[[創刊4周年記念:特集1]ー 電力自由化後の新展開 ー VPP、マイクログリッドに取り組む次世代電力事業と小売電気ビジネスの行方[前編]]

VPPでエネルギーの地産地消を実現する自治体新電力「ローカルエナジー」(鳥取県米子市)

2016/11/09
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

ローカルVPPをどのように実現したか

〔1〕約90%が地域内電源から賄うVPPの仕組み

 ローカルエナジーの電力小売事業の概要は、図2に示す通りである。

図2 ローカルエナジーの電力小売事業の仕組み

図2 ローカルエナジーの電力小売事業の仕組み

出所 編集部作成

 同社は電力の需給管理と顧客管理を行い、地域内のごみ発電(ベース電源)と太陽光発電(ミドル電源)を主とし、その他温泉地域からの地熱発電などで構成されるマイクログリッドで、電力調達の約90%を地域内の電源から調達している。

 電力の供給先は、地域内の約210箇所の公共施設(需要家)で(送電力量は非公開)、そのほか、中海テレビ放送注1向けに電力の卸事業を行っている。

 同社の電源構成は、図3のような構成比となっている。米子クリーンセンター(写真2)、その他2箇所の廃棄物処理場からのごみ(廃棄物)発電の電力で84.7%、ソフトバンク鳥取米子ソーラーパーク(写真3)と中海テレビ放送太陽光発電所からの電力で5.6%、その他温泉街の地熱発電で0.4%というように、全体の電源構成の90.7%を地域内電力で賄っている。残り9.3%は、日本卸電力取引所からの調達で、これは電気の計画値同時同量注2を担保するためである。

図3 ローカルエナジーの電源構成(2016年4~8月の実績値)

図3 ローカルエナジーの電源構成(2016年4~8月の実績値)

出所 http://www.lenec.co.jp/lower/business.phpをもとに編集部作成

写真2 米子市クリーンセンター(米子市)の外観

写真2 米子市クリーンセンター(米子市)の外観

▲敷地面積:33,318平方メートル(工場棟の延床面積:13,835.70平方メートル)、焼却施設:連続燃焼式焼却炉(処理能力:24時間当たり90トン×3炉)、余熱利用設備:蒸気タービン発電機(発電能力:4,000kW×1基)、稼働開始年月:2002年4月
出所 編集部撮影

写真3 ソフトバンク鳥取米子ソーラーパーク(鳥取米子ソーラーパーク株式会社)

写真3 ソフトバンク鳥取米子ソーラーパーク(鳥取米子ソーラーパーク株式会社)

▲出力規模:約42.9MW(42,906kW)、年間予想発電量:約4,527万kWh/年(一般家庭約1万2,000 世帯分の年間電力消費量に相当※、パネル枚数:178,776枚、運転開始日:2014年2月1日※世帯当たり3,600kWh/年で算出(出典:電気事業連合会「電力事情について」)
出所 編集部撮影

〔2〕自社による電力の需給管理

 ローカルエナジーにおける日々の電力需給管理は、対象日ごとに次のような項目ごとに進められている需給管理用ソフトはエイイーエス社製で、見える化された画面で柔軟に活用できる(写真4、写真5を参照)。

写真4 需給管理用ソフトの初期画面

写真4 需給管理用ソフトの初期画面

出所 編集部撮影

写真5 需要予測画面(米子市役所本庁舎)

写真5 需要予測画面(米子市役所本庁舎)

出所 編集部撮影

  1. 翌日FIT購入計画提出
  2. 需要予測
  3. スポット前ポジション作成
  4. スポット市場入札
  5. 約定後ポジション
  6. 翌日計画作成
  7. 1時間前市場入札
  8. 翌日計画再提出

表3 電力CIS(顧客情報管理システム)の実装機能一覧(東亜ソフトウェア製)

表3 電力CIS(顧客情報管理システム)の実装機能一覧(東亜ソフトウェア製)

