮発メモリ、パワーデバイス、環境発電デバイスなど)のことを指す。クリーンデバイスは、省エネルギー効果が期待されながらも、利用用途が特定されているところから、その機能を活かせていないという現状がある。
そのため、NEDOでは、デバイスメーカーやサービス事業者などが連携し、実証試験や普及課題である信頼性や安全性の評価、標準化・共通化を推進することで、クリーンデバイスの活用を促進している。
具体的には、「高速画像処理の実用化」「高信頼多機能ウェアラブル・バイタルサインセンサーの用途開拓・普及事業」「省エネルギー化センサーシステム普及拡大のための環境発電デバイス実装事業」をテーマとして研究が進められている(バイタルサイン:心臓の動きや肺の動きなど生きている証となる現象)。
図1 クリーンデバイス社会実装事業の概要
〔出所 NEDOサイトより、http://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100083.html〕