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地震による建築物の大きな揺れを抑制、NTTファシリティーズがAIを活用し制振技術を開発

2017/09/01
(金)

NTTファシリティーズは、AIを活用して超高層建築物に向けた制振技術を開発したと発表した。

NTTファシリティーズは2017年8月30日、AI(Artificial Intelligence)を活用して超高層建築物に向けた制振技術を開発したと発表した。地震発生時に超高層建築物で問題となる、周期が長い大きな揺れ(長周期地震動)の低減を狙った技術だ。

2011年3月11日に発生した東日本大震災では、震源から離れた東京のオフィス街でも強い揺れが発生した。そのとき、建ち並ぶ超高層建築物がゆっくりと大きくしなるように揺れるという現象が発生した。この時に揺れていた超高層建築物では、特に高層階において固定していない什器が動き回り、転倒するといった事故が起こっていた。また、建物内部の壁面や設備が損傷するという被害も階層が高くなるほど深刻なものになっていた。この揺れの原因となったのが地震波の中でも長周期地震動だ。

ところがNTTファシリティーズによると、既存の超高層建築物への長周期地震動対策は十分には進んでいない。日本は世界有数の地震国で、世界的に見てもかなり高い頻度で日常的に地震が発生している。南海トラフ大地震や首都直下型大地震などが発生するという予想もあるが、日本ではいつ、どこで、どんな規模の大地震が起こるか誰にも分からないのが現実だ。大地震は明日起こるかもしれないし、50年後に起こるかもしれない。今の技術では正確に大地震の発生を予測することは不可能だ。だからこそ日本では、明日地震が起こっても対処できるように、建築物には十分な地震対策を施しておかなければならない。

現在、高層建築物においては、力を受けたら縮むことで吸収する「ダンパー」を建築物の各所に設置して、地震発生時に建物を変形させる力を吸収するという対策を採るのが一般的だ。NTTファシリティーズが今回開発した制振技術は、ダンパーに電動アクチュエーターを仕込み、地震の振動に応じてアクチュエーターを動作させてダンパーを能動的に伸縮させるというものだ。模型を使った検証では、従来のダンパーを使った制振技術に比べて建物の揺れを50%以上低減できるという結果が出ている。

アクチュエーターの制御アルゴリズムは、強化学習を活用して開発した。強化学習とは、明確な答えがない問題に対し、試行錯誤を繰り返しながら最適な答えを探す手法。今回は強化学習に深層学習を組み合わせて、さらに精度の高いアルゴリズムの開発に挑んだ。コンピューター上で、地震の揺れに対して建物がどのように変形するのかを再現する「建物地震応答シミュレーター」を動作させ、揺れに対する最適な制御方法を学習させた。

実際の建物にこの技術を実装するときは、複数の振動センサーを設置し、そのセンサーが検知した振動の度合いに応じて、制御装置のアルゴリズムがアクチュエーターの制御法を導き出し、その通りにアクチュエーターを動作させることで、建物の揺れを最小限に抑える。

図 センサーが検出した揺れに応じて、今回開発したアルゴリズムで最適なアクチュエーター制御法を導き出す

図 センサーが検出した揺れに応じて、今回開発したアルゴリズムで最適なアクチュエーター制御法を導き出す

出所 NTTファシリティーズ

NTTファシリティーズによると、今回開発した制振技術を利用すると地震発生時の超高層建築物の揺れを50%低減できるだけでなく、従来の技術で得られる制振性能を、およそ半数のダンパーで実現することもできるという。工事コストは最大30%削減でき、工期も短縮可能だとしている。NTTファシリティーズは2018年から、この制振技術を実用化することを目指して開発を進めている。特に、南海トラフ地震の対策として各企業に提案していく構えだ。


■リンク
NTTファシリティーズ

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