※ 合計請求書に含まれる需要者の料金計算が実行された場合に自動計算する。
出所 東亜ソフトウェア提供資料をもとに編集部作成

〔3〕顧客情報管理システム(CIS)の仕組み

 ローカルエナジーの顧客情報管理システム(CIS:Customer Information System)は、親会社である中海テレビ放送と米子市内のシステム開発会社である東亜ソフトウェアが開発注3したものを使用している。この点が、技術的な特徴の1つである。東亜ソフトウェアでは、マイクログリッド用のスマートメータリングシステムの開発も受託し、宮城県の東松島スマート防災エコタウン注4で、現在稼働している。

 図4に、顧客情報管理システム(電力CIS)の仕組みを示す(①〜⑦)。また表3に、同システムへの実装機能の一覧を示す。

図4 電力CIS(顧客情報管理システム)の仕組み

図4 電力CIS(顧客情報管理システム)の仕組み

出所 東亜ソフトウェア提供資料をもとに編集部作成

①顧客管理システムでは、スイッチング支援業務、料金計算管理業務などを行うためのユーザーインタフェースで、Salesforceアプリとして実装している。

②Salesforce連携マネージャは、Salesforceアプリ連携を行うREST API注5を提供し、各種業務ロジックはこのマネージャを介してバックエンドのPBSS注6が処理を行う。

③スイッチング支援連携マネージャでは、広域機関のスイッチング支援システムWeb APIとのインタフェースをとる。

④イベントマネージャは、送配電事業者ごとの確定使用量取り込み、料金自動計算など、スケジュールされた各処理の制御を行う。

⑤確定使用量収集マネージャにおいて各送配電事業者、またはMDMS注7から使用電力量データの収集を行う(ローカルエナジーではMDMSは利用していない)。

⑥電気料金計算システムにおいて、各種料金メニューの電気料金計算を行い、請求データを作成する。ローカルエナジーの顧客用の請求データ(⑦)はPDFにて送付されている。


▼ 注1
中海テレビ放送は、従来からの放送・通信サービスに加えて、2016年4月1日から「chukai電力」として一般家庭(低圧)の需要家向けに小売電気事業を開始している。2016年10月時点で、1,200箇所の需要家に電力供給をしている。
https://gozura101.chukai.ne.jp/p/page/chukai/chukaielectricpower/top

▼ 注2
計画値同時同量:電力において、発電計画と需要計画を一致させること。通常、電力は貯めておくことができない。また、周波数や電圧などの電力品質を一定に維持して供給されることが求められる。このため、発電量と電力消費量を一致させて安定した電力を供給することが重要となる。

▼ 注3
同システムの開発あたっては、使用するエンドユーザー各社からの協力も得つつ意向も取り入れながら行った。

▼ 注4
東松島スマート防災エコタウン:2016年6月13日に、電力マネジメントシステムが稼働開始した。http://hm-hope.org/ecotown/

▼ 注5
REST API:インターネット(Web)環境でブラウザとサーバ間でやり取りするインタフェースのこと。

▼ 注6
PBSS:Power Business Su-pport System、スイッチング連携、確定使用量取得、料金計算などの各種処理を行うバックエンドシステム(サーバ)。

▼ 注7
MDMS:Meter Data Mana-gement System、メーターデータ管理システム。電気事業者が、需要家のスマートメーターから送信されてくる指針値、使用電力量などの情報を蓄積、検索するためのシステム。

関連記事
新刊情報
 いよいよ日本でも、IoT時代に必須のLPWA(Low Power wide Area、省電力型広域無線網)サービスがスタートします。  第4次産業革命に向けて、エネルギー、ヘルスケア、製造業、...
 NIST(米国国立標準技術研究所)が2009年11月に立ち上げた委員会「SGIP」(スマートグリッド相互運用性パネル)は、2013年にSGIP 2.0となり、新たな活動を展開している。  SG...
本書『IoT&スマートグリッド用語事典』は、既刊の『スマートハウス&スマートグリッド用語事典』(2012年2月発行)を大幅に改訂したものです。2011年3月11日の東日本大震災を契機に、日本では電力分...