東芝は2017年2月15日、リチウムイオン蓄電池セル「SCiB」の新型を発売した。SCiBは東芝が独自開発したリチウムイオン蓄電池セル。リチウムイオン蓄電池では、負極に炭素を利用することが多いが、SCiBではチタン酸リチウム(Li2TiO3)を採用している。外部から力が加わって電池内部で短絡(ショート)が発生しても、熱暴走を起こしにくい安全性が大きな特徴。また、低温環境下で高い性能を発揮し、1万5000回以上の充放電が可能な点も特徴と言える。
今回の新製品では、入出力性能を大幅に引き上げた。東芝がSCiBセルの「高入出力タイプ」として販売してきた従来品(入力480W、出力420W)と比べて、それぞれ3倍以上とした。新製品の出力は1800Wで、入力は1500W。同時に放出できる電力が大きくなり、強い力で回転するモーターなど、大電力を必要とする機器を動かせるようになった。また、同時に取り込める電力も大きくなったので、急速充電性能が上がった。
図 新型「SCiB」セルの外観
出所 東芝
蓄電容量は10Ah。既存の高入出力タイプ(2.9Ah)の3倍以上となった。東芝はほかに「大容量タイプ」のSCiBを2製品販売しているが、これは定置型蓄電池などに向けたもので、入出力の値は今回の新製品ほどは大きくない。ちなみに、大容量タイプの蓄電容量は20Ahと23Ah。
図 「SCiB」セルの品揃えと、それぞれの特性
出所 東芝
今回発売した新製品は、先行してスズキに供給を始めている。スズキは2月1日に発売した新型「ワゴンR」の「マイルドハイブリッド」システムの電源としてこの蓄電池セルを5つ搭載している。前世代のワゴンRは「S-エネチャージ」と呼ぶハイブリッドシステムを搭載していたが、S-エネチャージは加速時にモーターでエンジンを支援する機能と、発進時にモーターでエンジンを再始動させる機能を持っている。信号待ちなどで一時停止するときはエンジンを停止させ、余計なガソリン消費を抑えることが狙いだが、モーターの動力のみで車両を動かすことはなかった。
図 新型「ワゴンR」
出所 スズキ
新型ワゴンRのマイルドハイブリッドシステムでは、搭載する蓄電池の蓄電容量が3倍以上に上がった。これにより加速時にモーターでエンジンを支援するほかに、「クリーピング」時にモーターだけで最長10秒間車両が動くようになった。クリーピングとは、アクセルもブレーキも踏んでいないときに自動車が低速で動く動作を指す。新型ワゴンRは、車両の軽量化などの効果も重なり、軽ワゴンとしては日本最高の燃費性能を達成した。JC08モードで、燃費は33.4km/Lとなる(ハイブリッド仕様の2輪駆動の車種の場合)。
東芝は、さらにSCiBの開発を進める意向を示している。
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