[特集]

VPP(仮想発電所)とは何か? 海外動向とビジネス展開の可能性— 前編 —

2016/08/03
(水)
SmartGridニューズレター編集部

VPP(仮想発電所)については、すでに海外では実用化され導入が進んでいるが、日本においても、2015年6月に閣議決定された「日本再興戦略 改訂2015」注1で、VPPの取り組みが明記され、2016年4月のエネルギー革新戦略注2においてさらに具体的に促進していくことが明記された。また、2016(平成28)年度バーチャルパワープラント構築事業費補助金補助事業注3では、29.5億円(新規)が予算化され、去る5月19日から公募が開始され、同実証事業のうち、すでに「高度制御型ディマンドリスポンス実証事業」に関する間接補助事業者の公募結果について、19件(テーマ)が採択されている注4。このような国の政策と連動するように、先進的な企業ではさまざまな形でVPPへの取り組みが開始されている。
本特集では、VPPの定義、概念を整理した後、具体的なビジネスの可能性について、海外事例を交えながら、前後編で解説していく。

VPPとは?その定義と起源

〔1〕VPPの定義

 VPP(Virtual Power Plant、仮想発電所)は、2000年頃、「複数の自家発電、再生可能エネルギー(以下、再エネ)や蓄電池を集約してあたかも大きな発電所のように電力需給に反映させるビジネス」と定義され、「小を束ねて大にする」技術という概念であったとされている。

 欧米においては実証レベルではなく、すでに実ビジネスとして進められている。

 VPPの定義、起源については諸説あるが、ここで欧州のVPPの定義について紹介する注5。ここでは、VPPとは、

(1)多くのさまざまな分散エネルギー資源(Distributed Energy Resources:DER)を束ねて運用すること

(2)個々のDER(分散エネルギー資源)

の長所を活かして短所を補い、全体として大規模発電所に匹敵するような出力を得たり、系統にもたらされる悪影響を緩和したりする

仕組みである。この中で、VPPには2種類あり、1つはコマーシャルVPP(CVPP)、もう1つはとテクニカルVPP(TVPP)とされている。

(1)コマーシャルVPP(Commercial VPP:CVPP)

 「分散型の電源」を束ねて電力卸売市場で売買取引を行い、入札価格で決定した市場取引結果に応じて系統に電力供給を行うもの。自らは発電所を保有しないアグリゲータや電力トレーダー、電力ブローカー、需給バランス責任者が、CVPPとして電力取引市場を介して電力供給を行う。このとき、CVPPが束ねて提供する「分散型の電源」の配電網に対する影響は考慮されない。

(2)テクニカルVPP(Technical VPP:TVPP)

 提供する「電源」の系統へのリアルタイムの影響が考慮され、同じ配電網に電力供給可能な「分散電源」から構成される。TVPPは、所属する配電網の系統運用に寄与するだけでなく、上位の送電事業者の需給バランスにも貢献し、アンシラリーサービス注6を提供することができる。

 しかし、上記のような「小を束ねる」という一般的な概念とは違ったVPPの事例などもある。フランスのEDF注7では、同社が所有する大型電源のある割合をVPP枠と設定し、電源をもたない小規模のバランシンググループがVPP購入権を買い、それぞれの取引においてEDFの発電機の発電電力の一部を需要家に供給するという仕組みで、「発電所を特定化しないで特定電力会社から卸売電力購入権として卸売電力を競売する方法」という概念である。つまり「大を細かく分けて小にする」という考え方である。

〔2〕VPPの分類例

 ここで、例としてVPP分類例(図1)について挙げてみる。図1は、海外においてさまざまなプロジェクトに参画しているIBMによるVPPの分類例である。

図1 バーチャルパワープラント(VPP)分類例

図1 バーチャルパワープラント(VPP)分類例

出所 IBM仮想発電所(VPP)ソリューション資料より、日本アイ・ビー・エム株式会社、2016年5月11日

(1)卸電力取引所から柔軟に電力調達ができる取引機能を実装し、発電事業者から買電する。また、節電インセンティブを消費者に提示し節電も誘導する方式

(2)発電側企業、小売側企業を集めて取引の仲介を実施する。消費者(需要家)もVPPに参加する能動的な1プレイヤーとなる方式

(3)発電事業者が市場機能を実装し、小売電気事業者やアグリゲータと連携しながら、最適なコストでの電力供給を実施する方式

 上記のように、大きく3つの分類が想定できる。


▼ 注1
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/dai1jp.pdf

▼ 注2
http://www.meti.go.jp/press/2016/04/20160419002/20160419002-1.pdf
http://www.meti.go.jp/press/2016/04/20160419002/20160419002-2.pdf
インプレスSmartGridニューズレター2016年6月号掲載記事も参照。

▼ 注3
補助対象事業として大きく2つに区分。「バーチャルパワープラント構築事業」のうち「アグリゲーター事業」「バーチャルパワープラント基盤整備事業」、「高度制御型ディマンドリスポンス実証事業」のうち「一般送配電事業者が活用するネガワット取引の技術実証」「ネガワット取引に係る共通基盤システムの開発・調査・研究・接続実証」がそれぞれ公募。http://www.iae.or.jp/2016/05/19/vpp/

▼ 注4
http://www.iae.or.jp/wp/wp-content/uploads/2016/06/vpp_b_20160628_r2.pdf

▼ 注5
欧州におけるVPPの定義:
・EU Commission Task Force for Smart Grids, https://ec.europa.eu/energy/en/topics/markets-and-consumers/smart-grids-and-meters/smart-grids-task-force
・EU Commission Task Force for Smart Grids, Expert Group 1:Functionalities of smart grids and smart meters, Final Deliverable(December 2010), http://gt-engineering.it/uploads/allegati/25expert_group1.pdf

▼ 注6
アンシラリーサービス:電力品質の管理を行う付加的なサービス。

▼ 注7
EDFは、1946年「電力・ガス事業国有化法」により設立された国有企業(旧フランス電力公社、現フランス電力会社)。1990年代に入っての電力自由化に伴い、2004年「EDF・GDF株式会社化法」によりEDFは株式会社化され民間企業となった。

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