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新型プリウスPHV、太陽光発電モジュールを「HIT」に変更して出力を3倍以上に引き上げ

2017/03/01
(水)
SmartGridニューズレター編集部

パナソニックは、トヨタ自動車の新型「プリウスPHV」の太陽光発電モジュールが、「HIT」モジュールであることを明らかにした。

パナソニックは2017年2月28日、トヨタ自動車が2月15日に発売した新型「プリウスPHV」の太陽光発電モジュールが、パナソニックの「HIT」モジュールであることを明らかにした。新型プリウスPHVの太陽光発電モジュールは車両天面に設置するもので、「S」グレードと「Sナビパッケージ」のメーカーオプションとなっている。価格は26万円(税別)。

図 新型プリウスPHVの天面に取り付けた太陽光発電モジュール

図 新型プリウスPHVの天面に取り付けた太陽光発電モジュール

出所 トヨタ自動車

トヨタ自動車は2012年1月発売の先代プリウスPHVにも、太陽光発電モジュールをメーカーオプションとして設定していたが、発電モジュールの出力が低いため、駐車中の換気機器と、エンジンルームにある12Vシールドバッテリーに電力を供給するだけで、自動車のモーターを動かす電力を作り出すことはできなかった。

新型プリウスPHVでは、メーカーオプションの太陽光発電モジュールとして、従来品よりも出力が3倍以上高い品を採用し、太陽光発電モジュールによる出力値を最大で約180Wとした。 この結果、太陽光発電モジュールで発電した電力を動力用電源とすることが可能となった。トヨタ自動車は新採用の太陽光発電モジュールについて、1日で最大6.1km、平均で2.9km走行できる電力を発電できるとしている。

新型プリウスPHVの太陽光発電モジュールとしてトヨタ自動車が採用したのが、パナソニックの「HIT(Heterojunction with Intrinsic Thin-layer:ヘテロ接合型)」モジュール。HITはn型半導体となる単結晶シリコン層の上下に、薄いアモルファスシリコンの層を重ねた構造になっている。

一般的なシリコン結晶太陽電池では、p型半導体となるシリコン結晶の層の表面に不純物を加えてn型半導体となる「拡散層」を形成する。しかし、シリコン基板と拡散層の間には原子配列の乱れ(欠陥)が発生する。この欠陥はシリコン基板で発生した電荷を表面の電極に届ける際の障害となり、発生させた電荷が消失する原因となる。

パナソニックはシリコン基板とアモルファスシリコン層の間に、添加物を混入していない「i型半導体」となるアモルファスシリコン層を挿入した。こうして、欠陥が原因で電荷を失うことがなくなり、発電能力が高い太陽電池ができている。単結晶、多結晶の発電モジュールと比べて、変換効率が高く、シリコン結晶を利用したモジュールの中では最高の発電効率を誇っている。

図 太陽電池の発電の仕組みを示す図(左)と、HITと単結晶モジュールの構造を比較した図(右)

図 太陽電池の発電の仕組みを示す図(左)と、HITと単結晶モジュールの構造を比較した図(右)

出所 パナソニック

HITモジュールにはもう1つ特徴がある。高温になる環境に強いのだ。一般的な太陽光発電モジュールは表面温度が上がると変換効率が急に低下するが、HITはアモルファスシリコンの層が高温環境下でも高い効率で発電を続けるなど、高温環境下でも変換効率が急激に下がることはない。

HITモジュールにも欠点はある、モジュール価格が高くなってしまうのだ。そのため、投入したコストに対する発電量を重視するメガソーラーなど大規模太陽光発電所では安価な多結晶シリコンの発電モジュールを使うことがほとんどで、高価なHITモジュールを使うことはほとんど無い。しかし、狭い場所で最大の発電量を得る必要がある住宅向け製品は高い人気を得ている。

「高価だが発電量が多く、高温環境下に強い」というHITモジュールは、自動車の天面に載せるモジュールとして最適なものと言えるだろう。自動車の天面は太陽光発電モジュールを載せるには面積がやや狭い。そして、自動車の天面は夏の炎天下では、触れられないほど熱くなる。そのような環境でも発電量を維持するHITを選ぶことで、自動車駆動用電源の発電にも利用できるようになったと言えるだろう。

パナソニックは今回のトヨタ自動車への供給のために、HITの「車載用モジュール」を新たに開発した。同社は今後、車載分野へのHIT太陽光発電モジュールの普及を目指す意向を明らかにしていく。電気自動車への応用も期待できるだろう。


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パナソニック

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