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トヨタ自動車、2025年ごろに全車種に電動グレード設定―2030年には電動車を550万台以上に

2017/12/18
(月)
SmartGridニューズレター編集部

トヨタ自動車は、電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車などの電動車普及に向けた中期的計画を発表した。

トヨタ自動車は2017年12月18日、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)などの電動車普及に向けた中期的計画を発表した。2030年に電動車の販売台数550万台以上、排ガスを出さない「ゼロエミッション車」であるEV/FCVの販売台数100万台以上を目標に掲げ、そこに至るまでの開発計画を明らかにした。

図 発表会で演壇に立つトヨタ自動車取締役副社長の寺師茂樹氏

図 発表会で演壇に立つトヨタ自動車取締役副社長の寺師茂樹氏

出所 トヨタ自動車

まずトヨタ自動車は、2025年ごろまでに全車種に電動グレードを設定し、エンジン専用車種をゼロにする計画を明らかにした。その後は「プリウス」「MIRAI」などの「電動専用車種」の拡大を進め、クラウン、カローラなど従来からある車種については電動グレードの設定を拡大していく。2030年には年間販売台数のうち50%以上を電動車とし、EV/FCVの比率を10%まで高めるという目標を掲げた。この結果、2030年には電動車の販売台数が550万台以上、EV/FCVは100万台以上になる。

トヨタ自動車はEV、FCV、PHEVのほかにハイブリッド車(HV)も「電動車」として普及拡大を図るとしている。HVはアメリカやヨーロッパではゼロエミッション車としてもはや認められず補助金などの支援対象外となっているため、HVの開発販売を終了させるメーカーもある。しかし、発表会に登場したトヨタ自動車取締役副社長の寺師茂樹氏は「ゼロエミッション車として認められなくても、「CAFE(Corporate Average Fuel Economy:企業平均燃費)」規制への対策では大きな戦力となる」とし、引き続き開発に注力する姿勢を見せた。そして、従来のように燃費とコストを追求したものだけでなく、スポーツカー向けに加速性能を高めたものや、トラック向けに出力を高めたもの、新興国向けに簡素化して低価格にしたものなど、多様なHVを開発する予定を示した。ちなみにCAFEとは、メーカーが年間に販売した全車両の平均燃費。近年、この数値に規制をかける国が増えている。

EVについては、2020年に中国で自社開発の量産車の販売を本格的に開始し、引き続き日本、インド、アメリカ、ヨーロッパなど世界で順次販売を開始するという予定を示した。トヨタブランドだけでなく、同社の高級車ブランド「レクサス」のEVも販売するという。そして2020年台前半には、10車種以上のEVを製品化する予定となっている。

トヨタ自動車はこれまで、EVについては積極的な動きを見せていなかったがそれは「決して技術開発が進んでいないということではない」(寺師氏)という。トヨタ自動車は20年に渡ってHVやPHEVといった電動車を開発販売しており、今ではおよそ4500人の技術者が開発に携わっているという。HVやPHEVの開発でモーター、蓄電池、インバーター、電子制御、回生ブレーキなどの技術を確立しており、これらの技術はすべての電動車の基盤となる技術であり「もちろんEVの基盤にもなる」(寺師氏)という。

その上で寺師氏は、これまでEV開発の計画を明確に打ち出さなかった理由として蓄電池を挙げた。現在、世界の有力自動車メーカーが続々とEV発売計画を打ち出しているが、電源となるリチウムイオン蓄電池の確保が近い将来大きな問題になると考えていたという。トヨタ自動車がEVの開発計画を打ち出すには、適切なコストで高い性能を発揮するリチウムイオン蓄電池を大量に確保できる見込みを立てる必要があったが、12月13日にパナソニックとの協業が決まったことで、準備が整ったという。

加えて、EVで使い古した蓄電池の再利用の道筋も付ける必要があったともいう。これまでもトヨタ自動車はEVの使い古し充電池を利用した定置型蓄電池を製造してきたが、2020年以降は、この動きを加速させるとしている。

さらにトヨタ自動車は2020年代前半に、リチウムイオン蓄電池に代えて「全固体電池」を実用化する計画を立てている。全固体電池への移行が進んだら、リチウムイオン蓄電池の需要は急速にしぼみ、その製造設備もムダになってしまう。この点について寺師氏は「トヨタ自動車としても資金面で支援していかなければならない」と、電池メーカーの全固体電池への移行を支援する姿勢を示した。トヨタ自動車は蓄電池について、研究開発も含めて1兆5000億円を投資する。

FCVについては、MIRAIだけでなくSUV(Sport Utility Vehicle)やレクサスブランドの高級車など、車種を増やしていく計画だという。さらに、現在も進めているバスやトラックへのFCVの応用も引き続き続けていくとした。

寺師氏は「これまでは近距離移動にはEV、中距離移動にはFCVが適しているとトヨタ自動車が考えて製品化を進めてきたが、消費者や市場が求めるものは多様化している」とコメントし、今後は従来の考え方にとらわれることなく、それぞれの種類の電動車を多様化していく方針を示した。例えばEVなら、近距離移動と限定せずに中大型車、高級車、バス、トラックなどにも広げていく。また、消費者向け車両だけでなく、商用車やシェアリングサービス向け車両など多様な用途に向けてEVを開発していくとしている。


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